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2008.05.12
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貸しボート十三号

~角川文庫、1977年~

 金田一耕助シリーズの短編集です。表題作を含む3編の短編が収録されています。
 まずは、内容紹介と感想を。

ーーー
「湖泥」 → 『人面瘡(金田一耕助ファイル6)』 参照

「貸しボート十三号」 川に浮かんだボートの中に、男女の遺体が発見される。40代くらいの女は、レーンコートを着て、20代の男は下着一枚の姿だった。女は、絞殺後に胸を刺され、男は、刺殺後に首を絞められていた。さらに不可解なのは、それぞれの遺体の首が、半分ちぎれそうになっていることだった。
 女は、とかく問題の多いある省の、ある課の男の妻。男は、有名なX大学ボート部に属していた。


「堕ちたる天女」 中学生たちが、研究科目として、I交差点の交通量調査を行っていた夕方。コンクリート片にトラックが乗り上げ、そのトラックは寝棺のような荷物を落としていった。そして、後からきたトラックがひいてしまったその荷物の中には、石膏像が入っていた。人間の遺体が塗り固められた石膏像が…。
 被害者は、同性愛者のストリッパー、リリー木下。彼女はしかし、あるマダムとの交際をやめ、中河謙一という男と交際するようになっていた。いつも黄色いマフラをしている美術家… 同じく黄色いマフラをした男と交際していた別の店のダンサー、高松アケミも行方不明になっていた。
 犯人がはっきりしていると思われた事件だが、意外な方向に進展していく…。
ーーー

 数年ぶりの再読です。
 今回再読した二編とも、どちらもあまり印象に残っていなかったのですが、とても面白かったです。

 表題作は、ボート部の男たちの友情が素敵でした。ある学生さんに「浴衣のおっさん」と紹介された学生さんが、地の文でもおっさんと呼ばれていたのが楽しかったです。寮母さんも素敵ですし…。私は、横溝さんの作品の魅力の一つは、その登場人物のあたたかさにあると思うのですが、本編もそれを充分に味わうことができました。凄惨な遺体、不可解な事件の中にも、登場人物のぬくもりにふれられて満足でした。途中では、涙なしには読めなくなりますし… (そのあたりでも、浴衣のおっさんが素敵でした)。

 一方、「堕ちたる天女」では、金田一さんの静かな、そして深い怒りが描かれていて、どきっとしました。金田一さんが扱う事件は、犯人に同情の余地があることが多く、金田一さんも犯人たちの心情を慮っていることが多いですが、それだけに、この事件はショックでした。
 さらに、思いがけずある人物が登場し、等々力警部と出会うという嬉しい驚きもあり、充実した一編でした。

 国交省の残念な方々の無駄遣いなどのニュースを見てしゅんとなってしまい、思い切って息抜きに読みましたが、やっぱり横溝作品を読むと安心します。個人的にはアケミさんが登場したのも嬉しかったです(笑)
 そう、「貸しボート十三号」では、「とかく世間の疑惑の的になっている役所のある省の、とくに問題を起こしやすい課の課長」が登場するのですが、あらためて、いつの時代も変わらないなぁとため息が出ます。
(2008/05/10読了)







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Last updated  2008.05.12 07:12:57
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Re:横溝正史『貸しボート十三号』(05/12)  
yasukun0402  さん
「貸しボート十三号」の内容はすっかり忘れてしまいましたが、面白かったという記憶はあります。読んだのは、20年以上前です。 (2008.05.12 12:14:21)

yasukun0402さんへ  
のぽねこ  さん
コメントありがとうございます。

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