桜工房(だったところ)

桜工房(だったところ)

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

明守 空

明守 空

カレンダー

コメント新着

片桐早希 @ Re:桜工房「創造と維持」(02/10) こんばんは。 ご無沙汰しています。トッ…
明守 空 @ 美奈さんへ やぁ~、すごい久しぶりですね。 お元気…
美奈@ お久しぶりです。 日記毎日読んでます。これからも読ませて…
明守 空 @ torres8さんへ 人物となると、漫画のようなイラストにな…
明守 空 @ torres8さんへ torres8さん自身、非常にボキャブラリーが…
2006年10月28日
XML
「聖エルダー学園・天使と少年と魔女と・・・」

 #10 

「ま、待つですぉ~~!」
「そういわれて待てるかよ~~!」
 ハルカとククの追いかけっこは、山の斜面を下るようにして行われていた。
 どちらもまともに走ることができず、一見するとじゃれあっているような、真剣さには欠けている感じだった。

         *

 一方その頃、エレンとミノタウロスの戦いは佳境に入っていた。
 一発決まれば、致命的なミノタウロスの攻撃を避けながら、攻撃魔法を何度もぶつけるエレン。


(・・・まずいわね)
 エレンは下唇を噛んだ。
 だいぶ攻撃を重ねてきたが、相手はかなりの体力を持つ魔物――ミノタウロス。
 [炎の矢]のような威力の弱い攻撃魔法は、不意打ちで食らわせる分には効果は期待できるものの、身構える相手にはそれほどのダメージを与えることは出来することができず。
 また、より強力な魔法を使おうにも、呪文を唱える余裕をミノタウロスは与えてはくれないのだ。
 さらに困ったことに、長時間のホウキでの飛行、そして連発した攻撃魔法とでエレンはかなり消耗していた。
(・・・そろそろ決めないと、持久戦では勝てない・・・!)

 ドン・・・

「!?」
 正面の魔物に気を取られて、エレンは背後に大木が立っていたことに気づかずぶつかった。
 そして、一瞬それに気を取られたエレンは、ミノタウロスが一気に自分との距離を詰めてきたのに気づくのに遅れた。



 振り返るエレン・・・、

 その目が、
 魔物の血走った目を、
 振り上げた腕を見た――!

         *


 自分の脚ながら、これほど憎いと思ったものはなかった。
 ククはミノタウロスに遭遇し、逃げ出そうとしたときにくじいた脚を何度も叩きながら、自分をふらふらになりながら追ってくるハルカを振り返った。

「・・・まってくらさ~~い!」
 樹から樹へと、もたれながらしっかりと追ってくるハルカ。
 その様子は、ピンボールの玉がピンに当たるボールのようだった。

「くそっ!」ククは舌打ちをした。

 本来の登山道から外れた道は、さらに傾斜が急なものに変わる。

         *

バァン!!

ォキッ!! ゴキキキキィ・・・・ィッ!!

 上空から見下ろせば、生い茂る林の緑の中に穴が開いたように見えただろう・・・。

 ミノタウロスは、エレンがぶつかった樹を一撃の下になぎ倒した。

 倒れた樹が、寄りかかったまた別の樹を数本倒す・・・。

 もわっと、辺りに立ち込めた土煙・・・、
 視界はゼロに近く、
 ミノタウロスはその中で鼻をヒクヒクと動かしていた。

 やがて土煙が収まったその時、現れたものは・・・何事も無かったかのようにその場に立つエレンの姿だった。

「ブォ!?」
 一瞬、怪訝な表情を浮かべ――ミノタウロスはもう一度エレンに襲い掛かる。
 が、振り下ろした手はエレンの体をすり抜けて、地面を深くえぐった。
「ブォォ!」
 それが幻影とは気づかずに、何度も腕を振り下ろすミノタウロス・・・。

「・・・無駄よ」
 エレンが静かに言った。
 そして、彼女は――トン、と右手をミノタウロスの右のわき腹に当てる――その直後、彼女の手の中で「赤い光」が生まれる――やがてそれは大きくなり――・・・!

「[赤き閃光の渦]・・・!」

カッ!

