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2016.04.07

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第三十六段　～死の味６～　映画『西遊記之孫悟空三打白骨精』によせて

カテゴリ： ◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ

↓前回です♪
『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第三十五段

★☆★☆
第三十六段

あっけない別れだった。

二度と会えないに違いないのに、

風が砂絵を散らすように

亡霊は掻き消えた。

言い足りない言葉のニュアンスだけを残して。

見えなくなった途端に悟空は、激しく後悔した。

待ってなんかいられない。

今すぐ追いたいんだ。

でも、彼を嫌悪する気持ちもまた、間違いなくあるのだった。

悟空は、あらためて三蔵の脱ぎ捨てた骸を見た。

あなたは細胞のひとつひとつまで残らず、

あの男に支配されていたのか？

しかし、あの男の独特の個性は、

この肉体抜きでは存在しえなかったのではないかと

ふと考えた。

この身体が彼を支配していたとも言える。

だが今は寄るべない孤独な骸だ。

気後れして、

いつも容易くは触れることのできなかった三蔵の身体。

今から綺麗にしますよ、師匠。

このままにはしません。

俺がちゃんとします。

涙が溜まっているのをみつけた。

雨かも知れなったが、心臓がえぐられたような痛みが

心に走って、猿は思わず、その涙に触れた。

猿は、泣きながらその指を舐めた。

海と血の味がした。

彼は、三蔵の骸を抱きあげた。

魂の抜けた身体は、まさしく正体なく、悟空の腕をすべって

重たい頭の方から土の上に流れるように落ちかけた。

それを必死に抱きとめて、悟空は、生前もそうだったように、

気づまりな気持ちを押し殺して、彼を背中に背負った。

雲に乗って、すぐ傍を流れる谷川へ行き、

雨のせいで危険なごうごうと音をたてて流れる

その川の大きな岩がごろごろと転がっていて不安定な岸に

そっと彼を横たえた。

例によって、大きい物を小さく、小さい物を大きくと

術を駆使して、猿は僧侶の身体を時間をかけ丁寧に洗った。

頭も顔も、似合わない被毛をそってやって、

少しは、自分の見知った三蔵に戻っただろうかと

時間のたつのも忘れて、じっと、ひたすら見詰め続けた。

だが、その骸はよそよそしくて、悟空の全く知らない男にも見え、

また頭悪そうに無防備に、朝時々そうだったように、ただ寝ぼけて

自分が誰であるかを思い出せず、ぼんやりしている様子にも

見えるのだった。

いつのまにか、すっかり日が落ちて居て、雨上がりの雲の切れ間から

巨大な満月が顔をのぞかせ、山々を明るく照らしていた。

彼は自分の上着を脱いで洗い、僧に着せて、

憐れな上半身を隠してやった。

裸ではなくなった彼を遠慮を忘れて、

何にはばかることなく強く抱き締めて泣いた。

ひとりにはしません。

俺がずっとついていますよ。

つづく

金襴三蔵悟空.jpg

ウィリアム・フォン、馮紹峰、フォン・シャオフォン、ペン・シャオペン　以上全部同じ人（笑）

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Last updated 2016.08.26 22:47:28

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すみれゆきの

いつのまにか母娘でやることになったブログです。娘は主に音楽関係を2017.04あたりから担当。 '17.07.22現在『アジアの音楽』『アジア以外の音楽』の両カテ以外の音楽の記事は娘です。私は映画やドラマなどを中心に気功や太極拳などの情報ファッションや猫や人間の健康に関することなどを発信してます。混乱します？そうでもない？娘は几帳面。私はイイカゲン。そんな感じの見分け方で(笑)

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