くずみ さくやのダイエット&SnowMan好きブログ

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久住咲夜

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ぶらぶら散歩 New! luumamaさん

2007.12.22
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カテゴリ: BL小説
さくやの、好きなお話です。忘れては、思い出して本棚から必死で探して

とてもこころに痛いような、不思議な気持ちをくれます。


「経験」
麻生雪奈先生(イラスト・幸田真希先生)
ラピス文庫



和希は、他大学との飲み会で再会した智也と高校時代に関係を持っていた。
綺麗で女に不自由の無いはずの智也の追いつめるような激しい愛情に
疲弊し、怖くなった和希は、大学受験を期に一方的に別れを告げたのだった。

再び智也の息苦しくも甘い愛情に囚われていき...。


再会ものなのですが、文章や人物が変に作りこんでいなくて、もしかしたら
悪く言ってしまえば印象に残り辛いお話かもしれませんが、
じわり、じわりとこころに残ります。

高校時代にお互いに好意と少しの好奇心から始まった恋は、和希の想像以上に
智也の愛情と束縛の強さに次第に自分を失っていって、
まだ恋という感情に幼い和希は、智也の本気の想いが怖くなり

こんなはずじゃなかった。
友達の、気楽に付き合えるような優しい関係でいたかった。と、

大学も嘘をついて他大学を受け突然の別れを切り出し、逃げるように
連絡先も変え、一方的に「恋」を終わらせます。


智也も確かに、怖いくらいの愛情ですが。
でも、高校生で本気の恋だと向き合えなかった臆病...とも違う、何かな
...逃げたい気持ちもわかるようで、読んでいて和希の別れの選択には
「これを選んじゃったんだ...そうか...」と思ってしまいます。

想いって儚いなぁ、と思いつつも理解できるよ、うん。みたいな(苦笑)


他大学との飲み会で再会してしまい
最初は当時の智也の押しつぶされる様な想いの怖さを思い出し
和希は緊張していましたが、名前ではなく苗字で呼ばれ、距離を置く空気に
「もしかしたら、友達としてまた会話できるようになれるかも」と、
愛情には答えられなくても、友情以上くらいで智也のことは好きだったと
思う和希はだんだんとこころを許して、ふたりきりでも会うようになります。

がっ、それが大間違いで(苦笑)

同じ高校時代の友人と智也と飲んだ帰りに、酔った智也の介抱を頼まれて
自分の部屋へと連れてきた途端、それまで優しかった智也が
「やーめた...。
以前みたいにがっつかない様に順序たててオトそうかと思ってたけど...」
と、それまでの穏やかな空気を捨てて襲ってきて
暴力の様な一夜を過ごすことになるのですが...ここがね~!
上手く言えないのだけど、淡々と時間(文章)は過ぎているのに和希の恐怖と
智也の豹変振りがすごく「恐ろしい」と、伝わっていて

今までにこやかに笑っていた友人が、いきなり殴ってまで襲うのが
淡々な分、余計に怖くて。
しかも智也も過去では抱き合っていたのに簡単に信用して、部屋にも上げる
和希を滑稽だと
「笑いこらえるの、すげぇ苦労した」と嘲笑していて
うわぁ~...化けの皮が剥がれちゃったよ~っとハラハラしちゃいます。

必死に暴れる和希を殴ってまで襲う智也に、執着の強さと
今までの穏やかさに騙された鮮やかさに、酷いと思ってしまいますが
でも智也の「俺を捨てて、可哀想だと思った?...同情なんか、させない」
の言葉に、はっとしてしまって...。

確かに高校時代の別れの時、勝手に楽な方へ逃げた人間より
捨てられた人間の方が痛くて、辛かったのかなと思ってしまうのが。

この出来事の前に和希は親しい先輩に、過去の関係は言わず
ちょっと気まずい友達に久しぶりに会ったけど、普通に話せて嬉しい事と
これから食事に行く、と嬉々として話すのですが
先輩の「思い出を美化するな。~、二年かそこらで人間の本質は変わらない」
という言葉が重くて(苦笑)

このお話だけじゃなく、自分にもいえちゃうなぁと。
お話の中で度々ぐさっとくる言葉があるので...唸ってしまいます(笑)

殴り合ってぼろぼろの顔のまま(ここに絵があるのですが、可愛い感じの絵を
描かれているので、全然そんな感じじゃないのがもったいないんです・苦笑)
和希の大学までついて来た智也に、ついに怒りが込み上げてきて
仕返しだったんだろ!と怒鳴っても

逆に恨むだけならころしてた。復讐だったらもっと優しく抱いた。と
言われて余計に智也の本心が解らなくなる和希ですが
「欲しいものを手に入れるために、来た」と真剣に言われ
自分でも幼かったから逃げてしまった恋の、今になったら受け止められる
和希自身にも確かにあった智也への気持ちに気付いてしまいます

それからは、全て素直にとはいわなくてもお互いを今の目線でちゃんと
見つめて理解して、
智也の中にあった高校時代の想いの怖さも「あの頃は異常だった」と
自分で反省するほど、理性でコントロールしようとして落ち着いていて

高校時代には無かった、ただ抱き締められて眠るような穏やかな日々に
あの時欲しかった「対等な普通の友情」も、和希の意思を確認してくれる
愛情も惜しみない智也の想いに、和希も答えるようになって。

