かつては「まずはビールで乾杯」だったが近年は好みの多様化もあり、若者を中心にビール離れが進んでいる一方で、割高ながら個性的なクラフトビールは海外から人気が広がっているそうなのだ。その味や香りの決め手となる原材料作物「ホップ」も注目され減産が続いていた日本産へのニーズが高まっているが、日本産ホップの魅力は小規模農家での栽培が中心なので生産者の目が行き届き丁寧に栽培されていることだという。大きな気候変動さえなければ安定的に品質の良い奥ゆかしい香りが特徴の日本産ホップが供給できるそうで、毎年わずかに香味が異なる日本産ホップは収穫後すぐに生のまま凍結して使用することで、その年ならではのフレッシュなホップの香りを活かしたビールが楽しめるというのだ。
日本産ホップの生産量は世界のわずか 0.2% だが、その希少な日本産ホップが今注目を集めており、大手メーカーも国内ホップ農家の支援に本腰を入れ始め、1ヘクタールの畑に地面から5メートル程度の高さまで垂直に伸びたホップの緑色のツルがずらりと並んで丁寧に栽培されている。ドイツ製の専用機材を付けた大型トラクターが進むと爽やかな香りとともに吸い込まれ約1800株の収穫作業は3時間半で終えるという。岩手県遠野市の農業法人はキリンビールも出資するのだが、吉田敦史代表はホップ生産が盛んなドイツの栽培法を取り入れ大規模・集約型栽培の確立による生産拡大を目指している。13年前には日本産ホップ生産量は497トンだったが昨年は202トンに半減したが有数の産地でも 家族経営の農家が多いという。
日本産ホップの約7割をキリンが購入しているそうで、キリンのホップ技術者村上敦司氏が開発した品種「ムラカミセブン」でイチジクやマスカットを思わせる香りが特長的だという。栽培過程でホップ全体に日光が当たりやすくするための「蔓下げ」の必要がなく、生産者への負担も少ないことからこれからの主力品種として期待が高まっているそうなのだ。日本生まれのホップに個性や希少性を認める海外の醸造家からも問い合わせが多いと言われており、キリンは「ホップが見直されたのはクラフトビールのおかげ。海外で使われればブランド価値が上がる」と数年後の輸出も視野に入れているそうなのだ。ホップの生産地と歴史を積み重ねてきた家族経営の農家だからこそ責任を持って日本産ホップの未来を切り開いていくというのだ。
キリンに次いで国産ホップの買取量が多いサッポロビールは、自社開発ホップ品種「ソラチエース」を使ったビールを発売している。昭和59年に国産ホップの開発した当初はビールへの採用を見送ったが、時を経て米クラフトビールメーカーが原料として用いて世界的に知れわたったそうなのだ。今回は米国から逆輸入して製造しているそうで、サッポロは個性派ビール人気を受け北海道上富良野町の自社研究センターで品種開発した「フラノブラン」など4品種を使い、国産ホップ100%ビール4種の詰め合わせを通販限定で発売している。商品開発を見据えホップ栽培委託の可能性も視野に入れているが、装置と材料があれば年に何度も作れるビールは他の酒類に比べ参入障壁が低いとされている。
このため国内クラフト醸造所は昨年には300を超え増加中だが、ワインの味はブドウの品種でほぼ決まるそうだが、ビールの味はホップの品種と使い方が決め手になるという。つまりホップはビールの魂でホップの場合は産地が違えば品種も異なりそれがその土地のビアスタイルの違いに反映されるというのだ。生産量が限られ収穫したてのフレッシュな状態で使用できる日本産ホップは近年話題となっているクラフトビールの世界でも注目を集めており、多様性を重視するクラフトビールではあたらしい品種や使い方が魅力を拡げているという。調達価格が海外産より数倍高いとも言われる国産ホップを使うことが付加価値として認知されていけば、日本産ホップの復権とともに若者をビールに呼び戻す原動力となりそうだといのだ。
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