ミステリの部屋

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2009年05月29日

儚い羊たちの祝宴：米澤穂信

(4)

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ（や・ら・わ行作家）

本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。
古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。
（「BOOK」データベースより）

身内に不幸がありまして／北の館の罪人／山荘秘聞／玉野五十鈴の誉れ／儚い羊たちの晩餐

あらすじにさからうようですが、「ラスト一行で落ちる」という表現は、勘違いを誘います。
「ラスト一行で決まる」と言った方が、間違った方向の期待をしないのではないかと思います。

旧家のお嬢様や使用人が出てくる、私の好みの時代の話。
言葉も丁寧語で、しっとりとした雰囲気です。

「バベルの会」という、大学の読書サークルがキーワードとなって、全体をつないでいます。

内容はブラックです。私はあまり得意ではない分野だと思っていましたが、米澤さんの、静かで行儀のいいブラックさは大丈夫でした。

「山荘秘聞」には、見事に騙されました。
「玉野五十鈴の誉れ」に背筋が寒くなりながらも、絶賛する自分がいました。私にもしっかり暗黒な面があったのです。

最後の「儚い羊たちの晩餐」がいちばん怖いかもしれません。

自分が「儚い夢想家の羊」となれば、はっきりわかるのでしょう。

ひたひたと忍び寄る静かな狂気に、酔ってしまえれば幸せ。