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2025.08.31
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カテゴリ: 朝ドラ
「続 窓際のトットちゃん」

p.174-180
ある日、人形劇『雪の女王』をみた。

クライマックスが近づき、雪の女王が、男のカイと女の子のゲルダに恐ろしいことを命令したとき
「かわいそう」とか「ひどい」とか客席の子どもたちのささやく声がきこえてきた。
このとき、トットは不思議な感情に襲われた。
なにかやさしいもので満たされたような、昔から知っているともだちと出会ったみたいな気持ちがした。
・・・・
トットはママに尋ねた。

「そうねえ、新聞に出てるんじゃないの?」
ママにそう言われて、トットはその日のみ、新聞を開いてみた。

「NHKでは、テレビジョンの放送を始めるに当り、専属の俳優を募集しまし。プロの俳優である必要はありません。一年間、最高の先生をつけて養成し、採用者はNHKの専属にします。なお、採用は若干名・・・」
なんという偶然!
新聞のまん中にNHKの広告を見つけて、トットはピンときた。
テレビジョンがなんなのかはよくわからなかったけれども、朗読の仕方とかを教われば、絵本が上手に読めて、いいお母さんになれるに違いない。

トットはパパにもママにも内緒にして、さっそく履歴書を送った。

何日かたって、NHKから書留が届いた。
「受かったのかな」と思って封を切ると、トットが送った履歴書が出て来た。
「履歴書は持参しなさいと書いてあったはずだったのに、どうして郵送したのですか」という内容の手書きが同封されていた。失敗!もうやめておこうかとも考えたけれど、履歴書の締め切りは2日後、まだ間にあう。
・・・

一次試験を通過して、二次の筆記試験に進むことになった。
・・・・
「カルメンービゼー」「イサム・ノグチー彫刻家」とかすぐわかるものもあったけど、
昭和27年度の放送部門の芸術祭賞受賞作品は、みたいな、放送や演劇に関する問題はむずかしかった。それがぜんぶで20問ぐらい。トットは思わず、となりの席の眼鏡をかけた男の人に尋ねてしまった。
「教えていただけませんか?」

「いやです」
そりゃ、そうでしょうねえ。
・・・・
最後の問題は、「あなたの長所と、短所を書きなさい」だった。
やっと、自分を知ってもらえる問題に出あえたと思い、トットは鉛筆を握り直した。
「長所」には、ためらうことなく「素直」と書いた。
ママにいつもそう言われていた。
次に「親切」と書き、「ともだちがそう言います」と書き加えた。
・・・・
「短所」には
「私は楽天的なせいか、いろんなことを、すぐ忘れてしまいます。母はときどき、私に
『ちょっと参考までに聞いておきたいんだけど、さっき、あなた、自分で失敗したとか言って、ワアワア泣いていたわね。でも、いま、そうやってゲラゲラ笑って、オセンベをポリポリ音立てて、食べるでしょう?少しは、さっきの泣いたの、どっかに残ってる?』と聞きます。
そんなとき考えてみると、私は、さっきのことをすっかり忘れています。
反省とか悩みをすぐ忘れるのですから、これも短所と思います」

・・・・

でもなぜか、トットはこの筆記試験も通った。

三次試験を受ける前に、ママにNHK劇団の俳優になる試験を受けていたことを報告した。
絵本を読むのが上手なお母さんになりたいからNHKを受験することや、パパには反対されるのに決まっているから黙っていてほしいことを伝えた。

ママはトットの気持ちをわかっいぇきれたし、トットもママに話したら、孤軍奮闘から解放されて、気持ちが少し軽くなった。

三次試験のパントマイムはやったことがなかったので、前の人のマネをしたら、なぜか試験官は大笑いだった。

四次の歌の試験では、試験官から「履歴書には声楽科と書いてあるけど間違いないんだね」と怪訝そうに尋ねられたりもした。とても受かる自信はなかったけれども、なんとかパスすることができて、最終の面接試験に臨んだ。

面接では受験の動機を聞かれて「いいお母さんになりたいんです」と答えたら、
「なにを言っているんだ」と笑われた。
履歴書の父親の欄には「不明」と書いておいたのだが、パパについての質問があった。
「黒柳って、ヴァイオリンの黒柳さんと関係があるの?」
「う~んと」
でも嘘はつけない。
「父です」
「お父さんに相談してきた?」
「父に相談したら、そんなみっともない仕事はやめろと言われるに決まっているので、黙って受験しました。あ、みっともないというのは、父の考えです」
「お父さんは反対する?」
「こういう世界はだます人が多いからやめなさいって、きっと言われると思います」
トットが必死に答えるたびに、試験官たちは笑いころげた。
さすがに自分でも自分でも、これでは受かるはずがないとあきらめていたが、面接試験の翌日、
トットがいないときにNHKの偉い人が家までやってきて、対応したママにトットの内定が伝えられた。そして「守綱さんはお許しになるでしょうか」と聞かれたそうだが、ママが上手に答えてくれた。
信じられなかったけど、この日のうれしさはずっと忘れないでいようと思った。
パパには、ママがうまく説明してくれたみたいだ。
パパはトットに「やってみるといいね」と言ってくれた。





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最終更新日  2025.08.31 13:04:24


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