近頃では「若者のクルマ離れ」と言われているが、日本自動車工業会が発表した乗用車市場動向調査によるとクルマを保有していない 10 ~ 20 代のうち「車を買いたくない」や「あまり買いたくない」という回答が全体の 54 %に達したという。若者の半数超が車を買いたくないという心境にあることになるが、警察庁の運転免許証に関する統計を見ると運転免許証の保有者数はほぼずっと増加傾向で、50年前を基準にすると当時に比べ昨年は 3.3 倍に増加している。ただし年齢別運転免許証保有者数で最も多いのは 40 ~ 49 歳で、 20 ~ 29 歳はその 6 割ほどであるから比較では運転免許証の保有者数が若年層ほど減っていることになっている。団塊の世代といわれ人口構成比の多い 70 歳前後はいまだに運転免許証保有人数が多という。
若い男性が車に興味を持たなくなったのがこの平成の 30 年間の変化だとされているが、若者のクルマ離れについては経済的側面もあるとされている。クルマを購入し分割払いやリース料を毎月支払いそのうえ駐車場の支払いを加えれば「タクシーに乗ったほうがいい」との価値観が出てくるのも当然だというのだ。しかしそういう若い人もクルマが嫌いだとは言っていないのではないかという意見もあり、それはクルマが便利だと感じているからタクシーを使うし、カーシェアリングやレンタカーも必要に応じて利用していることでも立証されているという。この平成の 30 年間で自動車を取り巻く環境は大きく変わってきており、こうした変化を引き起こしたのは「オートマチック車」・「パワーステアリング」・「カーナビ」の 3 つの要件だという。
普通自動車のオートマ車限定免許は平成 3 年から始まったが、平成 22 年にはオートマ限定免許を取る人がマニュアル車での免許を取る人よりも多くなり、平成 29 年に免許を取得した人は約 115 万人となっている。そのうちオートマチック車限定免許で取得した人は約 71 万人でマニュアル車での免許取得は約 44 万人と少数になっている。こうしたことを背景に普通自動車の販売台数でも昭和 60 年にはマニュアル車は 51.2 %でオートマチック車の 48.8 %とほぼ半数ずつだったのが、平成 2 年になるとマニュアル車は 27.5 %でオートマチック車の 72.5 %と大きく変化している。平成 12 年以降はオートマチック車の割合が 90 %を超えているが、オートマチック車の最大の利点は運転操作が非常に簡単になったことだという。
マニュアル車では難しかった坂道発進や信号待ちなどでのエンストなど運転技術の差が目立っていたのが一気に解消されたのだが、「いや、それだけじゃないよ。パワステの登場は、運転に力がいらなくなった訳で、女性の自動車運転への進出を大きく促進したはずだ」と、ある自動車メーカーに勤務する男性は言うのだ。パワステと言っても装備されていないクルマを運転した経験は、 40 歳代以上でないとないのだが、パワーステアリング装置はハンドルを回す力を補助するもので、低速で運転していても軽く片手でハンドルを回して方向転換できるのはこのパワステのおかげなのだ。それまでは低速でハンドルを回すのは力作業だっただが、パワステが装備されたのは高級車用の特別装備だったものが標準装備されるようになったというのだ。
そしてカーナビが登場したのは 1980 年代で当時のものは高額だったうえに精度も悪くなかなか普及しなかったという。ところが 1990 年代に入って GPS が搭載され位置情報の精度が一気に向上したことで購入する人が増え、さらに 1996 年には道路の混雑情報をリアルタイムに表示できるサービスが開始されると普及が始まり、 2002 年にはネットに接続する通信機能が搭載されたカーナビが登場し 2017 年の出荷台数は約 581 万台に達しており、 8 割近い乗用車に搭載されていると見られているというのだ。このように平成時代で乗用車は大きく変化してきているというが、自動車の運転が難しいものから簡単なものになったこともあって、このことは女性が自分で車を運転することを身近にしたというのだ。
それまでのカップルでドライブというと助手席の彼女も重大な任務を帯びており、大きな地図を膝の上に置いて行先までを運転する彼氏に指示しなくてはならなかったというのだ。運転席の彼氏と助手席の彼女とは「わいわい・がやがや」一緒にドライブをしていたという。女性たちからはくだらないと笑われながらも彼女の前でいい恰好をしようと男性たちは運転技術を磨いて、首都圏なら箱根路や関西圏なら六甲山など急坂でカーブの多いドライブコースに挑戦していたものだったというのだ。それが 29 歳以下の単身世帯での自動車の普及率をみると、男性が 39.6 %なのに対して女性は 56.6 %と若い女性の方が自動車を持っており、クルマは男性中心の道具だったものが操作性が改善されることで女性も利用できるようになったというのだ。
キーワードサーチ
コメント新着