退職後の可処分所得や満足できる生活水準は退職前の年間収入の状況に因ると考えられることから、 50 代のサラリーマン夫と専業主婦の二人世帯を対象に老後の生活のために用意すべき金額を年間収入別に推計した結果などから、 50 代世帯の半数は老後の生活水準の大幅な低下が避けられない状況にあるという。「老後に公的年金以外に 2000 万円以上が必要」と書かれた金融庁の報告書だが、そもそも「年金だけで老後は安泰ではない」ことは 30 年以上も前から常識だったはずで、一体いつの間に「年金だけで死ぬまで安心」と信じる日本人が増え財布のヒモが堅い日本人を「つみたて NISA 」などにカネをつぎ込ませたかっただけなのに、なぜか「選挙の争点」だとか「国家的詐欺」なんて感じで大騒ぎになってしまっているのだ。
公的年金だけでは老後の資金は2千万円不足するとした金融庁の報告書が国会等でも問題になっているが、 「厚生労働白書」の案では「年金給付が国民の老後生活の柱としての役割を担っている」と明記し、年金制度に対する国民の不安払拭に向け厚生労働省として決意を改めて示したという。公的年金の受給権のある人は全人口の約3割にあたる約4010万人で、高齢者世帯に関しては収入の約7割を公的年金などが占め、約5割を超える世帯が公的年金による収入だけで生活しているという。また野党が早期の公表を求めている年金の長期的な給付水準を示す5年に1度の「財政検証」については、「経済前提などについて、専門委員会において議論を進めている」として早期に発表する気がないことを認めている。
今回の「厚生労働白書」の案でも「現在70歳未満となっている厚生年金の加入年齢を引き上げた場合」など、想定される制度改正を考慮した「オプション試算」を詳細に示す予定となっており、「財政検証」については公表が夏の参院選後にずれ込むとの見方が強いという。中央官庁の障害者雇用水増し問題については「深く反省」との文言を盛り込み、政府統計の不適切調査については「心よりおわび申し上げる」と陳謝している。ところがこれに関連し厚生労働省の木下賢志年金局長は参院厚生労働委員会で、「私どもは、老後の生活は年金だけで暮らせる水準だと言ったことはない」と述べている。このことは公的年金制度だけでは必ずしも老後の生活費を全て賄うことを前提としてはいないとの考えを示したものだといういのだ。
菅官房長官も老後に年金収入以外に2000万円の資金が必要とした金融審議会の報告書について、「審議会の独自の意見だ」と述べ2000万円という金額は一例にすぎないとの考えを改めて強調している。必要な資産額は個人の生活状況に応じ個人がそれぞれ判断すべきだとの認識を示したという。65歳で定年退職した夫婦の場合毎月約5万円不足し30年間で約2000万円の生活費のため資産取り崩しが必要だとしている点では、菅官房長官は「個々人の生き方は個々人が責任を持って行うということだ」と述べ、必要な生活資金は個人によって異なると強調した。その上で「政府は個々人が多様な資産形成ができるように、少額投資非課税制度など様々な制度を構築している」と語り資産運用の必要性にも言及したという。
「年金だけで死ぬまで遊んで暮らせる」というミスリードということなのだが、老後 2000 万不足という報告書を受け「 100 年安心詐欺だ」と怒っている立憲民主党の辻元議員などのように、世の中には「年金だけあれば貯蓄ゼロでも死ぬまで安心」と思い込んでいた人が一定数いるのだが現実はそんなに甘くないというのだ。ファイナンシャルプランナーの多くが「 65 歳以上は持ち家でも 3500 万は必要」だとか、「ゆとりある生活を送るなら 4500 万はいる」などとさも常識のように語っているというのだ。公的年金が老後資金の柱の一つになってきていることが「百年安心」という認識だが、公的年金だけで生活ができることが「百年安心」だと考えているのでまったく話が噛み合っていないのが今の状態だというのだ。
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