この厚生労働省元局長の村木厚子さんが無罪となった文書偽造事件と、それに絡む大阪地検特捜部の証拠改ざん・隠蔽事件をめぐり最高検は、20人近い検事が3カ月かけ捜査関係者ら約130人から聞き取りし捜査の問題点を検証したほか再発防止策を提示して、検証結果報告書をまとめたのだ。しかし、有識者に言わすとこの報告書からは抜本的な改革は見えないみたいで、国民の検察不信を払拭するには程遠い内容みたいなのだ。検察官の取り調べを受けた関係者には事情聴取せずに、内輪だけの聴取で終始しているなど、大阪地検の問題に矮小化した印象を受けているそうで、再発防止策では特捜部の重要事件は地検の検事正が指揮してきたが、これを高検検事長の指揮とすることや特捜事件にも取り調べの一部に録音・録画を導入することも盛り込まれてはいるそうなのだ。この一部可視化導入も都合のいいところだけの可視化とも読めるともいわれているそうなのだ。
東京地検幹部の一人は「総長が代わったからといって今朝の青空のようにすっきりとはいかない。国民の検察への厳しい目は簡単には変わらない」と険しい表情だったのだが、特捜部の中堅検事は「信頼回復につなげるしかない。不祥事で注目されるのは昨年で最後にしたい」と新聞等に談話が載っていたのだ。これとは別に捜査機関による取り調べ全過程の録音・録画を目指し、京都弁護士会が作ったキャラクター「カシカシカ」が、日弁連主催の各地のイベントでビラやのぼりに登場しているそうなのだが、この「カシカシカ」の図案を手がけたのは京都弁護士会職員の井上慎也さんという人なのだ。大阪弁護士会のスローガンである「ないな、可視化しかないな」からヒントを得て、カメラを持ったシカのデザインを考案したそうで、地元以外に全国的に活動場所を増やし、認知度アップを図るそうなのだ。井上さんは「ぴんと腕を伸ばし、真実を写すカメラを持っている。可視化実現の役に立てれば」と話しているのだ。
もっとも、国民の検察不信は「特捜解体論」まで出るほど頂点に達しており、トップの検事総長が引責辞任に追い込まれ、新体制となっても立て直しの前途は多難みたいだ。捜査機関不信の最大の原因は、ストーリーありきの捜査手法と密室での強引な取り調べ、さらに都合の悪い証拠は出さないという証拠開示の在り方にあるのだが、この再発防止策でそれが解決できるとは思えないのだ。捜査過程の透明度が高まらなければ検察不信はなくならないのは当たり前の話で、都合のいいところだけを可視化しかねない一部可視化では意味がないのだ。もはや全面可視化は避けて通れないと認識すべきで、検察側の手持ち証拠の全面開示も必要なのだが、何も全てを国民の前に公開せよといっているのではなく、裁判で疑問が出たときにいつでも検証できるような制度が必要なのだ。
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