犯 罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の要件を変え「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり法務省は、「正当に活動する団体が犯罪を行う団体に一変したと認められる場合は、処罰の対象になる」との見解を明らかにしたそうなのだ。これまで政府はくりかえし「一般の市民は対象にならない」としてきたが、捜査当局の解釈や裁量によっては対象になることが明らかになったということなのだ。衆院予算委員会の理事懇談会で法務省が文書を示したのだが、法案はまだ国会に提出されておらず「テロ等準備罪の具体的内容は検討中」と前置きしたうえで、対象となる「組織的犯罪集団」については「結合の目的が重大な犯罪などを実行する団体」という趣旨で検討していると説明しているというのだ。
犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、外務省は他国の法整備の状況を明らかにしているが、法案の成立が東京オリンピック開催の「必要条件」なのかただした国会の質問に安倍首相は、「もしテロリストに襲撃をされるということを法的な制度の中において、それを防ぎ得ないという、もし穴があるのであれば、それはおもてなしとして不十分であろう。考えうる限りの対応は取っておく、私は責任を果たしていくべきだという考え」と答弁したそうなのだ。政府は「国際組織犯罪防止条約の締結のため、国内法の整備が必要だ」としているが、すでに条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して新たに「共謀罪」を設けた国は少数だというのだ。
加えて自公政権が共謀罪法案制定理由に上げている「国連越境組織犯罪防止条約(パレルモ条約)」は、マフィアなどの組織的経済犯罪を対象としたものでテロ行為を対象にしたものではないとされており、「もともと正当な活動をしていた団体」もその目的が「犯罪を実行することにある団体」に一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団に当たり得るとの見解を示すなど国際法の趣旨からは逸脱しているものなのだ。法務省は「組織的犯罪集団」の定義について「結合の目的が犯罪を実行することにある団体という趣旨で検討している」と説明し、「もともと正当な活動を行っていた団体についても、目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得る」との考えを示している。
例えば「沖縄の基地建設反対の市民団体が工事車両を止めようと座り込みを決めれば、捜査機関は組織的威力業務妨害が目的の組織的犯罪集団と恣意的に認定し、デモに加わりそうな全国な労働組合の組合員を逮捕できる」という懸念さえあるのだ。政府は「組織犯罪処罰法改正案(テロ準備罪法案)」について、対象とする犯罪を原案の676の罪から277に絞り込む方針を固めたというが、組織犯罪と関連が深い罪に限定し3月上旬にも「組織犯罪処罰法改正案」改正案を閣議決定し国会に提出するというのだ。公明党は「テロと関連性のない罪が含まれている」と絞り込みを求めていたが、その内訳は事前に計画ができない性質の「業務上過失致死罪」や「公職選挙法違反」など組織犯罪との関連性が薄いものだけだというのだ。
日本の刑法は未遂罪として「犯罪の実行に着手」することを構成要件としており、共謀共同正犯も「犯罪を実行」することを構成要件としているために、組織的かつ重大な犯罪が計画段階で発覚しても、内乱陰謀などの個別の構成要件に該当しない限り処罰することができず、したがって強制捜査等もできないことになっている。しかし国際連合の総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」が重大な犯罪の共謀や、マネー・ロンダリングに司法妨害などを犯罪とすることを締約国に義務づけたため、「国際組織犯罪防止条約」の義務を履行しこれを締結するための法整備の一環として、刑法を改正して組織的な犯罪の共謀罪を創設する提案がなされているとの説明を繰り返しているばかりなのだ。
これは米国の「コンスピラシー」が元になっていて、何らかの反社会的なものという含意を伴う行為を達成するために秘密裏に行動することを決意することをいうのだが、共謀により刑事責任を負うべき状況を作出することであり、それ以外の決意をすることを犯罪としたものではないと判示されているのだ。「テロ等準備罪」について法務省幹部から説明を受けた安倍首相が了承したことは複数の政府関係者が明らかにしているが、原案は過去3度廃案になった法案と同様に「懲役・禁錮4年以上」の犯罪を対象としているのだ。組織犯罪に関連が深い277の犯罪についてテロ等準備罪の対象となる「重大犯罪」と位置づけているが、対象となる罪の数は今後の与党内の調整で変わる可能性もあるともいわれているのだ。
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