眠れない夜のおつまみ

眠れない夜のおつまみ

PR

Profile

Dionaea

Dionaea

Archives

2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2025/06
2025/05
2025/04
2025/03
2025/02

Favorite Blog

to turn☆” ANSEさん
Nonsense Story ふーたろー5932さん
かめ@ゴミスティピ… かめ@ゴミスティピョンさん
Nonsense Fiction 雪村ふうさん
がらくた小説館 信兵衛9107さん

Comments

どぴゅ@ みんなホントにオナ鑑だけなの? 相互オナって約束だったけど、いざとなる…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
チリチリ@ 次は庭で全裸予定w http://kuri.backblack.net/nnv256a/ ち○…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/qdcrv2g/ フ○…
アゲチン@ ありがとうな!!!! http://bite.bnpnstore.com/5k6hu-y/ ア…

Keyword Search

▼キーワード検索

2006/04/11
XML
首にロープが食い込んでくるのを感じながら、私は恐怖と、悔しさの狭間で震えていた。
だんだん苦しくなって意識が遠のいて、あっちの世界に行きそうだというのはこういうことなのか?、と冷静な私がもう一人頭の中にいるのが分かった。
もう駄目だと思った時、急にスッと手足のロープが解け、口に貼られていたガムテープもはらりと剥がて、びっくりして私はゆっくりと手をまだロープで締められる生々しい感触が残る首に手を当てた。
更に驚いたことに、殴られて出来た顔の腫れは無くなっており、視界も鮮明になっていたのだった。
「ど、どういうことっ?!」
そして、あたりを見渡すとなんと私はサルバドール・ダリの 記憶の固執 の中にいたのだった。
私は地面にぺたりと座り、木にかかっているへにょへにょの時計はユラユラと揺れるのをただ呆然と眺めていた。
すると、後ろから私の肩を叩く何者かが現れた。

金髪に染めた髪のどう見てもヤンキー姿の私だった。
「あなたは私なの?」
そんなこと聞いたら、頭のおかしな人と思われることだろう。
しかし、咄嗟に出てしまう言葉もあるのだ。
その人物は落ち着いた声で
「そうよ。あんたはあたしよ。あたしはあんたなのよ。」
とすんなりと答えたのだった。
「ここはどこなの?」
本当にさぱり分からない。なぜ、学生の頃に教科書で見たダリの絵の中に自分がいるのか・・・。もう一人の私ならその疑問に答えてくれると直感した。
「ここは、時空の歪みよ。」
と言ってヤンキーの私はふっと笑った。

「そうよ。ここは時空の歪み。あんたがトロイからあたしがここに引っ張ってきたのよ。」
「じゃ、私を助けてくれたのはあなたなの?」
「自分自身とも言うけどね。」
「ここは絵画の中のようだけど、私はこれからどうすればいいの?」
ヤンキーの私は驚いたようだった。

「ええ。ダリの記憶の固執って言う絵の中にいるようだわ。」
「あたしにはココは宇宙空間に見えるんだ。と、言う事はやっぱり同じ自分でも全く違うんだ・・・。おばさんが言っていた通りだ。」
とぶつくさ言い始めた。
「分かりやすく教えてよ。」
私はヤンキーの私にすがる様に言った。
「ここは、時空と時空を繋ぐ中間地点のような場所らしいんだ。あたしは、あんたが選ばなかったもう一つの人生を歩んでいるあんたなんだよ。あたしは、死んでここに何故だかきちまったんだ。」
ヤンキーの私はふっと表情が暗くなった。
私は彼女の言っている事の半分も分からずにただ聞いていた。
「死んだって。どういうこと?」
「あたしは両親が離婚してから、やりきれなくなって、道にそれていったのさ。」
そう言えば、私が中学生の頃、両親はよくケンカをしていて母が一人泣く姿を何度か見た事があった。
私もあの頃は心中穏やかではなかった事を思い出した。
でも、夫婦間で問題を解決して今は嘘のように穏やかな関係になっている。
「あんたの首を絞めていた連中とあたしはつるんでて、あの雨の日やる事が無くてみんなで廃墟に行こう、って事になったんだ。」
もう一人の私は遠くを眺めながら話を続けた。
「そしたら、龍次がどこから手に入れたのか薬を持っててさ、みんなでハイになろーじゃんとか言って粉を鼻からみんなで吸ったんだ。それからの事はよく覚えていないけど、みんなハイになったみたい。でも、龍次だけが暴れだして突然あたしの首を絞め始めたみたいなんだよね。あたし、そん時笑ってた気がする。
目が覚めたとき、首に生暖かい手の感触が残ってたんだ。あたしはだんだん上に体が浮いて、ぐったりと倒れている自分の亡骸を見下ろしながら何かの力に引き寄せられるようにここに辿り着いたんだ。」
彼女は私の方を見て続きを話し始めた。
「ここに着いた時、ここがどこなのかサッパリ分からなかった。暫くするとぽつぽつと人が現れて、自殺したって言う中年のおばさんが声をかけてきたから話をしたんだ。
そのおばさんは自殺した事をすごく後悔していたよ。あたしと同じくらいの娘がいたんだってさ。後悔の気持ちが強すぎてここにいるんだ、って言ってた。そのおばさんに分かっている事を教えてもらったんだ。」
私はごくりと唾を飲んだ。その音が彼女まで聞こえたようだったが気にもせず、また話を始めた。
「自分が思っている人生は一つだけじゃなくて、無数に存在するって言ってた。例えば、あの時別の選択をしていたらな~、って思うことがあるだろう?けど実際には時間が戻るわけは無いし、自分が選択した道を歩かないといけないって思うんだけど、自分が選択しなかった世界は存在しているんだそうだ。」
「パラレルワールドね。」
「そうそう。おばさん、そう言ってた。おばさんにあたしの話もしたんだけど、多分あの廃墟がここと繋がってるんじゃないか、って言ってた。あたしもあんな死に方、ここに来て後悔し始めてさ。おばさんと同じような気持ちだったんだよね・・・・。」
私は何となく話が分かって、彼女に静かに頷いていた。
「そしたら、おばさんがさ、もし今度その廃墟と繋がった時に向こうの世界に戻れるかもしれないよ、って言ったんだ。おばさんも、もう一度向こうの世界と繋がる時を待っているんだ、って言ってた。」
「じゃ、私も帰れるのかな?」
すると彼女は
「あんたは帰れるかもしれない。けど。」
「けど?」
「あたしは一度死んでるんだから、本当に戻れるのか分からないんだよね。」
と、また悲しそうな顔をした。







                            <つづく>



ランキングにあなたの1票をよろしくお願いします。
励みになります!



人気blogランキング




*****ちょっと一言*****

なんか、間延びしちゃいましたが、続きです。
最初、前編後編の短いものにしようと思ったのですが、もう少しだけ長くしてみようと思いました。書いていて、微妙な感じで危険です。(笑)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/04/13 01:01:20 AM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: