私の住む愛媛県のお隣は外食の飲酒代が東京都区を抜いて全国 1 位という高知県で、行政が自ら「酒の国」と言うほどの酒好きの県として知られている。総務省の家計調査では高知市の外食の飲酒代は 2017 ~ 19 年の年平均で 3 万 7379 円と全国最多となっており、高級店の多い 2 位の東京都区部 2 万 8701 円を引き離して「酒の国」としてその名をとどろかせているそうなのだ。そんな高知人は何でも理由をつけて宴会をするのが好きで、大勢のお客を呼ぶことから宴会自体を「おきゃく」と呼ぶようになったそうなのだ。新年会や決起会などの宴会の定番は大皿に盛られた「皿鉢料理」で、これは女性たちが席を立たずにゆっくりお酒を飲むために生まれたとも言われているという。
そんな「外飲み日本一」の高知県を襲ったのが新型異なウイルスによる感染症は、高知県が誇る「おきゃく(土佐弁で宴会)文化」も揺さぶり、特に同じ杯を使って酒を酌み交わす高知の酒文化「返杯」。「おきゃく」の代表的な文化だが、宴会の文化によって感染拡大が加速されること防ぐため 2 月末には早々に「返杯」や「献杯」の自粛を県民に要請したそうなのだ。地元新聞社が高知県の要請について感想を求めた須崎市の男性が「高知らしい宴会がめっきりなくなり、町は火が消えたよう」と肩を落として話していたのが印象的だったのだが、感染拡大に伴う外出自粛の影響は深刻で全国企業短期経済観測調査では、県内の宿泊・飲食サービス業の業況判断指数が昨年と比べ 100 ポイント減のマイナス 86 と大幅に下落しているという。
このままでは土佐の「おきゃく文化」はコロナに負けてしまうのかと思われた時に広まったのが「青汁返杯」だという。高知人たちは酌み交わす場を SNS に変えて返杯を楽しみ「コロナに負けない」という気持ちを共有しだしたというのだ。参加者が手にするのは酒の入った杯ではなくなんとグイッと豪快に飲み干すのは酒ではなく「青汁」で、高知県南国市でつくられている青汁だというのだ。参加者は誰から返杯をもらったかを言ってから 90 ミリリットルの瓶を一気に飲み干しきちんと「ごちそうさまでした」を言い次に「返杯」をしてもらいたい人の名前を告げるという。 この「青汁返杯」は高知市の整骨院院長の高浜達陽さんが始めたそうで、新型ウイルスの影響で暗いと感じ「何か楽しいことはないか」と考えてオンラインの「返杯」を思いついたという。
そんな「外飲み日本一」とされる高知県では「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎながら宴会も楽しみたい」ということで、政府のいう「新しい生活様式」に適した「新しい宴会のあり方」を県民に示すとして、浜田省司知事や県幹部だけでなく県議らが高知市内で 100 人規模の宴会を開いたそうなのだ。大宴会は高知市中心部の「城西館」で行われたというが、皇族も宿泊する老舗ホテルの会場には「カツオの焼き切り」や「地鶏」・「土佐あかうし」・「アユ」・「高知産の野菜」を使った料理と地酒がずらりと並んだという。今回の宴会場の広さは約 470 平方メートルで約 250 人を収容できるが人数は半分以下に減らし、直径 2 メートルの丸テーブルを使い定員は 10 ~ 12 人程度だが 8 人までに制限して約 1 メートルの間隔を取ったというのだ。
高知県内では 4 月 29 日の発表を最後に新たな感染者は確認されておらず、懇談会は外出自粛などで悪化した地元経済の回復や県産食材の地産地消を目的に開催されたという。会場では密集を避けるため大皿料理の数を少なくし各自にトングも用意され、高知独自の文化「返杯」も自粛し副知事や健康政策部長はリスク分散のため欠席したという。大規模な飲み会は約 4 カ月ぶりという浜田知事は「コロナと折り合いをつけながら交流の機会を持ち、消費拡大に貢献することに意味がある」と強調し、県議会の西内健副議長も「県内の飲食業界が厳しい中で一歩を踏み出す必要がある」と説明したそうなのだが、共産党県議団は「現段階での開催は時期尚早あるいは不適当」として慎重な判断をするよう事前に申し入れていたという。
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