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2007.07.30
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死神の矢

~角川文庫、1976年~

 金田一耕助シリーズの長編「死神の矢」に、短編「蝙蝠と蛞蝓」を併録した一冊です(現在は絶版となっています)。「蝙蝠と蛞蝓」は、後に金田一耕助ファイルとして刊行されたシリーズの中の一冊『人面瘡』(ファイル6)に収録されていますので、いずれ『人面瘡』を読んだときにあわせて感想を書こうと思います。というんで、今回は表題作の「死神の矢」の内容紹介と感想のみ。

 金田一耕助と懇意にしている考古学者・古舘博士は、一人娘の早苗の結婚相手を決定するために、奇抜な催しを考案した。海に浮かべたボートに的をたて、その中心にはハートのクイーンのカードをおく。求婚者の三人―高見沢、神部、伊沢―は、50メートル離れたところから、矢を放つ。見事ハートのクイーンを射抜いた者が、早苗の結婚相手になるというのだ。
 博士の弟子、加納が早苗と結婚するのだろうと考えていた金田一は、この企画を聞いてぞーっとするものを感じた。というのも、求婚者の三人は女癖が悪く、早苗の友人の一人が睡眠薬を飲み過ぎて死んでしまったのも、そのうちの一人に乱暴されたことによる自殺なのではないか、という噂さえあったからだ。しかし、遠く離れたトランプのカードを射抜くのはまず不可能だろうと安心したのもつかの間、高見沢が見事カードを射抜いてしまった…。
 早苗は、望まぬ結婚を強いられることになり、不安に襲われる。博士も、決して三人を早苗の夫とすることを望んでいなかったはずだが、約束は約束だと快活にふるまう。そんな中、事件が起こった。シャワーを使ったまま、胸に矢を刺された伊沢の死体が発見されるのだった。伊沢は、カードを狙って自らが放った矢で、殺されていた。O・Jという謎の人物、三人が矢を射た後に三本の矢を回収した謎の人物の存在もあり、事件には不審な点が残る。
 そして、さらなる事件が続くことになる。

 これは面白かったです。金田一さんが真相を語るとき、話を聞く人々が涙を流すのはもちろんですが、金田一さん自身も目頭をおさえます。当然、涙もろい私も涙なしには読めなかったのですが、胸をうたれる真相でした。
 ところで、ちょっとした冗談みたいな話なのですけれど、ある方と横溝さんの作品についてよく話をすることがあります。ヌードダンサーやキャバレーのダンサーが作中によく登場しますけれど、そうした女性の名前にもっとも(?)多いのが朱美さんだということ。私は、今月頭に、横溝作品をどんどん再読していこうと考えて、『女王蜂』から読んできていますが、今回はじめて朱美さんが出てきて、ちょっとテンションが上がりました。本作に出てくる朱美さんは、割と良い役柄だったのも良いですね。

 飄々としていて、けっこう冗談も口にする金田一さんですが、金田一さんには優しさがあふれていて、そして、どこか悲しみに彩られているように思います。本当に大好きな探偵さんです。
 良い読書体験でした。

*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2007.07.30 08:08:13
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 なにぶん…

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