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2006.12.21
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~文藝春秋、2006年~

 加納朋子さんの新刊です。8編の短編が収録されています。
 以下、いつものように内容紹介と感想を。

「モノレールねこ」
 ふてぶてしく不細工で太ったねこが、僕の家によくやって来るようになった。お母さんに言われて、お父さんと一緒に遠くまで捨てに行ったが、なんとねこは戻ってきた。ねこには、今までなかった首輪がついていた。ぼくは、誰がこのねこを飼っているのかと思い、名案を思いつく。首輪に、メモを書いた紙を挟んだのだ。その後、僕と「タカキ」の、ねこを通じた文通が始まるが、悲しい形で文通が途切れてしまう。

 ほのぼのと読み進めていたところを、がつんと突き落とされるような感じでした。太っていたねこが、僕たちがエサをあげることでますます太ってしまい、悲しい結末を迎えます。僕の悲しみ、自責の念がどれだけ大きかったことでしょう。しかし、物語のラストには、やはり救いがありました。

「パズルの中の犬」
 フリーマーケットで購入した、真っ白のパズル。作っていくうちに、明らかにそこに犬がいることが分かってきた。私は、ふと思い立ち、おばと連絡をとる。おばの家で見せてもらったアルバムには、パズルに現れた犬が写った写真もあった…。

 この話では、「私」とお母さんの関係に胸がずきずきしました。というか、そのお母さんの態度に対してのいらだちというか。幻想的な雰囲気をもつ作品でした。

「マイ・フーリッシュ・アンクル」
 中学生の私は一人で留守番、家族は海外旅行。私が部活の合宿に参加していると、先生から驚くべき連絡が届く。家族が、旅行先で全員死亡したという。それから、私は、全く生活能力のないおじと暮らすことになった。だらだらと過ごすおじが、二学期がはじまると急に家事をはじめるが、しない方がマシのような出来で…。おじにいらだちを感じながら、それでも日々は過ぎていく。



「シンデレラのお城」
 一人で暮らすのは楽だけど、周りの目が厳しくなったと感じる私は、居酒屋で知り合ったミノさんに偽装結婚の相談を持ちかける。ミノさんは、よかったら僕が相手になると言う。とんとん拍子に話は進み、二人は「結婚」した。しかし、ミノさんは、死に別れた妻、<瑞樹>と一緒だった。他の人には見えないけれど、ミノさんには見えるのである。私も、次第に<瑞樹>の存在を受け入れる。「三人」の、少し不思議な共同生活がはじまった。

 このお話も、幻想的な感じです。<瑞樹>さんにできた赤ちゃんの名前から、「私」が思い出す過去には少し怖い感じもします。最近読んだ、筒井さんの短編を連想していました。そして、ラストは切ないです。「私」が考えるように、少し歪で、しかし美しい物語だったと思います。

「セイムタイム・ネクストイヤー」
 娘が、幼くして死んだ。娘の誕生日に、家族三人で泊まったホテルに部屋をとった私。まさか、という思いもあったが、私はホテルで、娘に会った。その後、ホテルのバーのバーテンは、このホテルでは、死者に会うことができるという、と話してくれた。私は、毎年同じ日にホテルに部屋をとり、娘に誕生日プレゼントを渡すようになる。

 一年に一度だけ、死んだ娘に会える。その日のためだけに生きていく…。そういう母親の話です。「フロントの男」とバーテンダー。この二人が、とても素敵でした。ラストでのフロントの男の、そして二人の男性の言葉が良いです。

「ちょうちょう」
 有名ラーメン店を営業するおじに、二号店を任された俺。スタッフは、おじさんの片腕と言われた上田さんに、おじさんの親戚の蘭子さん、そしてバイトの恵さん、俺の四人。当初は多くの客があったが、不良二人とのいさかいがあってから、一気に客足が遠のいてしまう。きっかけは、インターネットでの中傷記事だった。

 店長の「俺」には、いろいろとつらいことが一気に襲ってきます。それでも、スタッフに支えられながら、なんとか店を続けていく。そこで重要な役割を果たすのが、第一印象の悪い蘭子さんというのは、意外なような、それでいて自然のような。こちらも、ラストの描写が綺麗です。

「ポトスの樹」
 俺の父親は、最低の男だった。俺のおやつやおかずを食べるなんて小さなことから、俺の貯金や給食費に手を出したり…。俺はがんばって大学を出て就職して、親元を離れた。しかし、親が死ぬまでにも、親と顔をあわさざるをえないときがくる。結婚である。俺は、恋人に父親の話をしてきており、あわせるつもりもなかったが、彼女はどうしても俺の父親に会いたいという。そこで、俺は思い出したくもない話をする。父親と二人で釣りに出かけたとき、父親は溺れた俺を見殺しにしたのだった。 …実際には、俺はなんとか川から上がることができたのだけれど。

「マイ・フーリッシュ・アンクル」と同じくらい心に残る物語です。考えてみれば、どちらにもどうしようもない男が出てくるという点で、似ていますね…。溺れた息子を見殺しにした父親にも、しかし過去があります。その話を聞いて、「俺」の心のひっかかりがすっととれたとき。私などは、ものすごく考えてしまいました。自分の命の重さ。他人の―家族の命の重さ。あまりにも重いのだと思います。きれい事を言わない主人公の父親は、その過去も考えると、筋が通っているとも思います。これでもう少し、普段もまともな人だったら、同じ見殺しにしていても印象が変わる気がするのですが、そこは、この性格だから、良い物語になっているのかもしれません。
 この物語も、ラストの一行がとても素敵でした。

「バルタン最期の日」
 フータという少年につられてしまったザリガニの俺は、その日からフータの家の、家族の一員となった。快適な住居を得るまでには、一日かかったのだけれど…。家族に元気にふるまう「お父さん」が、俺に泣き言を言ったり。急に「脱皮」した「お母さん」に、「お父さん」とフータが戸惑ったり。もどかしく思いながら、俺は見守っていた。やがて「お父さん」は、家族旅行に行こうか、と提案する。決して裕福ではない一家が旅行に出た夜、泥棒がやってきた。

 ザリガニの一人称です。割と楽しい性格のようで、文章も面白かったです。


ーーー
 最近は家で作業を進めているのですが、やたらと疲れがたまってきていたので、以前のように一気に数時間の読書時間を作ることはできませんが、少しずつ短編を読み進めていました。疲れたときに加納さんの短編を読む。その後の作業もがんばる気持ちになれる、素敵な時間でした。やっぱり読書はいいなぁ、としみじみ思います。…あと一ヶ月くらい、今までのように読書することは難しそうですが。
 そして、加納さんの小説は面白くて安心できるなぁとあらためて感じました。上の紹介の通り、ミステリではありません。いわゆる日常の謎ミステリで活躍されている加納さんですが、もともとが優しくて温かい物語を書かれる方ですし、ミステリの要素がなくても、やはり、面白かったです。





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Last updated  2006.12.21 20:51:45
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Re:加納朋子『モノレールねこ』(12/21)  
王道名なし  さん
ほんわかとした短編集でした。「乙一」から毒気を抜いたみたいな感じ?

デビュー作の「ななつのこ」(トリック&テクニックに走った感じ)より面白かったです。

ヘフレレ名義でトラックバックさせていただきました。



(2007.07.29 09:55:10)

王道名なしさんへ  
のぽねこ  さん
コメント&TBありがとうございます。

ほんわかな話が多くて良いですよね。たしかに、いわゆるミステリとしての要素も薄くて、純粋に物語として楽しめたように思います。

こちらからも、TBさせていただきますね。 (2007.07.29 19:53:39)

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