この『完全なる首長竜の日』という小説は、いろんな作品の要素を組み合わせた構成をしています。大きな流れはJ.D.サリンジャーの『九つの物語(ナイン・ストーリーズ)』に収録された「バナナ魚にはもってこいの日(A Perfect Day for Bananafish)」に沿っています。タイトルもそこから。で、主題としてあるのが、作中でもたびたび登場する荘子の「胡蝶の夢」です。近年で「胡蝶の夢」を扱った作品といえば、芥川賞を受賞した円城塔さんの『道化師の蝶』などもありますが、『完全なる首長竜の日』も同じように、ジャンル分けしようとしても、どれとは決めつけきれない小説です。
≪臨床心理学の最新の研究、とくにヨーロッパ実存心理分析学派の仕事を扱っている定期刊行物。C・G・ユング。禅仏教、老荘思想などの東洋の著作。通俗的でない、典拠の確かな歴史書(たとえば、『ブルータル・フレンドシップ』)。中世の著作、とくにガラス製法のような工芸、科学、錬金術、宗教を扱った著作。ギリシア哲学、あらゆる種類のローマの文献、ペルシアの宗教書。芸術理論に関するルネサンス時代の研究書。ドイツロマン派の劇作。(The Double:Bill Symposium:Replies to A Questionnaire for Professional SF Writers and Editors )『フィリップ・K・ディックのすべて』より≫