乗用車と軽貨物自動車の自動ブレーキについて、国連の作業部会で国際的な性能基準を策定することが決まったと国土交通省が発表した。早ければ来年度中にも基準ができるため国土交通省は国内で販売される新型車に搭載を義務付けるかどうか検討するという。国土交通省によると自動車メーカー各社が自動ブレーキの開発を進めているが、性能などに差があるのが現状で、統一的な国際基準ができることでメーカーの開発コスト低減などが期待されるというのだ。国連で設置される自動ブレーキの基準づくりの検討会議に参画し、国際基準を国内に導入する考えだというのだが、将来の自動ブレーキの導入義務化への環境を整え、国連の会議では日本が基準づくりを主導的に進めるという。
国際的な交通規則を定めた「ジュネーブ条約」や世界各国の「ジュネーブ条約」に基づく道路交通法は、現在のところ車両に運転を制御する人が乗っていることを前提としているが、このため事故が起きた場合の責任は一義的にはドライバーにあることになっている。国土交通省の担当者は「世界のほとんどの国がウィーン条約またはジュネーブ条約という道路交通の国際条約に基づいて車を走らせています。そこに車両には必ず運転者がいなければならないと記載があるのです。これに従う限り、人間の運転者がその責任の範囲内で車を動かさないといけません。日本ではジュネーブ条約を採択しており、日本の道路交通法にも運転者が車両を操縦しなければならないと書かれています」と語っている。
日本が提案し関係国が策定に同意した内容では、専門家会議が設置され早ければ 1 年程度で基準ができるというのだが、米国は会議には加わらず日本とヨーロッパ各国を中心に議論が進む見通しだという。自動ブレーキの基準づくりの対象となるのは乗用車と軽トラックで、半年間で定義や技術的な項目といった検討項目を固めるそうなのだ。具体的な基準が決まるには1年から2年はかかるとみられているが、国内を対象にした調査では自動ブレーキ搭載車は搭載していない車に比べ対車への事故が70%減で、対人への事故が33%減の効果があるとされている。新車への搭載状況は約45%まで伸びており、頻発する高齢運転者の死亡事故の抑制に効果があるとされているそうなのだ。
これまで自動ブレーキの国際基準ではバスやトラック等の大型車のみを対象として追突を想定した対車両試験を定めていたのだが、今回は基準の対象を乗用車等へ拡大するとともに乗用車等については対歩行者試験を追加することについて、検討する専門家会議の設立を日本が提案したそうなのだ。国連の会議で自動ブレーキの基準づくりをリードし、国内メーカーに有利な基準内容にする考えだというのだが、国連内に専門家会議が発足し国際基準の改正案の検討が行われる予定だとされている。この国際基準が成立した際には我が国でも有識者会議での審議を行い、パブリックコメント等を経てこの基準を道路運送車両の保安基準として採用していく方針としているそうなのだ。
ここ数年で普及した「自動ブレーキ」は高精細のカメラやミリ波レーダーに、超音波センサーを駆使して前方衝突を防ぐ方式だとされ、他にも走行車線からクルマが出ないようにハンドルを自動制御する「レーンキープ技術」や、後方カメラやセンサーを使って駐車スペースを把握しハンドル操作をせずに済む「自動駐車システム」など、人工知能による複雑な判断を必要としない限られたシーンではすでに自動運転の要素技術が生きているというのだ。会議に加わらない米国では米運輸当局と自動車メーカーが、自動車に自動ブレーキを標準装備することで合意しているという。自動運転車で先行する米国は独自にルールをつくる方針だが、日欧が連携し共通基準の採用を働きかける意向だとされている。
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