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2006.09.28
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邪魅の雫

~講談社ノベルス、2006年~

 京極堂シリーズ最新刊です。以下、いつものように紹介と感想を。

 昭和28年夏。江戸川の河川敷に男性の変死体があった。毒殺されたという。所轄の交番勤務だった青木は、被害者の周辺を探っていたらしいちんぴらに目をつけていた。しかし、一週間後、大磯で変死体が発見された。青木は両者に関係はないと思っていたが、本部は連続殺人事件として捜査するよう方針を定めた。不満に思い、木場などに相談しながら、青木は事件について検討していく。
 その頃、薔薇十字探偵社に、榎木津の甥が訪れた。榎木津礼二郎に何度か見合い話があがっていたのだが、いずれも、お見合い前に先方から断りが入ったという。先方は事情を言わない。さらに、見合い相手の一人の妹は、変死しているという。榎木津の甥に頼まれ、益田は捜査を開始する。
 また、時を同じくして―。『陰摩羅鬼の瑕』の事件で刑事をやめた大鷹は、大磯を訪れていた。彼は、たまたま出会った女性に、住むところを提供するのと引き替えに、不遇の女性を守るように依頼された。相手の女性が眠っているとき以外はずっと女性についていたため、大鷹はきわめて不審な人間として、周囲の人々の目にうつることになる。
 そして。酒屋につとめる青年、江藤が、店が懇意にしている女性のもとへ訪れたとき、その女性は死んでいた。真壁恵と聞いていたが、刑事たちの話を聞いていると、その名前は偽名だったらしい。こうして江藤の中で、真壁恵という存在はないものとなった。
 その頃。自分の絵のモデルの女性が、怪しい男にずっとつけられているということを画家は知った。知っていて、彼女とはその件について話さなかった。画家は考える。あの男を殺してやろう、と。

 本書のメインとなる視点の冒頭部分を中心に、自分なりに書いてみました。いやはや、錯綜していますね。前回の『陰摩羅鬼の瑕』が単純な構造だったのと対照的です。

 本書のタイトルの邪魅は、魍魎の類ということで、今回は『魍魎の匣』とついになっている(らしい)、という話をいろんなところで聞いていましたが、事件の錯綜具合や、それに関連して本作の中でも言及されていますが、どちらかといえば『絡新婦の理』を連想しながら読みました。あ、でも『魍魎の匣』と対になっているといえばなっている…んでしょうか。いままでの作品(事件)の関係者がいろいろ登場するので、人物関係の把握が大変になってきます…。大鷹さんが出てくるので、直前に『陰摩羅鬼の瑕』を読み返しておいてよかったと思いました。この『陰摩羅鬼の瑕』は、『姑獲鳥の夏』の対になっているそうですね。
 さて、全体の印象はこのくらいにして、あとは面白かったところを。
 久々に、京極堂さんと関口さんがゆっくり話しているシーンがあります。しかも、話題は関口さんの小説に対する書評についてです。私もこのようにブログで本の感想を書いているので、その話題そのものも興味深く読んだのですが、京極堂さんのたとえ話が面白いですね。益田さんが相談に行ったとき、二人はその書評の話をしていて、さらに流行、あるいは世間についての話にもつながります。関口さんの作品に対する評価と関口さん自身に対する評価は全く違う、というとき、「世間」が関口さんの作品をどう評価しようが京極堂さんたちの関係性において、関口さんに対する評価は変わらない、というのですが、そこでこんな言葉がありました。「 関口君が怒って僕を殴れば、まあ絶交と云うこともあり得るだろうな 。関係性が変容すれば、僕等の社会も少し変わる」(168頁)。「 絶交 」という言葉をすごく久々に聞いた気がします。京極堂さんがかわいいと思ってしまいました…。
 その他、いろんなところで笑えたのですが、やはり考えさせられる部分が多かったですね。登場人物への見方も少し変わります。関口さんの一人称が今回はなく、ナイーヴになっている益田さんの視点のときに主に関口さんは登場するのですが、どこかかっこいいように思えたのです。人間関係を鞄に例えて話すシーンがあるのですが、印象に残っています。また、次いでの話ですが、一応文字色を変えましょう。 タイトルになっている邪魅について紹介してくれるのも関口さんです。今回、京極堂さんは邪魅について語りません 。表面的に軽々しく振る舞っている益田さんの内面も描写されるので、読んでいてシリアスな気分が保たれます。
 青木さんに助言する藤村さんの言葉にも思うところがあり、付箋を貼りました。藤村さんも素敵な人物です。
 榎木津さんのかっこよさも、あらためて感じられました。

(追記)
 昨日は事情があり大学の研究室に立ち入り禁止だったため、朝一で本屋に行って本書を購入しました。岡山では27日発売だったので、立ち入り禁止の日と重なってちょうど良かったです。昨日はその後、まったくパソコンにふれることなく一日を終えたので、本購入の記事を書きませんでした。普段なら翌日に、さかのぼって購入の記事を書くのですが、今回はそれより先に感想の記事を書いたので、いつものような購入の記事は割愛します。って、この追記は自分のためのメモですね。





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Last updated  2006.09.28 22:14:13
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 なにぶん…

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