旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

ビング．クロスビー、≪我が道を往く≫

お年寄りに接する時に赤ちゃん言葉を使ってはならない・
これは、介護実習で教わったことだ。
クリスマスになると観たくなるもう一本の映画・
”我が道を往く”。
”聖メリーの鐘”の続編と先夜書いたがわたしの勘違いで
”我が．．．”が先に作られたようである。
オマリー神父にビング　クロスビー
老神父にあの”裸の町”のハリー　フイッツジェラルド
監督も同じくレオ　マッカリー

同じオマリー神父の話である。
こんな人が街に溢れたらと思わずにいられない素晴らしい人だ。

介護とか　また、人に説教をするというと　どうしても
気負いすぎてしまい、熱を入れれば入れるほど
空回りすることがある。が、オマリーのように
何気なく、どんなことをも受け入れ、さらりとなされる行為が、
人を和ませ、勇気つ゛け、元気にさせる。

そんな人になれたら、また、溢れたらどんなに良いだろう。
と思わせる映画”ＧＯＩＮＧ　ＭＹ　ＷＡＹ”．

聖ドミニコ教会は財政難で、教会も金融会社の抵当に入っている。
老神父はもうどうする力もなく、無気力な毎日を送っている。
彼は非常な健啖家で毎食のメニューを賄い婦に聞くのが
楽しみのひとつであるが６５歳にしては老いて見える。

その教会の建て直しのためにやってきたのが、
オマリーである。
無論老神父はそのことを知らされていない。
舞台はわたしが思うにブルックリン辺りか？

街には、親に放任された子たちが溢れているし
親たちも無神論者が多いのか教会に行く様子もない。

赴任地に着いた途端に子供等が業者の七面鳥を盗むところに
出くわす。
老神父とは意見も考えも違うがオマリーは何のその。

この老神父がなんともいい味、可愛いというのは
失礼なのだが、駄々ッ子のようでもあり．．．．

ある日老神父は司教とあってことの真相を感じ教会から
家出をし、雨の中を歩き回って警官に送り届けられる。

殊勝にも謙虚になる老神父だが　オマリーは決して老神父を
お年寄り扱いをすることなく　言い訳を聞いてやる。

ベッドに寝かせ、食事をさせ、彼と対等に話をし、
９０歳になるという老神父の母親の話をするが、そのときの
老神父は幼子のようである。

本棚の本の後ろに隠してあるオルゴールを取り出させ
”毎年母が送ってくれるんだよ”といってそのオルゴールの
中からウイスキーを取り出しグラスを交わす。
　”クリスマスになるとちょうどなくなるんだ”

この先の希望もないと思っている神父は言う。
”若者は希望に光輝いているが、
わたしは光が消えないだけまだましだ。”

ーーそのオルゴールの曲は♪ルーラルーラルー♪という
子守唄だった。
その曲をオマリーガ口ずさむと老神父は天使のような寝顔を
見せた。
オマリーの幼友達ーー１人は世界の歌姫になった女性、
１人は同じく神父になった男性が良い関係で登場し、教会の再建に
一役かうのだが、オマリーは
盗みばかりをする子供たちを集め聖歌隊を作っていく。
歌姫の（カルメン）とシューベルトの（アベ　マリア）が
素晴らしい歌声ですよ。

この三人と子供たちが親たちを教会へ足を運ぶようになるきっかけを作る。
この映画でのポイントは陰から上手に老神父を支えているが、
決して老神父の（誇り）と（尊厳）を侵さないことだ。

これはすごく大事なことで物忘れをしても、意見が違っても、
年寄り扱いをすることなく、また、
老いたどうしようもない部分は、本人に気付かれないように
ＢＡＣＫ　ＵＰするという真の思いやりである。

教会が火事で焼けてしまい、資金稼ぎに学校の休みの間
聖歌隊として各地を回る子等。

再建された教会を見て、役目を終えたオマリーは
またよそへ転任していくことになる。
方法は違えど根本理念は一緒だったと、老神父は最後の乾杯に
例のウイスキーをグラスにいれ、”もうすぐクリスマスだ”
と。

その日教会にはたくさんの
親たちが集まり　説教をする老神父は
オマリーが来たときから比べれば溌剌と希望に満ちている。

たとえ幾つになろうが自分が人にとって必要な人間だと自身が
思うこと。これが生きる活力になり、光り輝くことなのでは
ないだろうか。

聖歌隊が”♪ルーラルーラルー♪を
歌いはじめると、車椅子に乗った９０歳の母が老神父の方へ
椅子から降りて歩いて来、しっかりと息子を両手で抱きしめる。
オマリーの計らいだ。

そのときの老神父はもう完全に幼子であった。

そして、それを陰から、見届けたオマリーは静かに去っていく。

我が道を往くために．．．．。
永遠の輝きに向かって．．．。

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