読んでいて、智也には和希しかいないとどこを読んでもそう思えるので(笑)
再会直後のは酷いと思いますが、和希も智也の想いを
例え少しずつでも受け止めたときは、さくやまで嬉しくなりました

和希の家で一緒にご飯を食べたり、買い物に出かけたり
「日が暮れて夜になって、次の朝がきて...そんな感じがいい」という
智也のセリフがあるのですが、和希はその時理解してませんが
相手を束縛することしか出来なかった智也が、こんなにも考え方を変えようと
今まで努力してきたのが伝わって、切なかったです


でも、最後また色々将来や、高校も一緒で当時からふたりの関係に気付いても
相談にのってくれて、酷い別れ方をした後も、非難はしてもそれと同時に
支えてくれていた女性が、自分と智也の話を聞きながらも
智也をずっと想っていたのを知って、想いもあるし抱き合っていても
相手のこころを良く見れずに、自分だけ傷つかないように
曖昧な関係を続けていたと気付いた自己嫌悪と、悪い方向に考えちゃった和希が
合鍵を使って部屋で待っていた智也に
また別れを告げてしまうのですが、ここは和希だけがぐるぐる考えて
パニックになって...この場面は、和希酷いな!!とはっきり思えます(汗)

でも、「これこそ人間だもの」という感じで、どこか納得してしまう...。

何を言っても伝わらない悲しさに今度は智也が静かに、部屋から
出て行くんですけど、智也のしたことも想いも全部が正しくは無いけど、
ここまで傷ついた攻めも珍しいなぁと(苦笑)

最後「人の気持ちが変わるなんて、知らなかったんだ......」と、言って
智也は出て行くのですが...うーん。
和希に強い愛情があるからそう言えるのだろうけど。やっぱり人間は
疑ったり、想いの変わってしまう恐怖をこころに持ちますよね...
相手が好きなら、尚更。
だから、この言葉は智也の奥の、ずっと奥のある素直で純粋な
想いに対しての感想だと想うのですが...重いなぁ(苦笑)
気持ちが重いとかじゃなくて...そう相手に思える綺麗さが怖くて重い。

この言葉に今まで世間体や、外側だけで意識的に一歩距離を置いていた自分の
自分の中の「欲望」を全て智也のせいに無意識にしていたり
残酷さや、身勝手さに気付いた和希は出てってしまった智也を追いかけて
上手く言葉に出来なくても、泣きながら必死に抱きつきます。

もちろん、そんな和希でも好きな智也は抱きしめ返すのですが
ぽつぽつとお互いゆっくりと、想いを伝え合うのが...
この期に及んで「明日になったら後悔するかもしれないけど...」という
和希の本音が、綺麗にまとまってない人間同士の「恋」として
伝わって、そんな汚さがあるのもしょうがないじゃない、と
しみじみ思ってしまうんです。

まあ、智也にはちょっと切ないでしょうが(苦笑)

BL本だと、女性キャラは悪か家族かになってしまいますが、このお話の
高校時代から智也を好きだった女性の「花穂」が、とても素敵なキャラで
この子がいなかったらダメだなと思えるくらい、ふたりを支えていて。

苦しい恋心を抱えているのに、智也の笑顔が見たいから和希との再会に
手を貸して、和希には「あの時の仕打ちは酷いと思う」と言っても
不安でしょうがない和希の信頼に答えて、今後もふたりを支えていって。
幸せになってほしいなぁとおもいました

この後最後に同棲話になるのですが、和希が花穂に同棲のきっかけを聞かれて
「あいつが部屋の壁が薄いから気になるって言った時に
じゃあ、壁の厚い部屋でこいつと一緒に暮らそうと思った」
というのが...飾ってなくていいと思いませんか?(苦笑)

きっかけなんて、こんなものじゃないのかな。
変に取り繕う必要の無い男の子同士、ふたりなんだし。

あんなに躊躇っていた和希がこんな事を言うまでになったのも
びっくりですが(笑)

あと、お互い元ですが彼女が出てくるのが新鮮でした
引っ掻き回すというよりは、二人でいるときに偶然会ったという感じですが
よく、再会ものでも何でも受けが、別れてから一度も恋をしていない。とか
抱かれていない。とかありますが、最近さくやそういうの苦手で。
そういうのに限って攻めは遊んでいたり、
なんで受けばかり「綺麗」じゃなくちゃいけないのかなぁと。

想いは大切だけど、そんな残るような強い気持ちだったら
時間を闇雲に過ごさないで、新しい恋...までいかなくても...をするなり、
攻めにまたアタックするなりしたほうが
まだ、「本当は寂しい」よりは幸せな時間だと思うのだけど...。


...ってめちゃくちゃそんな受けはマイナーだと自覚していますけど(笑)


あとがきであるのですが、「特別強くもなく、弱かったりずるかったり」する
普通の子の恋愛。と書かれていて。
だからこそ、一見ちょっと埋もれてしまいそうなお話ですが
読むと、和希も弱さも狡さも、智也の想いもすーっとこころに簡単に
入り込んでしまうのだと思います。

とても、とても好きなお話です
華麗な事件がある訳でも、
パーフェクトな愛とキャラが描かれているわけではないけれど。
ああ、わかるよ。というちょっと懐かしむような感じで。

ただ残念なのが、2005年の作品だから結構在庫切れみたいですね(涙)

...本当はもっと語りたいけど、これ以上だと止めど無くなっちゃうから(笑)





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Last updated  2007.12.22 02:48:48


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