毎年この時期になってくると8月15日の終戦記念日には靖国神社の問題が取り上げられるのが恒例になってきているが、今年は例年ほど話題にはなりそうにない気配だという。菅義偉官房長官は閣議後の記者会見で安倍晋三首相が終戦記念日に靖国神社を参拝するか問われ「首相自身が適切に判断されることだ。私も同様だ」と述べている。安倍内閣の閣僚は 2 年連続で終戦記念日に参拝していないが、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は靖国神社を終戦記念日に私人として訪れる考えを示しているそうだ。東京都内で記者会見し「靖国神社についての知識があまりに乏しいので勉強してくる。公党代表として行くつもりは一切ない。公人として公費を使うことはない」と述べたという。
靖国神社は今年創建150年を迎えそのための準備も進められているが、その一方で西郷隆盛や江藤新平に白虎隊や新撰組といったいわゆる「賊軍」を合祀しようとする動きも生まれているそうなのだ。今の一般国民の感覚からすれば賊軍の戦没者を合祀しても一向に構わないと思えるだろうが、「官軍」の戦没者を祭る「東京招魂社」として始まった靖国神社の歴史を考えるとそれは神社の根本理念を変更することを意味するというのだ。戦前の靖国神社は内務省や陸軍・海軍両省が共同で管理する国の機関だったことから靖国神社のあり方は国が決定していたという。しかし戦後になって靖国神社は民間の一宗教法人となったが、その特殊な性格から神社本庁には包括されなかったというのだ。
それは靖国神社のあり方は神社側が決められるということを意味するのだが、そこで靖国神社は昨秋に 当時の 天皇陛下(現上皇さま) に今年の神社創立 150 年に合わせた参拝を求める極めて異例の「行幸請願」を宮内庁に行い断られていたというのだ。靖国神社や宮内庁への取材で分かったという。天皇自らが神社に参拝することは「親拝(しんぱい)」と呼ばれるが、平成の時代には一度も「親拝」が行われなかった。靖国側は再要請しない方針で天皇が参拝した創立 50 年や創立 100 年に続く節目での参拝は行われず不参拝がさらに続く見通しだ。天皇の参拝は創立から 50 年ごとの節目以外でも行われていたが、 1975 年の昭和天皇が最後で A 級戦犯合祀が「不参拝」の契機となったことが側近のメモなどで明らかになっている。
その靖国神社と言えば前宮司の小堀氏は靖国神社を訪れないことで、当時の天皇陛下(現上皇さま)が「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていく、今上陛下は靖国神社を潰そうとしている」と述べ靖国神社を潰そうとしているとの考えを語っている。今年退位されたが予定される現上皇さまはこれまで一度も靖国神社を訪れていないが、その一方で現上皇さまは戦時中に日本と敵対した国々との和解を模索してきたとされており、中国と朝鮮半島での日本軍の行為について哀悼の意を表明してきているし、戦死者を慰霊するため沖縄だけでなくサイパン島をはじめ太平洋の戦地もたびたび訪問しているが、これらの行動に、日本の右翼団体が反発することもあったと言われている。
また小堀元宮司は皇后となった雅子親王妃が神道を嫌いなので、天皇陛下(現上皇さま)が退位すれば当時の徳仁皇太子と雅子妃は靖国神社を参拝しないだろうとも語っている。この発言があった時に靖国神社当局は声明を発表し、小堀元宮司の発言は「極めて不穏当」だったと言及しており、また小堀元宮司が皇室関係の事務を監督している宮内庁を訪れ陳謝したと明かしている。靖国神社参拝に熱意を持ってきた安倍首相が参拝を見送ってきたことから安倍首相以降の首相が参拝するとは考えられないし、 まして今年即位された今の天皇が靖国神社に参拝することは考えられないしそれを要望する声も上がりそうもないし、靖国神社側も肝心な戦没者を祀るという行為には必ずしも誠実ではないと言われているそうなのだ。
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