京都の老舗銭湯が投稿した「常連様へのお願い」という張り紙の画像が話題を集めているそうなのだが、歴史が長いだけに古くから利用している地元のなじみ客が多い。初めて銭湯を利用する「いちげんさん」や若者にマナー違反があってもきつい言葉をかけたり叱ったりせず、優しく注意してほしいという呼び掛けとなっているという。リツイートは 4 万を超え「常連さんの監視するような目線が苦手」とか「注意の仕方もマナーのうち、かもしれませんね」といった共感のコメントが広がっているそうなのだ。この戦闘は戦後間もない時期に今のご主人の祖父が明治ごろから営業していた銭湯を買い取り今に至っているというが、一帯は京都市役所に近く古い町家が多く残っており、古き良き下町の銭湯のにおいを漂わせているというのだ。
私も知っているのだがお風呂がある家庭がまだ都会に少なかった頃に日本人は公衆浴場という施設を利用しており、公衆浴場の歴史は古くその発祥は奈良時代までさかのぼり、鎌倉時代の文献には「銭湯」という言葉が表れているという。この銭湯は老若男女や身分に関係なく皆が平等に裸になって入るお風呂というところに大きな特徴があって、体が温まって気持が伸びやかになり会話も弾み、そのうえいろんな人が一緒に利用する場所ですからお互いに気持ち良く利用するための約束事があるというのだ。ルールとかマナーというものなのだが実は銭湯において守らなくてはならないマナーは日常全般にもかかわるもので、まさに銭湯は常識的な生活マナーをたくさん知ることができる場所と言われていたという。
銭湯を利用する頻度も昔より減ってきているのだが、年に数回だけ旅行先の大浴場に入る程度なんて人も少なくないという。そうなると以前は当たり前だった銭湯でのマナーを知らない人が増えるのも仕方がないことで、「かけ湯」という言葉さえも知らないかもしれない。念のために説明しておくと「かけ湯」とは湯船に入る前に身体を流すことで、シャワーのあるところならシャワーを浴びても良いとされ、これは汚れた身体で湯船を汚さないためだという。突然熱い風呂に入ると身体に大きな負担がかかることから身体を温める意味でもかけ湯は重要だという。また湯船にタオルや髪をつけることもマナー上よくないとされており、タオルはお湯を汚す可能性があるし髪もまたフケやホコリでお湯を汚してしまうので、湯船につけるべきではないという。
これらは銭湯を利用する人にとって暗黙の了解みたいなところがあるのだが、それを知らずに利用していると場所によっては注意されることがあるというのだ。京都の老舗銭湯主も「体を洗いに来るというよりも、常連さん同士でのおしゃべりを楽しみに来ており、自分の家にいるような感覚になるようです」という。それ自体は悪いことではないがたまに新規のお客が来ると何かとその振る舞いに神経をとがらせる常連が一部にいて、特に若い人は銭湯を利用した経験が少ないため常連にとっては当たり前に思えるマナーも心得ていない場合があるというのだ。モラルやマナーを叱って教えるのでなく優しく声をかければ相手も受け入れやすいし次からは気をつけるようになるとして、常連が銭湯初心者を温かい目で見守ってくれるようにと望んでいる。
銭湯の経営は厳しい状況にあって全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会によると、全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会の銭湯は 1968 年の約 1 万 8 千軒をピークに減少を続け今年 4 月時点で 2204 軒まで減っているという。それは一般の住宅における風呂の普及だけが理由ではなく京都の老舗銭湯主も「まず銭湯の後継者難があります。古くなった設備の更新に、場合によっては億単位のお金がかかることも大きいです。人手不足もあって工事費もかなり高くなってますし」と打ち明けている。新しい住民や観光客が入浴しに訪れることは珍しくないが、それだけに常連と新しい利用者が互いに尊重し合いながら京都の銭湯文化を支え続けてくれることを心から願っているというのだ。
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