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2009年10月21日
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「本気ですか!? 四条の姫君を伊予に迎えると!?」

 幸鷹が頓狂な声をあげた。信じられないことだった。

「おや、そんなに不思議かね? 私と彼女の仲をまんざら知らないわけでもあるまいに。」
「そのために、橘の遺産も受け継ぐことにしたと言うんですか。」
「姫君一人養うのに、資産は多い方がいいからねえ。」
「信じられません。あなたは貴族を嫌っていたはずだ。」
「ああ、嫌いだよ。大嫌いだ。しかし、君と彼女は特別でね。」

 すいと流した目で見るから、幸鷹はぽおっと赤面した。動揺を隠せないままに言葉を続けた。

「と、とにかく、私は反対です。紫姫が伊予で暮らしていけるわけがない。」


 幸鷹の顔がますます赤くなった。

「ほほう、図星のようだ。」
「わ、私はそんなつもりは……!」
「恋文の中には藤原宗家の若君のものもありましたと、乳母が惜しそうに言っていた。君のことかい?」
「な……!」

 翡翠はふふと笑って、手にした杯を置いた。

「ともかく、決めたのだからね。明朝、石原の里から船出する。よければ見送りに来たまえ。」
「誰がお前なんかを……!」
「ふふ、その憎まれ口も懐かしいねえ。しばらく聞けないとは残念だ。彼の家司殿にはここを危急の際のよりどころと教えておいたから、よろしく頼むよ。」
「……!」

 憤慨きわまりない幸鷹に向かって後ろ手で手を振り、翡翠は幸鷹の屋敷を去った。


「勝手な……」

 腹は立ったが、何だか清々しかった。あの自由さが羨ましかった。幸鷹にとっても、伊予の想い出は忘れられないものだったのだ。持ち帰った木を今でも大事に庭に植えているほど。あの木を持ち帰ると言ったとき、あの海賊は一瞬目を丸くして、それから呆れたように高笑いした。あの時も、自分は今と同じように怒っていたと、幸鷹は懐かしく思い出していた。





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最終更新日  2009年10月21日 23時35分17秒
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