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2008.02.07
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二階堂黎人『吸血の家』
~立風書房、1995年~

 二階堂さんが『地獄の奇術師』でデビューして、その10ヶ月後に立風書房から発売された『吸血の家』の、ノベルス版です。もともと鮎川哲也賞で佳作入選した作品なので、二階堂さんが発表した作品としては一番最初の作品のようです。
 ではでは、内容紹介と感想を。

ーーー
 夫と新しい嫁にはかられ、牢獄の中で死亡した翡翠姫の呪いの伝わる、「久月」。二階堂家と遠縁にあたるその一家、雅宮家で事件が起ころうとしていた。
 昭和44年(1969年)1月。
 発端は、蘭子や黎人がしばしば訪れる喫茶店<紫煙>に、怪しい女が現れたことだった。女は、雅宮家での事件を予告するような言葉を残し、その場を去った。
 女は、24年前に起きた事件について言及したという。蘭子が中村警部にその事件について質すと、警部は難色を示しながらも、驚くべき事件について語ってくれた。 24年前、中村警部が居合わせた雅宮家で、一人の軍人が殺された。男は、雪の降り積もった庭で倒れていたが、現場には、被害者の足跡はあるものの、加害者の足跡はなかった。

ーーー

 数年(?)ぶりの再読です。
 はじめて読んだとき、とても面白く読んだのを覚えています。もう10年以上ミステリをばりばり読んでいると、密室トリックではもうそれほどテンションは上がらないのですが、それでも「足跡のない殺人」のパターンはいまだにわくわくします。ちなみに、海外ものはほとんど読んでいないこともあり、それほどこのパターンの物語を読んでいるとはいえませんが、私の知る限り、このタイプの傑作は有栖川有栖さんの短編「蝶々ははばたく」(『ブラジル蝶の謎』所収)です。
 さて、二階堂さんの作品の感想に戻りましょう。
 デビュー作『地獄の奇術師』について割と辛口で書いたものの、本書は大好きな一冊だったこともあり、きっと今回も楽しく読めるだろうと思ったのですが…。ごめんなさい。
 設定、トリック、秀逸だと思います。雪の、足跡のない事件を扱っていることもあり、私にとって二階堂さんの長編の中では一位におしたい作品であることには変わりありません。
 …が。(以下、このブログではあまりしないことですが、批判的な(毒舌な)感想になるので、文字色を反転します)


 もう一つ思ったのは、探偵役の二階堂蘭子さんに魅力が感じられないということです。かなりひっかかった台詞があったので、引用します。
「だけど近親婚が多く続いて、血が濃いということは、優生学的にはあまり良いことじゃないわ。生まれてくる子供に、優性の遺伝子と劣性の遺伝子が、普通以上に色濃く出ることになってしまうから」
「そうすると、雅宮家には、誰か頭のおかしい者がいるかもしれないと言うのかい?」
「ええ。この前の中村警部の話を聞いていると、その可能性が否定できないわ。原罪意識のない、つまり人間が生まれながらにして持っている罪の意識がない非社会的な人間が、あの家族の中に混じっているのかもしれないわ」
 蘭子さんと黎人さんの会話です。なんでそこまで遺伝子レベルでぼろくそに言うのか分かりませんでした。近親婚の問題点についてはたしかに聞きますけれども…。
 時代設定を過去に設定しているのは分かるのですが、同じ過去の時代設定で物語を書いている京極さんとはえらい違いですね。こういった発言をワトソン役の人物がして、探偵役がたしなめる、というパターンならまだ分かるのですが、ここまで言う探偵役は珍しいのではないでしょうか?
 そういったありがちパターンから脱却しているという意味で、斬新かもしれませんが…。
 こういった感じで、どうも蘭子さんが好きになれないことが分かりました。ミステリとして、探偵役に好感をもてないのは残念です…。その点、むしろ作中の黎人さんのが感じが良いですね。律儀に早朝ランニングしているところで、そうとうポイントが上がりました。


 というんで、事件の設定、トリック、論理性などなど、謎解きミステリとしてはレベルが高い作品だと思います。あんまり人物描写がどうこう言うのもいまさらの気がしますが、どうしても私には蘭子さんが好きになれなかったり、登場人物たちに魅力が感じられなかったりだったので、物語としてはあんまり…という気がします。
 文字色反転部分は割と毒舌ですみません。

 とりあえず、蘭子シリーズの最新作『双面獣事件』を買ったものの、それまでの長編を覚えていないので、読み返したいと思って蘭子シリーズ再読をしているのですが、いろいろくすぶる作業ですね。前回の感想で批判的な部分は書いたので、今回はもう目を背けようと思ったのですが、無理でした…。二階堂作品としては、次は『聖アウスラ修道院の惨劇』を読むつもりですが、トリックや設定の部分に重点をおいて読むようがんばりたいと思います。

(2008/02/04読了)





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Last updated  2008.02.07 06:45:21
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