政府は厚生労働省による毎月勤労統計の不正を受けて修正した来年度予算案を閣議決定したそうだが、閣議後の記者会見では菅義偉官房長官から「極めて遺憾。国民に不利益が生じることのないよう万全を期す」などと対応を急ぐ発言が相次いでいたという。宮腰光寛国家公務員制度担当相は不正の影響で国家公務員の失業者退職手当が約 1400 万円追加計上されたことを説明した上で「追加給付を漏れなく確実・迅速に行う」と強調したそうなのだ。山下貴司法相も「直ちに適正な対応をする」と述べたそうだが、多くの政治家が使う「遺憾」という言葉は辞書をしらべると「残念だ」という意味だと捉えられているが、ニュースの記事で「残念で遺憾」という言葉を使っているアナウンサーがいたそうなのだ。
遺憾 とは一般には「思い通りに事が運ばなくて残念だ」という意味で期待したようにならずに心残りに思うことなのだが、政治家さんが使う「遺憾」には単に「残念である」というよりも「そのものごとをするべきではなかった」とか、「そのものごとが意に反して行なわれてしまった」というようなニュアンスが強いように使われている。何かが起こった時に「なんかマズイことが起こったみたいだけど、ボクがやったわけじゃなし、知ーらないっ」ちいった言い逃れのような時に使うような言葉になってしまっているというのだ。それだから「残念で遺憾」と発言された場合には「残念であり大変困ったことだ、でも私が悪いんじゃない、私だったらそんなヘマはしない」というようなニュアンスで使っているのではないというようなのだ。
つまり「遺憾の意を示す」ということは「残念である」という意味であり、謝罪を意味する言葉ではないわけなのだが、、外交における「遺憾である」という声明は「為されるべきではなかった」という見解の表明として使われている。相手の行為に対する言及であれば非難となり第三者の行為に対する言及であれば旗幟の表明となる。ただしいずれの場合も劇的な対処を行わず事態を収拾しようとする意向を暗示するものであることが多く、本来の意味とは違外交表現においてはその言葉の中に直接語られていないものの、暗黙の内に示唆されている部分に真意が隠されていることが多という。特に政治関係において都合よく多用される表現であるが、本来の意味で解釈すればかえって相手に不快感を与えるものであるため注意が必要であるという。
この「遺憾」という言葉は政治家などの発言で最近でもよく耳にするが、そもそもどういう意味は広辞苑によると「思い通りにいかず心残りなこと」とされ、「残念」とか「気の毒」という意味とされているのだ。不祥事などが起きた際に度々使われて「もう聞き飽きた」などと批判も多いこの「遺憾」だが、政治の歴史で初めて出てきたのはいつごろだったのだろうかというと、単に残念なことを意味することを謝罪や謝罪を求める強い言葉と捉える人も少なくないのだ。去年 10 月末に召集された臨時国会では 48 日間の会期中会議録に残っているだけでも 74 回も使われていたそうで、つまり一日に平均 2 回は使われた「遺憾」という言葉も国会の本会議や委員会にとどまらないで使い方も一言足しで強弱を付けるとまでいわれているそうなのだ。
柴山文部科学大臣は「不適切な事案が判明したのは大変、遺憾」だし、公明党の山口代表も「極めて遺憾なことだと考えます」と語るし、麻生財務大臣にいたっては「甚だ遺憾の極みだと思いますね」という具合なのだ。そんな「遺憾」第 1 号は 1947 年に新憲法の施行に伴って開かれた第 1 回国会までさかのぼるそうで、総理大臣指名選挙を前に参議院事務総長を選ぶ際に多くの白票が投じられたことに対して北條秀一参院議員が「遺憾であります。特に國務総理大臣の指名選挙には各自はその責任を明確にし、白票を投ずるが如きことなきよう希望したいのであります」として以来、国会で発せられた遺憾は実に 4 万 4870 回に上るそうで、現在では他の国の表明においても遺憾の意を表したなどと伝えられること も多いというのだ。
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