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2026.08.04
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カテゴリ: 発達障がい

**『保育者が知っておきたい 発達が気になる子の感覚統合』(木村 順 著、Gakken 保育Books)**は、保育士、幼稚園教諭、児童発達支援・放課後等デイサービスの職員など、子どもの発達支援に携わる人を対象にした実践書です。本書は「感覚統合」という考え方を通して、「なぜこの子はこんな行動をするのだろう」という疑問を理解し、子ども一人ひとりに合った支援へつなげることを目的としています。感覚統合の理論だけでなく、園生活ですぐに活用できる遊びや支援方法が豊富に紹介されている点が大きな魅力です。

本書でまず伝えられるのは、「問題行動」と見える行動にも必ず理由があるということです。例えば、落ち着きがなく教室を歩き回る子、服を着替えることを嫌がる子、友達との集団活動に参加できない子、ブランコや滑り台を極端に怖がる子など、保育現場では様々な姿が見られます。しかし、それらを単純に「わがまま」「しつけ不足」「発達障がいだから」と決めつけるのではなく、「感覚の受け取り方や処理の仕方に偏りがあるのかもしれない」という視点で理解することの大切さを教えてくれます。

本書で中心となるのは、「触覚」「平衡感覚」「固有覚」という三つの感覚です。一般には視覚や聴覚が注目されがちですが、これら三つの感覚は姿勢や身体の使い方、集中力、情緒の安定、運動能力などに深く関係しています。

触覚は、肌から伝わる刺激を感じる感覚です。洋服のタグが痛く感じたり、砂や粘土を触ることを極端に嫌がったりする子どもは、この感覚が敏感である可能性があります。一方で痛みに鈍感な子もいます。本書では、そのような違いを理解した上で無理に慣れさせるのではなく、安心できる関わり方を提案しています。

平衡感覚は、体のバランスを保つ感覚です。ブランコや回転遊具が苦手な子もいれば、逆にいつも飛び跳ねたり回転したりしている子もいます。こうした違いも感覚統合の視点から説明され、遊びを通じて自然に育てていく方法が紹介されています。

固有覚は、筋肉や関節から得られる感覚です。力加減が苦手だったり、鉛筆を強く握り過ぎたり、物をよく落としたりする子どもは、この感覚が十分育っていないことがあります。本書では、押す・引く・運ぶ・ぶら下がるといった全身を使った遊びが固有覚を育てることをわかりやすく説明しています。

第三章では、保育現場でよく見られる具体的な困りごとを取り上げています。「身支度が苦手」「食事が進まない」「集団活動に参加できない」「製作活動が苦手」「運動遊びを嫌がる」「行事になるとパニックになる」など、一つひとつの場面について、感覚統合の視点から原因を読み解いていきます。単なる対応マニュアルではなく、「なぜその行動になるのか」を理解してから支援を考える流れになっているため、保育者自身の観察力やアセスメント力も高められる内容です。

第四章では、保育者が専門職として子どもをどのように観察し、記録し、支援につなげていくかについて解説されています。診断名だけを見るのではなく、その子がどのような場面で困り、どのような場面では力を発揮できるのかを丁寧に見取る重要性が強調されています。また、保護者や専門職との連携の考え方にも触れられており、チーム支援の基本を学ぶことができます。

本書最大の特徴は、第五章の実践プログラムです。感覚統合というと専門的な訓練を想像しがちですが、本書では園生活の中で自然に取り入れられる遊びが数多く紹介されています。例えば、タッチングやふれあい遊び、伝言ゲーム、トンネルくぐり、動物歩き、ストレッチ、ボール遊び、固定遊具を使った活動、手先を使う遊びなど、特別な道具を必要としないものが中心です。そのため、日々の保育の中に無理なく取り入れることができます。イラストも豊富で、実践方法が具体的に理解できる構成になっています。

また、本書は「感覚統合療法」を行うための専門書ではありません。保育者が感覚統合の考え方を理解し、「この子にはこんな感覚の特徴があるのかもしれない」と気づくための入門書としてまとめられています。そのため、専門知識がない保育者でも読み進めやすく、初めて感覚統合を学ぶ人にも適しています。

放課後等デイサービスや児童発達支援で働く職員にとっても、本書は非常に参考になります。子どもの困り感を行動だけで判断せず、感覚面から理解することで、支援方法の幅が広がります。また、保護者への説明にも役立つ知識が多く掲載されており、「この子にはこんな感覚の特徴があります」と具体的に伝えやすくなります。

総じて本書は、「困った子ではなく、困っている子」という視点を育ててくれる一冊です。感覚統合の基礎理論、園生活での具体的な見立て、すぐに実践できる遊びまでをバランスよく学ぶことができ、子どもの理解を深めたい保育者にとって心強いガイドブックとなっています。発達が気になる子どもへの支援だけでなく、すべての子どもの育ちを支える保育を考える上でも、多くの気づきを与えてくれる実践的な一冊といえるでしょう。







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最終更新日  2026.08.04 09:08:37
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