年末に総務省が発表した昨年の 11 月分の労働力調査によると、雇用者数が 5758 万人と前の年の同じ月に比べて 82 万人増え、率にして 1.4 %の増加で 47 カ月連続の増加となったそうなのだ。 47 カ月というのは第 2 次安倍晋三内閣が発足して、「アベノミクス」がはじまってからずっとということだという。完全失業率は 3.1 %と先進国の中でも例をみない率まで低下しており、事実上完全雇用と言ってよい状態だという。そのうえ人手不足は深刻で求職者 1 人に対して何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」は 11 月に 1.41 倍を記録しており、今年もこの人手不足が一段と深刻化するのは間違いないという。団塊の世代が労働市場から退出していく一方で、少子化によって新たに労働市場に参入してくる若者は減っているというのだ。
女性や高齢者の活用を声高に叫んでみたところで限界がやってきており、オリンピックに向けて今後景気が過熱すれば人手不足による忙しさは今の比ではなくなると予想されている。安倍首相は「働き方改革こそが今後 3 年間の最大のチャレンジ」だと繰り返し述べているが、安倍首相に言われるまでもなく「働き方」を変えなければ会社も社員ももたないのだ。企業は慢性的な人手不足に加え将来にわたって人材を確保できる展望が描けないことから、新卒一括採用だけでは足らず中途採用の拡大を一層進めていくことになるとの予想もなされている。しかも昨年は電通の過労自殺が大きな社会問題になったが、人手不足によって多くの会社で「今まで通りの働き方」では社員がもたないギリギリのところまで来ているという。
これは「失われた 20 年」の間に社員数を絞りに絞ったところへ、景気が底入れし仕事が増えたのだから社員はたまらなくなっており、仕事が増える中で今働いている既存の社員への荷重は確実に高まっているという。毎日残業をしないと仕事が終わらないという人の数が確実に増えているのだが、もともと日本の「正社員」は「残業が当たり前」という慣行の中で成立してきた。会社に命じられれば残業も出張も転勤も拒絶するのはなかなか難しく、忙しさの中で追いつめられていく社員は少なくないというのだ。業種では私の所属している建設業といった人手不足が深刻な分野が上位に来ており、建設業者内にもあまり浮かれた雰囲気はなく、この業界共通の悩みは「仕事はあるけど人が足りない」というものなのだ。
今年開催されたリオ・デジャネイロ五輪の競技会場建設が遅れているというニュースを見て、「やっぱりブラジル人は」などと他人事のように笑っていると、 4 年後に笑われるのは日本かもしれない状態になっているのだ。企業経営者も優秀な人材を集めようと思えば、待遇を改善しなければ難しく、今いる優秀な社員をつなぎとめるにも処遇改善は不可欠となっている。ただ給料を引き上げるだけでは人件費が増えるだけで経営にはマイナスになってしまうので、考える経営者ならば無駄な仕事を省き収益性の高い事業へ人材を集中させることで、利益を上げようとしなくては、続々と人が辞めその会社の事業が滞ることになってしまうのだ。体力のない企業では今年は「人手不足倒産」が増えることになるとの予測もなされているのだ。
政府の「働き方改革実現会議」では総労働時間に上限を設けることが議論されており、現在でも週 40 時間以内で 1 日 8 時間以内という「法定労働時間」について、現実には「 36 (さぶろく)協定」によって骨抜きになっているという。労働基準法 36 条に「労使協定」を結んで所管官庁に届けた場合は、「労働時間を延長させたり休日出勤させたりすることができる」としているのだ。長時間労働が当たり前になっているのはこの「 36 協定」が原因だとして、これを廃止すべきだという声もあるというのだ。運輸や小売りなど「現場」がある職種の労働時間に上限を設けるのは必要だとする一方、経営幹部などマネジメント層を労働時間で縛るのはおかしいという声もあることから、総労働時間としての「枠」を設置する方が好ましいという指摘もあるという。
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