安倍首相の諮問機関である政府税制調査会は今年度初めての総会を開き、高齢化を見据え老後に備えた資産形成を支援する税制や、働き方の変化に応じた制度のあり方について議論したという。与党税制調査会は年末に来年度の税制改正案をまとめるが、政府税調は数年かけて改革の方向性を探る方針だというのだ。政府は「人生100年時代」に備えるため公的な年金の補完として長期投資による資産形成を勧めているが、少額投資非課税制度や個人型確定拠出年金」など長期投資をする人の所得税を優遇する制度を設け、投資を促しているが複数の制度が並立して分かりづらい面があるとの指摘がなされている。このため政府も制度を整理して使いやすい仕組みを検討する方針だという。
退職金にかかる所得税は勤続20年を超えると所得から差し引ける額が増え減税幅が拡大される仕組みとなっているが、転職が増えている現状にそぐわないとの指摘があることから見直しを議論するという。中里実政府税制調査会会長は総会後の記者会見で、老後の資産形成に関する税制について「働き方により支援が違うなど課題がある。細分化された制度を総合的に検討する必要がある」と指摘したそうなのだ。そのうえ高齢の親から高齢の子が財産を相続する「老老相続」が広がれば生活にお金がかかる現役世代への資産移転が進みにくくなることから、政府は個人消費への影響を懸念していることもあって、政府税調は相続税や贈与税を見直して現役世代への生前贈与を促す必要があるかどうか検討するという。
「税金率をアップしても公平に使われているという感じは全くない」とか、「日本はお金を稼ぐ時だけでなく、使う時、自分のものを子どもに譲る時など、あらゆる場面で税金がかかり過ぎる感がある」といった意見も強いことから、中里会長は総会のあとの記者会見で「老後の資産形成の支援制度については、専門的な論点も多いので、時間をかけて丁寧に議論を進めたい」と述べたという。産業形態における働き方が多様化し確定申告が必要な人が増えていることを踏まえ、スマートフォンなどによる電子納税の拡大策も議論するというのだ。インターネットを介した民泊やフリーマーケットなど急速に広がる個人間取引や売買で得た所得を税当局が把握する方法や国際的な課税逃れへの対策なども焦点となっている。
政府税制調査会では委員の間から来年に予定されている消費税率の引き上げを確実に実施するよう求める意見が多く、「日本の社会保障制度は、このままでは持続不可能で、来年の消費増税を確実に実施しないといけない」とか、「社会保障費の増加がどれだけ日本の財政を圧迫しているか、そしてその社会保障費の財源として消費税があるということをわかりやすく伝える必要がある」といった意見が出たという。さらに「消費税率は将来的には 10 %では収まらない可能性が高いと考えている。 10 %以降の税率についても議論が必要だ」とか、消費増税の際に導入される軽減税率の制度について「導入は決定したことだが、実施のコストに見合う効果があるのかどうか、実際に制度を運用する際に考える必要がある」という意見も出たという。
来年 10 月に予定する消費税率 10% への増税時に導入する軽減税率の財源として 0.6 兆円を確保すると強調し、金融所得課税の税率引き上げ分を財源に充てることに関しては「税率が若干軽いのも事実だが株式市場への影響を注意深く見る」と述べ慎重な姿勢を示した。軽減税率は低所得者の負担を軽くする目的で食料品などを増税対象から除く制度だが、約 1 兆円が必要とされ 0.4 兆円分は財源のメドが立っており、残りの 0.6 兆円を確保するためこれまでの税制改正で一部の財源を確保しているのは確かで残りを精査するとした。 0.6 兆円には昨年の税制改正で決めた所得増税とたばこ税の引き上げ分を充てる案があるが、株式の配当や譲渡益に利子などの金融所得課税の税率引き上げには消極的な意見が多かったと言う。
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