都会では第 2 期「とんかつ黄金時代」を迎えているそうで、昭和 30 年代から 50 年代にかけての第 1 期には上野や浅草といった下町の専門店で食べられる「とんかつ」は、戦後生まれの私の世代では御馳走の横綱だったのだ。そして銘柄豚を使った平成の「とんかつ」は御馳走のチャンピオンになりつつあるというのだ。しかも様々な企業がとんかつに熱い視線を注いでいるといわれており、とんかつやカツ丼の市場規模も一昨年には 381 億円で前年比 21% に増加となっているし、昨年度でも 444 億円で前年比 16% の増と拡大を続けているという。そのブームを逃すまいとファミレスの「すかいらーくグループ」だけでなく、丸亀製麺などを手がける「トリドールホールディングス」にダスキンなども参入を始めたという。
そのとんかつ市場の成長を牽引しているのが「ワンコインとんかつ」で、最大手の「かつや」は 490 円で提供するかつ丼が爆売れなんと 11 期連続の増収を達成したそうなのだ。そしてその「かつや」に迫るのが牛丼でおなじみの松屋フーズが手がけるとんかつ専門店「松のや」だというのだ。熟成チルドポークを使ったやわらかくジューシーなロースカツは衣もサクサクで食べごたえ十分な上に価格は 500 円だそうで、来店者たちは「家で作るものでもないし、ワンコインで食べられるので、前よりも食べる頻度が上がった」とか、「ちょっと贅沢したいなって時に。でも安いし、おいしいしでいつも食べに来る」と話しているが、 50 年前に牛丼店をオープンさせた松屋がカツ事業に参入したのは18年前で当初はチキンカツを提供していたそうなのだ
その後に高級志向のとんかつ店などを経て「松のや」を展開するようになったそうなのだが、とんかつ市場が成長している背景について「月間食堂」の通山茂之編集長は「一つは、女性の社会進出、引退した団塊世代など老夫婦だけの世帯の増加で、家庭で揚げ物をやらなくなってきている」ということがあるというのだ。つまり家庭で行う調理のアウトソーシング化が進んでいるわけなのだが、もう一つは揚げ物なら時間管理と温度管理ができれば品質がぶれにくくシステム化しやすいというのだ。外食業界は人手が足りない状況なのでパートやアルバイトでも安定した品質が出せるというのは外食チェーンにとって魅力で、豚肉の関税が下げられ将来は撤廃される見通しであることも業界にとって追い風となっているというのだ。
現在「とんかつ専門店」の多くは茶碗飯・味噌汁・香の物をセットにした和食のスタイルで「とんかつ」を提供しているというのだが、食べるための調味料はとんかつソースにすり鉢ですったゴマを混ぜる食べ方が推奨されるという。しかしながら店や地域によっては平皿盛りのライスでとんかつソースではなく昔ながらのデミグラスソースをかけて供するなど、洋食の「かつレット」のスタイルを残している例も少なくないという。添えられることの多い生キャベツの千切りは消化吸収を助け脂肪吸収を抑えるビタミンUを摂取でき有意義で、またシジミの味噌汁を添える店が多いことは脂肪分の分解を助けるメチオシンや、そこから合成できるタウリンといったアミノ酸が摂取できて理に適うといわれているのだ。
豚肉に衣をつけて揚げそこへキャベツの繊切りを据えただけの料理であるのに、とんかつは奥行きが深い料理だとされ、明治生まれの西洋料理がいつしか御飯に合う日本を代表する大衆料理になっていると言っても過言ではないというのだ。訪日外国人に対し「おいしかった食事」についてアンケートを取ったところ、とんかつはラーメンや刺身に続いて第 3 位にランクインしているそうなのだ。「一口目に食べた時の脂質、糖質、塩分がおいしさを決める 3 要素。その意味で、とんかつは世界的にみんながおいしいと感じやすい食べ物」だとされ、米国産牛肉の価格が下落した際には牛丼チェーンやハンバーガーチェーンの値下げが起こり「牛角」などの焼肉チェーンが勃興したことから、多くの企業が力を入れているというのだ。
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