仁志・多喜馬の戯言日記&戯言通信

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2024年04月07日
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ファミリーコンピュータソフトとして「ドラゴンクエスト」が発売されたのが1986年で、ライトノベルの黎明期の1989年8月から角川スニーカー文庫が創刊され「ロードス島戦記」というものが現在のわたしたちの思い浮かべるファンタジー作品の大きな土台となっているという。もちろんそれ以前にも海外からファンタジー小説やファンタジー映画などは入ってきていたが、ゲームとライトノベルというものが80年代後半から当時の子供たちを中心にヒットしていき、現在のカルチャーの中でも定番となっていて、それらが今度は逆輸入的に本国であるヨーロッパ諸国でも日本のカルチャーとして受け入れられているという事実があるが、ゲームや小説において中世ヨーロッパ的な世界観は史実を参考にしているものが多いのだという。

 ファンタジーの世界観になじむようにデフォルメされたものが多く、中世ヨーロッパは現在とはまったく異なる社会構造や文化を持っていて神秘的で未知なる時代で、イギリスに限らずヨーロッパが貴族政治によって支配されていた19世紀は、大陸には大勢の貴族たちが跋扈していてドイツ帝国の中核を担ったプロイセンの2万人やイタリアには1万2000人の貴族がいたが、当時のイギリスには爵位貴族は580人と准男爵も856人という具合に、貴族の数は人口のなかでもきわめて少ない比率しか占めていなかったという。それにもかかわらず彼ら爵位貴族だけで国土の実に半分ほどの土地を占有していたそうで、イギリス貴族はヨーロッパの貴族たちと比べても桁違いの大金持ちであったといわれている。

 そのイギリス貴族にもついに「たそがれどき」がおとずれることになるが、まずは1870年代から本格化した「農業不況」で、アメリカ南北戦争が終結するや交通手段の急速な発達により、南北アメリカ大陸やオセアニアから大量の安い穀物がヨーロッパ大陸へと流れ、それはロシアだけでなくプロイセンやフランスの地主階級に大打撃を与えるとともに、イギリスにもその余波は及んだという。さらに19世紀末から貴族階級に襲いかかってきたのが不動産を対象とする相続税で、それまでは動産を対象とする相続税はあったものの不動産はお目こぼしにあずかっていたが、1894年の自由党政権の政策により100万ポンド以上の価値をもつ土地を所有する地主には8%の相続税が課せられるようになったというのだ。

 こうした情況にさらに追い打ちをかけたのが第一次世界大戦で、当初はバルカン半島をめぐるオーストリアとセルビアの衝突に過ぎなかったものが、様々な問題が重なりついにヨーロッパ五大国のすべてを巻き込む大戦争へと発展したのだ。これら五大国が参戦した最後の戦争はこれより1世紀前のナポレオン戦争にまでさかのぼるが、このときも戦争は断続的にヨーロッパ全土で生じ多大なる犠牲者を出していた。しかしこの時代の戦争は各国の貴族や上流階級からなるプロの陸海軍人と義勇兵が主体であり、極端な言い方をすれば国民の数%程度しか実際の戦闘には関わっていなかったのだという。ところが時代は大きく変わっていてその100年ほどのあいだに兵器の殺傷能力は比べものにならない程までに上がっていたというのだ。

 両軍は戦場に塹壕を掘り敵軍が疲弊するのを待ってから前進することになり、戦闘は長期化・泥沼化し「クリスマスまでには終わるだろう」などと楽観視していた将校たちも、4度のクリスマスを塹壕で過ごさなければならなくなったという。戦争が開始したばかりのとき多くの将兵らは機関銃や砲弾で命を落としそうで、特に最初の4カ月だけでイギリスは爵位貴族6人に准男爵16人・貴族の子弟95人・准男爵の子弟82人を失い、戦場に駆けつけた地主貴族階級の成年男子の18.95%にも及んだという。貴族階級の子弟は士官学校の出身者も多くいたため従軍時には年齢に応じて陸軍では中佐以下の将校クラスとなり、彼らは前線で自ら隊を率いて突撃する場合が多く貴族とその子弟に限ると死者は5人に1人という数字になったという。

 貴族たちが影響力を減退させたのは経済の側面だけではなく、第一次世界大戦はナポレオン戦争のときのような職業軍人と義勇兵だけの戦争では済まされなくなっており、イギリスでも史上初めて徴兵制を導入して18歳から41歳までの五体満足な成年男子はすべて戦場に向かわされたが、さらに彼らの多くがこれまで担ってきた工場等での労働は女性たちに託されることになり、第一次世界大戦以降はすべての国民がまさに国家総動員体制で戦わなければ勝てない戦争になったという。そして「国を守る」という最大の責務を果たしたのであるから戦後には最大の権利も与えられ、それが選挙権と被選挙権で世界大戦は勝った側でも負けた側でも男女普通選挙権をもたらす重要な契機になり、貴族という特権階級が弱体したのだという。





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最終更新日  2024年04月07日 04時24分59秒
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