厚生労働省が公表する「毎月勤労統計」の不正調査問題を審議した厚労委員会の閉会中審査で、有識者で作る厚生労働省の特別監察委員会が公表した報告書について、一部の調査対象者への聞き取りは厚生労働省職員が行っていたことが明らかになったという。監察委は設置から 1 週間で「組織的隠蔽は認められなかった」と結論付けたが、厚労委員会では与野党双方の議員から監察委の第三者性や信頼性を疑問視する声が相次いだという。毎月勤労統計の不正調査問題で厚生労働相が「徹底究明」を誓ってからわずか2週間で、幹部職員の処分を明らかにしたが組織的な関与も隠蔽も否定しており、不正という法律違反の核心部分は謎のまま幕引きが強行されたという批判が出ているというのだ。
根本匠厚労相は厚労委員会の冒頭で「こうした事態を起こしたことは極めて遺憾であり、国民の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる」などと改めて謝罪したが、調査結果は十分な裏付けもないまま組織的な隠蔽の意図を否定するなど「お手盛り」との批判を免れない内容だったという。わずか2回の非公式会合で事実関係が十分に精査されたかも不透明だし、賃金上昇率を押し上げた昨年1月の数値補正の経緯についても不自然さが際立ち真相解明にはほど遠いというのだ。「信じ難い事態で、言語道断だ」と監察委の樋口美雄委員長は記者会見でこう述べ憤りの表情を浮かべてみせたが、与党が決着を急ぐのは参院選の惨敗につながった12年前の「消えた年金問題」の二の舞いを避けたいとの思惑があるからだという。
報告書は不正な抽出調査を容認していたマニュアル「事務取扱要領」について、歴代の担当部長が決裁していた実態を指摘しているが、局長級の幹部がルール違反に気付いて担当者に指摘しても放置された事例があったことも明らかにしているというのだ。監察委は報告書で監察委と監察チームで延べ 69 人の職員や元職員に聞き取り調査をしたと説明していたが、厚生労働省は厚労委員会で実人数は 37 人だったと明らかにした。監察委が対象にした 31 人のうちの課長補佐以下 11 人だし、監察チームが対象にした 6 人に対しては厚生労働省職員が聞き取りをしていたという。監察委の報告書の原案は厚生労働省の事務方が作成していたことも明らかにしたことで、これに対し野党議員から批判の声が上がっているという。
立憲民主党会派の大串博志衆院議員は「第三者の土台が壊れている。虚偽報告書だ」と述べ報告書の撤回を求めた。共産党の倉林明子参院議員は「看板だけが第三者だったのでは」と疑問を呈している。根本厚労相は「監察委が最終的な判断をした」などと釈明を繰り返しているが、厚労委員会では与党議員も追及の姿勢を鮮明にているという。公明党の桝屋敬悟衆院議員は「監察委の調査はわずか 1 週間。いかにも拙速な調査という思いがぬぐいきれない」とした上で、「東京など自治体の状況も監察委で調査すべきだ」と再調査が必要との考えを示した。自民党の泉進次郎衆院議員は報道陣に対し「国民のみなさんが見た時に結果として納得のいく報告書になっているのかといえば、そこはまだ努力が足りない」と述べたという。
通常国会が開催されるが立憲民主党の福山哲郎幹事長はTVの番組で、毎月勤労統計の不正問題を巡り 根本匠厚生労働相の罷免を要求したという。「根本氏は著しく信頼性を欠いている」と述べたそうだが、野党の幹部は召集される通常国会で政府を徹底追及する姿勢を強調したという。立憲民主党の福山哲郎幹事長は政府が来年度予算案を閣議決定した日に根本匠厚生労働相が一報を受けていた点を問題視して、「予算案を黙って閣議決定したことは大問題だ」と指摘したという。予算案は不正発覚を受け修正して閣議決定をやり直しているが、共産党の小池晃書記局長は「問題の解明が予算案審議の大前提だ」と語ったそうなのだ。与党が再発防止に努める姿勢を強調したのに対し野党側は全容解明を主張しているそうなのだ。
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