労働基準監督署のベテラン監督官によると「どの職場には、何らかの違法が存在する」と語っていたのだが、コンビニエンスストア業界最大手の セブン - イレブン・ジャパンは加盟店従業員の給与計算を誤り、 8129 店舗の 3 万 405 人分で遅延損害金を含め計約 4 億 9000 万円分が未払いだったと公表したという。 24 時間営業をめぐる加盟店への対応やセブンペイの不正利用など問題が相次いだ今年のセブン - イレブン・ジャパンだが、年の瀬が近づく 12 月の初旬になってもセブンの経営陣はまた会見で深々と頭を下げたというのだ。永松文彦社長も「従業員、オーナーならびに関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪の言葉を繰り返す羽目になってしまったのだ。
今回の不祥事というのは全国各地の加盟店で働くアルバイトやパート従業員に対して、セブン - イレブン・ジャパンが創業した 1970 年代から長きにわたり残業代の一部が支払われていなかったと発表したわけなのだが、記録が残っている 2012 年 3 月以降だけで対象は 8129 店の計 3 万 0405 人で、未払い額は遅延損害金の 1.1 億円を含めて 4.9 億円に上るというのだ。 1 人当たりの不足額は最大で 280 万円に達、平均は約 1 万 6000 円だったとされているが、今後の進展次第では対象人数や金額が膨らむ可能性もあると言われている。記者会見して謝罪した 永松文彦社長ら幹部はその原因を追及されると「法令の理解が十分ではなく、計算式を誤った」という言葉を繰り返したていたのだ。
コンビニの従業員は店舗の大半を占めるフランチャイズ加盟店の場合には、加盟店のオーナーが雇用するが本部は従業員の給与計算を代行している。ところが セブン - イレブン・ジャパン本部は加盟店の判断で勤務態度の良い従業員に上乗せする「精勤手当」や、リーダー格の従業員に上乗せする「職責手当」の割り増し率を誤っていたという。最初に発覚したのは 2001 年というが労働基準監督署の加盟店への是正勧告がきっかけで、固定給ではなく時給制の従業員に対し手当が給料の支払い時に反映されていないと指摘されたのだ。手当そのものが設定されたのは 1978 ~ 80 年ごろだったがそれ以降もこうした状態が続いており、この問題は外部に公表されずそして内部で是正をしたはずだった。
休まずに出勤した場合などに支払われる「精勤手当」や、シフトリーダーなどの職務の責任に対しての「職責手当」が支給されているが、勤務時間が 1 日 8 時間の週 40 時間の法定残業時間を超えて残業手当が支給される際に、この精勤手当や職責手当に対しても残業手当を支払わなければならないがこの部分が一部支払われていなかった。東京都江東区に第 1 号店を出店したセブンだが、精勤手当や職責手当に対する残業手当は長らく支払っていなかったという。 2001 年 6 月に労働基準監督署から支払うように是正勧告を受け、セブン - イレブン・ジャパン本部は給与の計算式を変更したが、精勤手当や職責手当に対する残業手当の計算式は割増率を 1.25 倍としなければならないが 0.25 倍として誤って適用していたという。
この原因について会見に出席した石丸和美フランチャイズ会計本部長は「法令に関する理解が不足していた。それだけでなく、社内でミスに気づけるチェック体制が整備されていなかった」とうなだれる。セブン - イレブン・ジャパンが加盟店向けに公表しているガイドラインには従業員の解雇や、深夜に勤務する従業員を日中勤務に転換する手続きがいかに複雑かを、労働基準法に基づいて詳しく解説しているそうだが、時短を希望するオーナーに対して法令順守の徹底を求めているという。過去に労基署の指摘を受けても公表せずさらにその後の対応でも計算式の誤りを犯している。当時の対応や記録が残っておらず原因究明につながらない。こうした状況で法令順守を声高に叫び真摯に受け止める加盟店はいるのだろうかという。
今回の問題で給料を本来より少なく支払ったのは形式上は加盟店になるとはいえ、問題の原因は自社にあるとしてその費用を負担するとしている。ところが給与データが本部に残っているのは 12 年 3 月から今年 11 月までの 7 年 9 月間だけで、それ以前に本来より少ない手当しか受け取れなかった従業員や元従業員については、当時の給与明細や店舗に保管された記録がなければ支払いには応じられないという。他にも加盟店の労務問題をめぐっては従業員の社会保険料の支払いをしておらず違法な状態にある店舗が多数存在している。セブン - イレブン・ジャパンを含め抜本的な解決策を見いだせないまま放置されており、コンビニの労務問題に真正面から取り組む気概があるのかガバナンスへの視線は厳しくなるばかりだという。
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