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2007.08.19
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筒井康隆『残像に口紅を』
~中公文庫、1995年~

 世界から文字(音)が基本的に一つずつ消えていくという、実験的な長編です。

 主人公の佐治勝夫さんが、評論家で友人の津田得治さんの提案で、使える文字が一つずつ消えていくという作品を書くことになります。佐治さんの住む世界は、文字が一つずつ消えていくその虚構の世界となり、作品と現実がイコールになります。いわゆる、メタフィクションですね。
 たとえば、「ぱ」という音がなくなった時点で、「香ばしく柔らかい食べ物」もなくなります。さらには、佐治さんの娘たち、さらに妻までが消えていきます。はじめて娘の一人が消えるところで涙ぐんでしまったのをはじめとして、その後いろんなところで涙を誘われました。
 文字が消えていき、その文字を含む存在も消えていく。虚構なのですが、虚構だからこそでしょうか、非常にリアルな描写もあり。物語の終盤で語られる自伝的な部分も含め、途中から、ものすごい実験的な作品にして、それを実行するすごい作品だと思うのと同時に、とても悲しい物語だと感じながら読みました。
 終盤。使える文字(言葉)よりも消えてしまった文字(言葉)の方が多くなり、さらに言葉が消えていくあたりから、ぞくぞくしながら読みました。

 言葉がなくなることで、いままで使っていた言葉を別の言葉に言い換えなければいけないもどかしさ、あるいは言い換えることさえできず、話すこともできないもどかしさ。笑いも交えて書いていて、私も読みながら笑ってしまった部分もあります。だけど、決して大笑いはできないというか。それは、先にふれた自伝的な部分にある、「笑い」に関するくだりを読んだせいかもしれませんが。

 語彙がないのがもどかしいですが、すごい作品だと思います。



*文庫版の解説部分には、調査報告「筒井康隆『残像に口紅を』の音分布」という論文が掲載されていて、こちらも興味深かったです。たとえば、エントロピーという概念には、言葉はよくきくもののなじみがないので、よく分からなかったりと、その論文をきちんと理解できたわけではありませんが…。





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Last updated  2007.08.19 06:40:58
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 なにぶん…

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