日本は国民総生産の規模こそアメリカや中国に次いで世界 3 位だが、生産効率となると OECD 加盟国 35 カ国の中で 22 位だとされている。電通の女性社員の過労自殺をうけ長時間労働を美徳としてきた日本人の働き方が大きく変わろうとしており、日本の企業が前例主義や過去の成功体験から脱却するためのさまざまな方針の提案がなされている。電通の問題についてその提案者の一人が「長時間労働が当たり前という前例主義の企業姿勢の問題と、一つの会社しか選択肢がないような働き方の両方を変えるべきだ」と語っているが、「高度成長期のように長時間労働で生産量が増えた時代は昔のことなのに、長く働くことが当たり前という前例主義から逃れられない日本の企業は残念だというのだ。
日本では過保護・過干渉な親が多く親の敷いたレールを走る子どもたちは、外れることが許されないと思い込んでしまうとも言われているが、いまの仕事が嫌でも他の職場に飛び出せない「リセット・リスタート」できないことが悲劇につながっているというのだ。「外資は基本的に残業という考え方があまりない。時間ではなくアウトプット重視なので、結果さえ出せば会社にだらだらいなくてもいい」とされ、日本の企業が生産効率を上げるにはどうしたらいいかというと、「時間という考え方を捨てる」ことが必要だというのだ。「企業と個人両方が、時間という考え方を捨て、どんな価値を創造しているかを考えなければ生産効率は高くならない」組織や個人が経験則や成功体験に縛られがちな状況を打破する必要があるというのだ。
仕事を全部抱え込んで家にまで持ち込んで仕事してしまい、家庭生活や地域活動に参加できず仕事に没頭してしまう。その結果として人間関係が希薄になり相談できる相手も気づいてくれる人もいないというのは負の連鎖だというのだ。こうなる前に月の残業時間が 45 時間を超えたら働き方を見つめ直すことが重要だといわれている。日常生活の中で小さなことを変えていくことが必要だということのようなのだが、かつて過労自殺したワタミの女性社員の場合には死亡の数時間前に目覚まし時計やリンスなどを買ったレシートが発見されたというのだ。彼女は明日も出勤しようと思っていたはずだったというのだが、あるコンサルタントのオススメは「通勤途中、一駅前で降りてみる」ことだそうだ。
彼は「非日常になれば、周りを観察しながら歩く。そうすると新たな発見や視点が生まれる」として、朝の通勤中に一駅手前で降りて歩きながら頭をリフレッシュして、前例や過去にとらわれない自由な発想法として試してみてはいかがだというのだ。 NPO 労働相談センター副理事長の須田光照氏も「自殺や脳疾患、心臓疾患による早死には、やはり長時間労働が横行している職場で起こりやすいです。事務系では大手の物流会社の 30 代の管理職が海外出張先で脳出血をおこして倒れたケースを担当したことがあります。国際競争の激化でノルマも増え、長時間労働が日常化していた彼は、多くの部下を統括する立場で心身ともに過剰な負担がかかっていました」と過労死の恐ろしさを語っている。
自殺願望のない人が突然死んでしまうのだが、それでも本人は冷静だと思っている。それが過労の怖いところだということなのだ。 NPO 労働相談センター副理事長の須田光照氏は 0 代の管理職が海外出張先で脳出血をおこして倒れたケースを示して、「この男性は脳出血でしたが、精神疾患にかかる人も非常に多いですね。怖いのが本人には自覚がないこと。当相談センターに電話をするのは、当事者の家族や友人というケースが圧倒的多数。成果主義で長時間労働を厭わない雰囲気になっている職場では、周りもそうなので自分が異常な働き方をしている自覚がないんです」という。月の残業時間が 45 時間を超えるというのは、完全週休二日で一日2時間残業したらアウトになることをもっと知るべきだというのだ。
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