「ゴォ・・・!?」
 短い悲鳴――いや、悲鳴ではなかもしれない声をあげるミノタウロス――それが最期だった。

 エレンの右手から生まれた光に包まれたミノタウロスは、光の渦に吹き飛ばされるようにして、真っ直ぐに木々をなぎ倒しながら居なくなった。    

 ミノタウロスが居なくなったのを見届けて、エレンはホッと安堵の息を漏らす・・・。

 [赤き閃光の渦]は、エレンが使える最強の攻撃魔法の一つだったが。
 呪文を唱えるときに時間が掛かることと、相手に接触しなければ威力が半減するという欠点があった。
 そのため追い詰められた一瞬、事前に唱えていた「幻影の魔法」を身代わりにし――それを攻撃する際に出来た隙をつく作戦だったのだが――。
 成功する可能性は、五分五分・・・。

 一歩間違って強力なあの一撃を受ければ、自分の華奢な体など簡単に二つに折れていただろう――常に死が付きまとう戦い――あのサポートしてくれる仲間がいた戦いとは違い――だけど、それももう終わった・・・。

「・・・やれやれ。あの娘が来てから退屈しないわ・・・」

 その場に両膝をつき、わずかに口元に笑みを浮かべたエレンはもう一度安堵の息を漏らした・・・。

         *

 さて、エレンがミノタウロスをはるかに上回る被害を山林に与えていたその頃も、ハルカとククの追いかけっこは、なおも続いていた。

「ハァハァ・・・、トロそうに見えたのに驚くほどしつこいなぁ・・・!」
 息を弾ませながらククは、またハルカを振り返る。
 心なしか、少しずつ自分との距離が縮まっているように感じた。
 そこに焦りが生じる。

 ズキッと脚が痛み、ククは脚をもつれさせて転んだ。

「うわぁ!」
 前のめりに倒れ、彼はひざ小僧をすりむいた。
「痛っ!」
 すりむいたひざを抱え、ククはその目にうっすらと涙を浮かべる。

「だ、大丈夫ですかぁ~~?」 
 ククが転んだのを見て、ハルカは心配した顔をしながら彼に駆け寄ってきた。
 無理をしてでも走り続け汗をかいたためか、いくらか酔いも醒めた様子で、ろれつも正常に戻っている。

「大丈夫なもんか・・・!」
「ちょっと、見せてください!」
 毒づくククに構わず、ハルカは血が流れ出るククの脚にハンカチを巻いてやった。
 ひざに巻かれたハンカチを見ながらククは、ハルカを睨むようにしていった。
「・・・感謝はしないぞ」
「べ、別にそんなつもりじゃないですぉ・・・」ハルカは慌てて首を横に振る。
「フェニックスの居場所だって教えないからな・・・」
「そ、それは、困りますぉ・・・」ハルカは当惑した顔をする。
「・・・なんでだ?」
「そ、それは・・・。大切な友達を助けるために、フェニックスの血が要るからです!」
「大切な友達・・・? 助ける?」ククは怪訝な顔をして首をかしげる。
「あ、あぃ・・・」ハルカは頷く。「その子は、石化病という病気にかかっていて・・・直すことが出来ない病気らしいのですが・・・でも、フェニックスの血を使った薬を作れば、その病気を治すことが出来るかもって・・・」
 ハルカはつたない説明をした。

「石化病・・・か・・・。なるほどな」ククは険しい顔をしながら頷いた。
「あぃ・・・」
「確かに、フェニックスの血があればどんな病も直すことの出来る薬が出来るだろう・・・」
「ほ、本当ですか!?」ハルカは顔を輝かせた。
「だけど・・・」ククはよろよろと立ち上がった。「オレは教えるつもりはないぞ・・・」
「あぅ・・・」
 ハルカは天国から地獄に堕ちたみたいに、ガッカリした顔をする。

「だいたい・・・、――!?」
 そうククが何かを言いかけたとき――ハルカの視界から彼の姿が消えた。

「あれ!?」
 体を起こしたハルカは、直ぐにククが滑落したのに気がついた。
 急斜面――というよりも崖――を転がり、悲鳴を上げる余裕もないククの小さな体は、直ぐ先にある正真正銘の崖のほうへ向かっていた――!

「た、大変ですぉ――!?」
 そう言うや否や、即座にハルカは自分でも理解ができない行動に出た――ククと同じ崖を滑り降りたのである!





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2006年10月28日 15時30分18秒
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: