豊洲市場では8回目の地下水モニタリングで初めて、青果棟がある5街区の3カ所で基準値を超える有害物質が検出されたそうなのだが、東京都の豊洲市場の地下水から環境基準値を大幅に超える有害物質が検出されたことで、東京都は再調査を余儀なくされている。外部有識者の「専門家会議」は原因を特定できていないし、市場業者への補償費も増大しており、小池百合子知事は移転の可否を巡り厳しい判断を迫られることになっているという。「どう評価していいのか戸惑う」というのは専門家会議なのだが、想定外の高い数値に委員から驚きの声が漏れたそうで、座長の平田健正放送大和歌山学習センター所長は「明確な結論は出せない」として評価については明言しなかったというのだ。
今回の調査では5街区では最高濃度のベンゼンとヒ素が確認されたが、「汚染範囲」は全街区の計72カ所に拡大しており、専門家会議の平田座長は8回目までの結果と比較し、「今までの傾向とあまりにも違っている」と首をかしげたという。平田座長は「地下水を使うわけではないから、有害物質が含まれる土壌が飛散することもなく安全に問題はない」と説明したものの、専門家会議内には「あまりにショッキング」との声もあったという。この会議に出席しなかった小池知事は都内で報道陣の取材に応じ「不安を超える数字が出てきて驚いた」としながらも、豊洲市場移転の可否については「科学的な分析を優先したい」と述べるにとどめたが、専門家会議が直接関わって近く再調査に着手すると表明したそうなのだ。
また専門家会議では委員の一人が多量の有害物質が検出された原因に、豊洲市場の地下水位や水質を管理する地下水管理システムが影響した可能性を挙げたというが、地下水管理システムは昨年8月に試運転を開始し10月に本格稼働している。今回の調査はシステムが動き始めた後で稼働によって地下水位や土壌中の水圧が変化し、地下水中の有害物質の濃度が上昇したことも考えられるという。そうした推測を踏まえ「地下水の動きや状態、観測井戸の状況など細かい調査が必要」と主張したをうなのだ。東京都の担当者は会議後に分析会社の違いが影響した可能性を示唆したそうなのだが、担当者によると1~8回目までのモニタリングで調査に関わった分析会社と、9回目はこの3社とは別の会社が調査を行ったというのだ。
東京都の担当者は採水の方法などを確認する必要があるとして、専門家会議に最終結果を「暫定値」として報告したという。豊洲市場の予定地は東京ガスの工場跡地で石炭から都市ガスを製造する過程で、ベンゼンやシアン化合物のヒ素などの有害物質が土壌に浸透したとされているが、小池知事が豊洲市場への移転時期を延期した際に、移転の条件に地下水モニタリングで安全性が確認されることを挙げた。今回の調査で環境基準値を大幅に超えるベンゼンやシアン化合物などの有害物質が検出されたことで、東京都は再調査を実施することとなり移転の可否判断の先送りは不可避になったというが、移転の可否判断の遅れは市場業者への補償費などの増大に直結することになるのだ。
この他に専門家委員会の委員からは「土壌汚染対策を施した後、2年もたって急に数値が上がったのは理解できない。データについては慎重に扱うべきだ。暫定値という扱いは妥当だ」との意見も出たそうだが、今後は東京都の検査機関のほか専門家会議が改めて民間の分析会社を選定し調査を行うとしたという。東京都の幹部は「今回の調査結果を見れば移転を延期した小池知事の判断は正しかったが、多額の都税を投入することに理解が得られるかは別だ」と話したそうなのだが、既に完成している豊洲市場の維持管理費は少なくとも1日数百万円と試算されており、加えて設備投資を済ませた業者への補償も雪だるま式に増えることから、再調査で安全性を確認できなければ移転中止もあり得るという。
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