ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Oct 15, 2006
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「とろ火」

 今日の室内楽ワークショップ、二曲めに受講したのはメンデルスゾーンのカルテット1番。メンバーは僕(第1バイオリン)、キャロライン(第2)、ケン(ビオラ)、エレノア先生(チェロ)。講師はバイオリニストのケイ先生。

 よく考えたら、僕はメンデルスゾーンのカルテットのファーストを弾くのは初めて。例えばモーツァルトのファーストを弾くのとは別の意味で幸せな気分になれる。ハイドンのファーストとも違う。
 いきなりたった独りになったりして、予断を許さない展開が小気味いい。この曲は構成もすごい。1楽章の終わりと4楽章の終わりがなんと同一!

 メンデルスゾーンの曲は、どれも歌ごころに満ちていると思う。時に感傷的で、しかも愛らしい。彼の音楽を、あまりに無難すぎと評する向きもあろうけど、その健全さやエレガンスは、弾く人にも聴く人にも安らぎを与えてくれる。ピアノ三重奏曲や弦楽八重奏曲だけじゃなく、一連の弦楽四重奏曲ももっと愛されていい。

 さてこの曲、春の朝霧の雰囲気の序奏で始まる。で、いよいよ本編突入というときのテンポがなんとも微妙。速めでも遅めでも一応カタチになる曲だから。四拍子で書かれているのに、二拍子っぽくもある。
 うまく言えないけど、テンポと言い、曲想と言い、作曲者が「このように弾くべき」と押し付けがましく主張していない感じの曲なのだ。良く言えば柔軟性のある曲、悪く言えばスキがある。まだメンデルスゾーンが若い頃に書いた曲だからだろうか。

 今日のレッスンでは、1楽章を中心にテンポの揺れや強弱のバランスなどを診ていただいた。2楽章と3楽章も軽く通すことができた。個人的には4楽章を最も好むけれど、さすがにそんな時間はなかった。

 ちなみに、2楽章も3楽章も、あんまりしつこくないのが快い。

 3楽章は、楽想指定にちょっと興味を引かれた。アンダンテというテンポ指定ながら、第1バイオリンの譜面のメロディー部分にはラルゴと書かれてたり。
 炎のように(con fuoco)との楽想指定があるのは別にいいとしても、強弱記号の p(ピアノ)と併用されているというのが渋い。メラメラと燃える炎のように激しく弾く箇所ならともかく、静かに弾く場面に con fuoco ってことは、弱火、とろ火でコトコト煮込む感じか。

 そういえば、先月から取り組んでいる シューマンのピアノ三重奏曲の1番 にも、やはり Mit Feuer との記述があった。正直言うと、「炎のように」って言われても、電化された生活に慣れきっているイマドキの現代人としてはピンと来ない……。炎と言えば、むしろ星飛雄馬か。Con fuoco との指定を見るたびに、目の中に炎を燃やしている熱血君をイメージしてしまう。





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最終更新日  Oct 23, 2006 09:33:21 AM
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