特許の思想体系

特許の思想体系

2005.02.10
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こんちくは。この事件のネタが尽きません。9回目です。

この事件で、特許世界全体と出会っているということなのでしょう。

でも、そろそろです。



ジャストシステムは、「お客様・ご関係者各位  今回の控訴にあたって」という文書をHPで掲載しています。

その中で、気になるところがありました。

「例えば、ひらがなを漢字に変換する時に、何の疑いもなくスペースキーを押していると思います。これは1983年(昭和58年)に弊社がJS-WORDで最初に考えた仕組みです。当時、ソフトウェアの特許権が認められていなかったために権利化はしませんでした(※ソフトウェア特許は特許法の規定上2002年に初めて認められました)。」

特に「当時、ソフトウェアの特許権が認められていなかったために権利化はしませんでした(※ソフトウェア特許は特許法の規定上2002年に初めて認められました)。」というところです。


では、なぜ、今回の事件となった松下電器産業の特許はあるのでしょう。その特許出願日は、平成元年(1988年)10月31日です。

1983年から1988年の5年間の間に、発明の規定に関する特許法の改正があったわけではありません。




ですので、装置(物)であろうが、方法であろうが、プログラムであろうが、発明か否かということとは関係ありません。

確かに、特許法第2条第3項には、「物の発明」「方法の発明」という文言があります。

しかし、特許法第2条第3項に規定している「物の発明」「方法の発明」は「実施」を定義する上で便宜的に必要となったカテゴリーです。

つまり、発明を何の上で具体化するかということが「実施」する上で問題となっているだけなのです。

発明か否かという判断の際に、ソフトウェアか否かということは議論されません *1 。

ですから、ソフトウェア に関する発明も特許出願できました。


しかし、確かに、その頃、ソフトウェアの発明は特許出願できないという暗黙の了解みたいなものはありました *2 。

日本では、技術の進歩に伴う特許適格性(発明か否か)の判断基準は、運用(審査基準の改正)で対応が行われてきました *3

しかし、今までの審査基準では処理できない出願があるからこそ、審査基準の改正も行われるのです。

出願人が常に新しいものを作り上げているということです。

つまり、出願人は常にチャレンジャブルなことを行っているというのが正しいと思います。

発明の範囲という常識を破り、その範囲を押し広げようとすることです。

このようなことこそ、ベンチャー企業の精神に沿うものであると思います。



特許法は、他の多くの法律のように規制するためのものではなく、ビジネスに積極的に活用できる法律です 。



*1
実務的にはいいすぎかもしれません。
まずは、ソフトウェアに関するものか否かが判断された上で、ソフトウェアに関するものであれば、発明か否か(特許法第29条第1項柱書)が判断されています。
審理経済のためでしょう。

*2
1980年代中頃は、私はソフトウェア技術者であり、発明者の立場にありました。その当時、出願依頼するのに、わざわざ論理回路を書かされました。「なんで、ソフトウェア技術者だけ、こんな苦労をする」などと考えたものです。

*3
玉井教授(東大)の論文で、日本では法改正、判例の積み重ねで対応するわけではなく、運用(審査基準の改正)が変わるというのが特徴であるというのがあります。


次回は、「なぜ松下電器産業が訴訟を起こしたのか」についての仮説(妄想) です。


意見交換は下のコメント欄か 私書箱 をどうぞ。

「今宵はここまでにいたしとうござりまする」 (流行語大賞 1988年 流行語部門・金賞) 。

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最終更新日  2005.02.10 12:00:45
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コメント、ありがとうございました。  
凡才、只今勉強中! さん
コメント、ありがとうございます。

管理人さんは旧制度時代の強者なんですね。尊敬します。これからもしばしば書き込みをすると思いますが、よろしくお願いします。

さて、改めて判例を読みました。主文1「被告はイ号物件等の製品を製造等をしてはならない」、2「被告は当該製品を破棄せよ」ということは、修正プログラムによる技術的範囲の修正ではできないんですね。「破棄」ということは、当該製品を回収して、その事実を公証してもらわないといけないんですかね。しかし、プログラムに対して「破棄」というのも何だかナンセンスで、複製と消去が容易な対象を「物の発明」と同様に扱えるかどうか…

また、論点の3)「無効理由の検討」に関しては、「キーボードのキーに関する引用発明に対する引用発明」が当業者にとって想達容易というのは、なんとも強引な感を免れません。素人が考えても「それは当時の公知技術じゃない」と言うはずです。
控訴審になれば、今年度の改正法が適用されるので、特104条の2「無効理由の抗弁」が使えるようになるでしょうし、ジャストも無効審判を提起しているでしょう。

それでは (2005.02.11 06:43:10)

訂正です。  
凡才、只今勉強中! さん
「特104条の2」ではなく、「特104条の3」でした。


更に、前のコメントが長くなったので、切り詰めていて書けなかった分を追加させてもらいます。

昨今のプロパテント政策で、各企業が眠らせてある特許を利用して許諾請求を行おうという流れがあるのでしょうか。

他の掲示板で、「10年後に公知技術になる特許こそ強い特許」、「革新的な誰も使わない技術よりも、公知技術すれすれで権利取得するのが弁理士の技量」、「ジャスト側が再三の実施許諾請求を呑まなかったのが、そもそもの原因」との記述があり、それはそれで関心したのですが、やはり普通の人から見れば納得行き難いでしょうね。

折しも、ヨーロッパ議会では「ソフトウェア特許」が問題となっており、アメリカではIBMやSUNの「特許の解法」が話題となっております。これには、不思議な連帯を感じてます。 (2005.02.11 06:59:40)

更に訂正  
凡才、只今勉強中! さん
「特許の解法」ではなく「特許の開放」です。

明細書は書けないですね。トホホ… (2005.02.11 07:03:12)

Re:訂正です。(02/10)  
私の言語  さん
凡才、只今勉強中!さん

コメント書き込みありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

>昨今のプロパテント政策で、各企業が眠らせてある特許を利用して許諾請求を行おうという流れがあるのでしょうか。

知財部も聖域ではなくなったということだと思います。

>折しも、ヨーロッパ議会では「ソフトウェア特許」が問題となっており、アメリカではIBMやSUNの「特許の解法」が話題となっております。これには、不思議な連帯を感じてます。

私も特許の無償開放について書きました。よろしかったらご覧ください。
http://plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200501270000/ (2005.02.11 12:01:33)

Re[1]:訂正です。(02/10)  
私の言語  さん
「凡才、只今勉強中!」さんが指摘した特許法第104条の3とは、次のような規定です。

特許法第104条の3(特許権者等の権利行使の制限)
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者又は専用実施権者は,相手方に対してその権利を行使することができない。
2.前項の規定による攻撃又は防御の方法については,これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは,裁判所は,申立てにより又は職権で,却下の決定をすることができる。 (2005.02.11 15:01:21)

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