千葉県柏市の住宅街近くの東京オリンピックの会場から 2 キロも離れていない場所で、東京電力福島第一原発の事故で発生した放射性物質を含む廃棄物が、首都圏でも行き場のないまま一時保管されているそうなのだ。ゴミの焼却灰や汚泥といった汚染廃棄物は 11 都県で計 21 万トンもあるが、「指定廃棄物」は放射性物質汚染対処特措法に基づき、環境大臣が指定する。政府が処理する」の約束は大半が果たされぬままとなっている。除染で出た「汚染土」を袋から取り出し全国の道路や農地造成などに使えるようにという動きも環境省主導で始まり、多くの汚染土が放射性セシウム濃度を低減したうえで土砂やアスファルトで覆うといった安全な利用方法があることから「汚染土のほとんどは再利用可能」という。
東京電力福島第一原発事故後福島県内の除染で出た汚染土は1400万立方メートル以上になっているが、福島第一原発事故由来の放射性セシウム濃度が 1 キロ当たり 8000 ベクレル超の焼却灰や汚泥などを指し、最終的には国が責任を持って処分する仕組みとなっている。国は放射能濃度が基準値以下の汚染土について最大で99%再利用可能と試算し、福島県内の公共事業で再利用する計画を進めている。県外で最終処分するためにも総量を減らす狙いがあるとするが、地域住民から「放射線が不安」とか「事実上の最終処分だ」と反発が出て実現は見通せていないという。中間貯蔵施設には4年前から汚染土の搬入が始まり235万立方メートルが運びこまれ、3年後には1400万立方メートルが搬入される予定となっている。
汚染土は一応福島県外の最終処分場に搬出されることが決まっているが、最終処分場を巡る交渉や議論は始まっていないという。環境省の山田浩司参事官補佐は「最終処分を受け入れていただくのは簡単ではない。現時点では全国的な理解を進める段階だ」と話しているが、汚染土の再利用はその理解を進める手段の一つという位置づけとなっている。環境省は有識者会議で「全量をそのまま最終処分することは処分場確保の観点から実現性が乏しい」として、再利用で最終処分量を減らし県外での場所探しにつなげる考えを提示しており、「指定廃棄物」の放射能濃度を下回ったり、下げたりした汚染土を、管理者が明確な公共事業などで使い道路や防潮堤の基礎のように安定した状態が続く使い方をするなどの条件を示している。
原発事故当時は放射性物質の一部は気流に乗って千葉県北西部にも到達し雨などの影響もあって一帯の放射線量は上昇した。また再利用する汚染土の量については濃度低減などの技術開発が最も進んだ場合には1400万立方メートルのほぼすべてが再利用でき、最終処分すべき汚染土は全体の約0・2%の3万立方メートルほどに減らせるという試算を明らかにしている。環境省は「再利用の対象は県内、県外を問わない」としているが、実証事業と称して実際に再利用計画を提案したのは福島県内の3自治体のみで、二本松市など2自治体では住民の反対を受け難航しているという。反対署名を集めている住民は「約束を変えて県内で最終処分しようとするもので、再利用はおかしい」と批判しているそうなのだ。
政府は今年から福島県飯舘村で「除染土」を農地に再生利用する実証事業を行う予定で、その後に全国各地の公共事業でも再利用を加速させるとしているが、そのため政府は再生利用の際の注意事項などを盛り込んだ手引きの案をまとめ、先月末に都内で開かれた検討会で示しましたそうなのだ。具体的な数字として環境省は「土を園芸作物などの農地の造成に再生利用する場合、土の放射性物質の濃度は1キロ当たり5000ベクレル以下」と説明しており、仮に多少の汚染があった場合でもその上に汚染されていない土を50センチ以上かぶせれば、住民の被ばく線量を政府の長期的な目標である年間1ミリシーベルト以下におさえられるとコメントしており、安全ならばオリンピック会場の造成にでも使う計画も浮上しているという。
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