活字と植物メンテ、クラシックの日々

活字と植物メンテ、クラシックの日々

2006/03/02
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バブル景気の頃、私は大学生だった。
好景気といわれ、
先輩や友達は有名企業の採用通知を
次々と手にしてきた。
複数の採用通知を受け取った知り合いは、
国内ランキング上位の会社を
あっさりと捨てていた。
多くの会社は

信じられないほどの求人難だったのだ。

「こんな好景気は
いつまでも続くはずがない。」
みんなは心の中でうっすらと感じていたが、
あの時代にはほとんど実感できなかった。
この国はいつまでも繁栄するように思われた。

案の定、バブルが崩壊し、
今は平成大不況のど真ん中。
あの時代に入社したわれわれの世代が、
人件費の面で
会社のお荷物になってしまっているそうだ。

今はひとりずつリストラ対象らしい。

先日、町役場から
『市町村合併に関する住民アンケート』が届いた。

「合併問題は
町の存続に関わる大きな問題であります。

行政と議会が合併の是非を判断材料にする
重要なものです」

などという案内があり、
封筒の中には印刷されたばかりの
真新しいハガキが入っていた。
ハガキの左下には町章が浮き上がっていて、
粗末には扱えない雰囲気である。

住民投票ではないが、
いざ自分の意見というとなかなか記入できない。
私は町からの資料ばかりでなく、
自分が通信員をやっている新聞の紙面や
インターネットなど、
けっこう広範囲で合併に関する情報を得ている。
しかし・・・未来となるとわからない。
今の大不況を、
バブル景気の頃には予想できなかったように。

実家に帰る用事があったので、
このアンケートハガキをカバンに入れ、出かけた。
どこかで「えいや!」とひらめいた答えを記入し、
投函しようと思ったのである。

実家で、親や兄弟に
「こういうハガキが町から来たんだよ」と見せると、
とても興味深そうだった。

実家のある都市は、
隣の観光都市との合併の話があった。
『合併協議会設置を求める市民の会』
というのが設立され、
それぞれの都市で署名活動の後、
両市の市長に合併協議会設置の請求が提出されたそうだ。
そして、実家の都市では可決されたが、
観光都市側で否決された。
つまり、相手にフラれてしまったのだ。
「こんな貧乏な都市は相手にしてもらえないんだ」
と親たちはつぶやいていた。

似たような状況の市町村は
あちこちに存在するだろう。
しかし、結局単独のままで良かった、
と後々になって思うのかもしれない。

知り合いの主婦の人が、このたび学校の受験をし、
高倍率の中、合格した。
学業を終えて何年も経ってから
人知れず勉強に励み、合格を手にしたことは
本当にあっぱれだ。
私も心からうれしいと思った。

人間は
「こうなりたい。そうだ、こうしよう」
と自分自身の将来をある程度、
自分で決めることができる。
しかし、自分が乗っかっている町の未来、
そして、この国の未来は、
当事者であるはずの私たちには
わからないのだ。
だから
「あなたはこう判断したんだから、
あとで大変なことになっても
文句は言わないでね!」
と言われても、困ってしまう。
町民たちは今、
大きなギャンブルをしようとしている。

私のハガキは・・・けっきょく、
そのまま持ち帰ったが、
昨日の仕事の帰り、
ポストを見つけたので投函してしまった。
あの判断が正しかったかどうかは、
未来の町民、あるいは市民のみぞ知る。
そんな無責任な、といわれても・・・。





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Last updated  2006/04/15 05:57:59 PM
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