西アフリカにはリベリアという国があります。

ビーズ物語～ひなたまさみさん作～

　　　トンボ玉　　　　　　　ひなた　まさみ

　わたしはトンボ玉。
　ガラスのビーズです。
　トンボの目に似ているから
「トンボ玉」と呼ばれます。

　わたしの目は、もう何百年もの間、
　アフリカの人々を見てきました。
　たくさんの人たちの流す悲しい涙を
　見てきたのです。

　その昔、ビーズと交換に
　奴隷として買われた人々は
　家族と引き離され
　自分の生きる希望を奪われ
　涙を流しました。

　戦争が始まると
　それまで普通に暮らしていた人々が
　目の前で家族を殺され
　銃にあたって手足を失い
　涙を流しました。

　そして気がつくと
　腕に銃を持たされ
　生きている人たちを
　自分の手で殺さなければならなかった
　少年たちもいました。

　ぼくは　どうして
　生まれてきたの？

　ぼくは　お母さんに会いたいよ。
　ねえ、ぼくのお母さんは　どこ？

　たくさんの子どもたちが
　私にたずねました。

　愛ってなに？
　夢ってなに？
　希望ってなに？
　未来ってなに？
　平和ってなに？

　そして　私は日本という国へ
　運ばれてきました。

　私は最初　天国へ来たのかと思いました。
　豊かな緑の中に
　色とりどりの花が咲く
　美しい国。

　お母さんの腕に抱かれている
ふっくらとした頬の子どもたちの笑顔は
安らぎに満ちて
まるで天使のようです。

私の見たことのない
幸せな子どもたち----

ふいに　あたたかい手に包まれた私。
　その手が運んでいった先には
　まるで星くずのように輝く
　たくさんのビーズたち。

　アフリカの子どもたちを救いたい！
　そんな思いを持つ人たちの手が集まって
　私たちビーズは
　そのぬくもりの中で
　次から次へと
　つながっていきました。

やがてそこには
きれいなビーズのお花畑ができました。
ひとつぶ　ひとつぶに
願いを込めて
たくさんの人たちの祈りが
きれいな花を咲かせました。

私はトンボ玉。
今、私の目は
未来を見ています。
アフリカの子どもたちの
愛にあふれる平和な未来を
夢を
希望を見ています。

いつかきっと　みんなの力で
アフリカにもビーズの花を咲かせましょう。

すべての子どもたちへ　たった一つの気持ちを込めて・・・
「生まれてきてくれて　ありがとう

ジャンル別一覧