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2025.02.24
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カテゴリ: 報徳記を読む
【2】烏山大夫菅谷某同藩某をして櫻町に使す その2

[報徳記&二宮翁夜話]199
烏山城


菅谷は、「ああ、二宮はなんという賢人か」と感嘆し、家臣をして桜町に遣って、近いうちに伺いたいと言わせた。
二宮先生は他国の臣に面会する暇はないと断られたが、強いて面会した。
二宮先生は
「烏山の家老が当地に来たらんとする、何のためじゃ。
 私は主君の命令を受けてこの地の民を撫育(ぶいく)している。
 元より少しの暇もない。
 どうして他藩の臣とのどかに話するヒマがあろうか。
 菅谷氏は烏山藩の家老ではないか。
 それ家老の任務というのは、上は君主を補佐して仁君の道を踏ましめ、
下は国民を安んじその所を得させることを職務とする。
 それであるのに今、飢饉の年にあたって米蔵は空っぽで救助の道なく、国民の飢渇を救うことができない。
坐したままで国民が餓死していくのを見ようとするのか。
これは常日頃の政治が当を得ていないからだ。
礼経に言うではないか。
『国に三年の貯えなきは国その国に非ず』と。
三年の蓄えがないことすら、このように戒めたのである。
今、烏山の貯蓄は三年どころか、一年の飢饉ですら国民を飢渇に陥らせている。
どこに仁政があるというのだ。
それ諸侯の任務は天より民を預かって、これを養い、これを撫育し、これを安んずることにある、
今、その預かるところの天民を飢死に落とすならば、どこに諸侯の道があろうか。
君もこのようであり、家老もこれを知らないで人の上に立って、もっぱら衣食に飽いて、安逸にすることが自ら諸侯や家老の任務だと思っているのか。
このような人物が私の門前に来ることを欲しない。
ましてどうして面会しようか。
あなたはすぐに帰って、菅谷氏が来るのを必ず止めよ。」
と大声で戒められた。
家臣は汗が肩や背まであふれて、ボウゼンとしてやっとのことで烏山に帰った。
「大いに罵って、その声は雷のようでした。彼は正気ではありません。きっと狂人です。家老は決して行ってはなりません」と顔色を変えて尊徳先生が言われたことを報告した。
菅谷はその報告に感激して、
「本当に賢人である。一年の飢饉で民を飢えさせるのは君臣ともに道を失っていたからだ。今の世にこのように君臣が道を失っていると公然と教え諭す英傑がいようか。二宮の言は率直でその理は明らかである。この人に道を問わないで誰に問おう」とますます尊徳先生に親しく道を聞きたいと思ったのである。



【2】烏山大夫菅谷某同藩某をして櫻町に使す

某(ぼう)なるものを呼びて曰はく、
今、凶荒(きょうくわう)の憂(うれひ)既に甚(はなはだ)し。
而(しか)して倉廩(そうりん)空乏(くうぼふ)百計(けい)民を救ふに術(じゅつ)なし。
櫻町二宮なるもの、非常の英才なりと聞く。
近日我(われ)往(ゆ)きて道を問はんとす。
子(し)先づ往きて某(それがし)の至らんことを二宮に告げよ。
是も亦二宮を敬するの一事(じ)なりと。
某(ぼう)諾(だく)して直(たゞち)に櫻町に來り、此の條(でう)を告ぐ。
先生又他邦の臣に面會(めんくわい)するの暇なきを以て之を辭(じ)す。

某(ぼう)大いに心を苦しめ、先生大夫(たいふ)に逢はんとの言(げん)を聞かずして歸(かへ)らば、菅谷來(きた)るの道なからんか。
我此の地に來り、面會を許さゞるの斷(ことわり)を得ずして退かば、來りたるの甲斐(かひ)は無かるべしと、再三面會を請ひて止まず。

先生止む事を得ず、某を呼びて曰く、
烏山(からすやま)の大夫(たいふ)當地(たうち)に來(きた)らんとする、何(なん)の爲(ため)ぞや。
我(われ)主命(しゅめい)を受けて此(こ)の地の民を撫(ぶ)せり。
元(もと)より寸暇(すんか)あらず。
豈(あに)他邦(たほう)の臣(しん)と閑談(かんだん)するの暇(ひま)あらんや。
菅谷某(ぼう)は烏山の大夫(たいふ)にあらずや。
夫(そ)れ大夫(たいふ)の任(にん)は上(かみ)君(きみ)を補佐(ほさ)して仁君の道を蹈(ふま)しめ、下(しも)國民(こくみん)を安撫(あんぶ)して其(そ)の所を得(え)せしめ、國富み民豊かなるを以て大夫の職とせり。
然るに今飢歳(きさい)に當(あた)り、倉廩(そうりん)空虚にして救荒(きうくわう)の道なく、國民(こくみん)の飢渇(きかつ)を救ふことあたはず、坐(ゐ)ながら民の餓死(がし)するを見るか。
是(これ)平生(へいぜい)の政(まつりごと)其(そ)の至當(したう)を得ざるが故(ゆゑ)なり。
禮(れい)に言わずや、
國(くに)三年の蓄(たくはへ)なきは、國其の國に非ずと。
三年の蓄(たくはへ)なきすら是(こ)の如く戒めたり。
今烏山の儲蓄(ちょちく)豈(あに)三年を論ぜんや、
一年の飢饉(ききん)だも國民をして飢渇に陥(おちい)らしむ。
何(いづ)れの處(ところ)に仁政(じんせい)かある。
夫(そ)れ諸侯の任は天民(てんみん)を預り、之を養ひ、之を撫(ぶ)し、之を安(やすん)ずるにあり。
今其の預かる所の天民を飢亡(きぼう)に落さば、何を以て諸侯の道有らんや。
君も是(こ)の如く、大夫も之を知らずして人の上に立ち、專ら衣食(いしょく)に飽き、安逸(あんいつ)を以て自ら諸侯大夫の任と思へるか。
是(こ)の如(ごと)き人物我が門前にも至ることを欲せず。
況(いはん)や何の爲(ため)に面會(めんくわい)せんや。
子(し)速(すみやか)に歸(かへ)り、其の來(きた)ることを必ず止めよ
 と、
大音(だいおん)にて之を戒め、直(たゞち)に立ちて再び見(み)えず。
某(ぼう)なるもの流汗(りうかん)肩背(けんばい)に溢(あふ)れ、茫々然(ぼうぼうぜん)として烏山に歸(かへ)り、菅谷に告げて曰く、
大夫(たいふ)の言(げん)に隨(したが)ひ、櫻町に至りて二宮に面會を請ふこと再三再四に及び、見(まみ)ゆることを得たり。
然るに妄言(ぼうげん)是(こ)の如し。
一歳(さい)の飢饉にだも國民を飢(うゑ)に陥らしむ。
君も君の道を失ひ、大夫も大夫の道を知らず。
自ら安逸遊惰(あんいついうだ)を以て、人の上に立ち、大夫の任と思へる歟(か)
飢歳に至り民を救ふことさへ知らずんば、何を以て一日も其の職に安んずるや。
是(こ)の如き者に逢ふことは我が欲せざる所なり。
汝速に歸り、其の來ることを止めよと、
大いに詈(ののし)る其の聲(こゑ)雷(らい)の如し。
彼本心にはよもあらじ、定めて狂人ならん、大夫必ず往くことなかれと、
顔色(がんしょく)を變(へん)じて之を告げたり。





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最終更新日  2025.02.24 07:46:52


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