広島豪雨災害は発生から1週間以上が過ぎ犠牲者は70人を超えたそうなのだが、被災地ではいまも6万世帯の15万人を対象に避難勧告・指示が出ており、ライフラインも復旧しきっていないというのだ。ピーク時6900戸が停電した安佐南区・安佐北区ではなお250戸で停電が続いているし、安佐南区を中心に219戸が断水中だというのだ。そして被災地近くを通るJR可部線の可部―緑井間は運転を見合わせたままだ。広島県は今後も土石流が発生する恐れがあるとして、上流に土砂が崩れた現場には捜索活動などでの 2 次災害を防ぐため、ワイヤを張って土塊の移動量や土石流の発生をサイレンで知らせるセンサーの運用を順次始め、崩れた土砂の状態を監視しているというのだ。
今回の土石流災害では土石流の発生から遅れたとは言え避難勧告・指示が発令され、安佐南区と安佐北区で6万3千世帯の約15万人が対象となっており、そして1282人が避難所に身を寄せ親戚や知人の家に避難している人もいるのだ。災害から 1 週間以上がたち住民たちの疲労も限界に近づいているわけなのだが、広島県や広島市がその被災者を対象に半年間無償で貸し出す公営住宅入居の抽選会が行われ、 157 戸に対して 284 世帯が申し込んだそうなのだ。避難勧告を出した場合には避難所を設ける必要があって、広島市では12カ所を開設しているというのだが、避難生活が長引けば職員の人件費や食事の費用もかさむわけなのだが広島市は避難解除には慎重に見極める構えだ。
「もう少し時間をいただきたい」広島市の松井一実市長は、避難勧告・指示が長引く可能性を記者会見で示唆したそうなのだが、雨量などを基にした発令基準と比べ解除の基準はあいまいで、いったん解除して二次災害が起きれば行政の責任を問われかねないのだ。災害対策基本法によると発令と解除を判断するのは市町村長だということなのだが、松井広島市長は少しでも危険性があれば避難勧告を出すべきだという議論のなか、「解除は容易ではない」と慎重な姿勢をみせている。内閣府のガイドライン案も気象庁などが出す土砂災害警戒情報の解除を基本とし「慎重に判断を行う必要がある」との表現にとどめているのだが、今回の警戒情報は被災日当日に解除されているのだ。
広島市の水防計画は「現地の状況や今後の気象予報などを勘案し、避難の必要がなくなったと認められる時に解除する」と定めるだけで、基準を具体的に示せない理由について内閣府の担当者は「解除後にゲリラ豪雨などで災害が起きた場合に責任が生じる懸念がある」との見方を示している。82人が死亡した 3 年前の紀伊半島豪雨では、奈良県十津川村が全村に避難勧告を出したのだが、一部では避難指示の解除までに1年半かかり、避難住民はその間仮設住宅で生活したというのだ。この時は地滑り対策の補修工事を終えた時点で安全と判断したというのだが、避難生活が長引けば生活再建が遅れるだけでなく、避難した住宅への空き巣の被害も心配しなくてはならないのだ。
広島市で起きた土砂災害の発生直後から災害が起きた原因や今後の対策などについて、現地調査を行っている研究者で作る調査団が会見を開き、「山を切り開いた宅地開発の在り方について再検討していく余地がある」という考えを示しましたというのだ。この調査団は広島市で起きた土砂災害の原因や被害状況などを検証することで、今後の都市計画について提言しようと土木学会と地盤工学会に所属する研究者が緊急に設置したもので、災害が起きた翌日から現地調査を始めているというのだ。今回の被災地は昭和40年代にベッドタウンとして大規模な宅地開発が急速に進んできたとしたうえで、「山と平野部が押し迫ったところでの宅地開発については再検討する余地がある」という考えを示したそうなのだ。
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