眠れない夜のおつまみ

眠れない夜のおつまみ

PR

Profile

Dionaea

Dionaea

Archives

2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2025/06
2025/05
2025/04
2025/03
2025/02

Favorite Blog

to turn☆” ANSEさん
Nonsense Story ふーたろー5932さん
かめ@ゴミスティピ… かめ@ゴミスティピョンさん
Nonsense Fiction 雪村ふうさん
がらくた小説館 信兵衛9107さん

Comments

どぴゅ@ みんなホントにオナ鑑だけなの? 相互オナって約束だったけど、いざとなる…
ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
チリチリ@ 次は庭で全裸予定w http://kuri.backblack.net/nnv256a/ ち○…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/qdcrv2g/ フ○…
アゲチン@ ありがとうな!!!! http://bite.bnpnstore.com/5k6hu-y/ ア…

Keyword Search

▼キーワード検索

2006/04/22
XML
私はまた家に帰って来た記憶が無かった。妻に揺さぶられて目が覚める。
「最近、どうされたのですか?お仕事忙しいのですか?」
ああ、またか。妻の顔を見て状況が把握出来た。
「あぁ。少し難しい患者がいてね・・・。」
と適当な嘘を付くと妻は納得したようだった。
「お風呂で体を温めて寝たほうがいいですよ。」
妻はそう言うと「お先に」と寝室へ向かって行った。
私は何か忘れている気がして頭の中がもやもやした感じで気持ちが悪かった。
何だったのだろう?何か約束をした気がするのだが・・・。

クラブであの女性と話をし、最後に何か約束をしたような気がするのだが・・・。
クラブのカードを取り出そうと財布を開けると1枚のメモ用紙が入っている事に気が付いた。

「木曜 グランドホテル 1009号 20時」

それを見て全て思い出した。
あの女性と約束をしたのだ。
仮面抜きで今度会いたいと彼女に言われて約束をしたのだ。
私は興奮した。
妻の事はここの所頭の片隅に追いやってしまっている。
嘘まで付いてあの女性に会うのはどうかしている。
今までの私ではこんなこと無かったはずだ。
あのクラブに行って狂ってしまったのだ。



1週間後、約束の日はやって来た。
妻には今日は遅くなると電話を夕方に入れておいた。
木曜日は循環器のカンファレンスで7時まで病院にいる事になるだろう。
この日は当番も無い。
普段だったらクラブに行く所なのだが、今日はグランドホテルに向かっている。

彼女が部屋を取っておく事になっていたので、もう先にいるはずだ。

どんな顔をしているのだろうか?美人か?いやそれとも期待しない方のがいいのか・・・。

私は俗物に成り下がってしまった気分でいろいろ想像をめぐらせていた。
ホテルのロビーからエレベーターに乗って10階まで上がる。
何となく落ちつかない。
エレベーターを降りて1009号室に向かった。
1009号室を目の前にして一度深呼吸をする。
先に私の顔を見られるのだ。
きっとこのドアスコープから。
もし落胆されてドアを開けてくれなかったら速やかに立ち去らなくてはならないのだろうか。
情けない。
そんなネガティブな結末を想像してチャイムを鳴らした。
するとガチャッと鍵が開く音がした。
私はごくりと生唾を飲み込んでゆっくりドアを開けて中に入っていった。
彼女はドアに背を向けてベッドに座っていた。
クリーム色のスーツにショートカットのすらりとした女性であった。
私達は名前すら知らない事にこの時気付いた。
「あの・・・。先週お約束しましたよね?あなたの名前を私は知らないので。」
そう言うと女性はゆっくりこちらを向いた。
私は彼女の顔を見た瞬間、腰が抜けそうなくらい衝撃が走った。
「お、お前?!な、何で?え?どうして?どういうことだ?」
ふふっと笑ったその女性は「妻」だった。
ストレートのセミロングだった妻の髪型はナチュラルなパーマのかかったショートカットに変わっており、化粧も今までに見たことのない気合の入れようで、洋服だって私と出かける時とは全く違った雰囲気のものであることも更に驚かせた。
「あなたって本当に馬鹿ね。あんな仮面つけているくらいで自分の妻さえも分からないだなんて。」
「どうして?知っていたのか?全部。」
私の前で勝気そうに腕組みをしながら妻は立っている。
これほど恐ろしいものはないかもしれない。
「そうよ。全部。今までのこと全部よ。」
「違うんだ。」
「何も違わないわ。あんな所でコソコソと。浮気相手でも見つけていたんでしょ?」
「違う。私は、私から誘ったんじゃない。全部、全部違う。」
ああ、違う。違うのだ。
妻はバッグから何かを取り出して私の目の前に叩き付けた。
「これは。」
「離婚してください。もう、我慢ならないんです。もう、うんざりです。あなたとの生活。あなた、仮面をずっとかぶって外さないんですもの。」




悪かった。

悪かった。

お前の事をもっと大事にするべきだった。

もっと話をするべきだった。

今からではやり直せないのだろうか?




私はあのクラブに通ってしまった事、ここに来てしまった事を後悔した。
妻がかざした離婚届がだんだん真っ白になっていく気がした。

いや、私が気を失ったのか?

目の前が真っ白になった。



「・・・た。・・なた。あなた。」


私は体を揺さぶられて目が覚めた。
妻はいつもの妻だった。
髪型はストレートのセミロングだし、化粧もいつもどおりナチュラルだし、服装だってあんなスーツではない。
「いや、違うんだ。あれは黒田にストレス解消方で連れて行かされて。私の意志で行ったのではないんだ。だから、もう一度話し合おう。」
私は訳が分からず弁解し始めた。
そんな私を見た妻は変な顔をして
「いやだわ。何言っているのかサッパリ分からないわ。それに黒田さん、去年交通事故でお亡くなりになったじゃない。お通夜もお葬式にも行きましたよね。」
と言ったのだった。そして続けて
「あなた、変な夢でも見たんですわ。」
と言った。

夢だったのか?本当に?

半信半疑で財布をポケットから取り出してあのクラブのカードを探した。
しかし、無かった。
本当に夢だったのか?
そうだ、妻の言ったとおり黒田は去年突然亡くなったのだった。
ほっと胸を撫で下ろすと私は柄にも無い言葉を妻に返した。


「今度、連休取ってどこか旅行にでも行こう。家族全員で。」
妻はにっこりと嬉しそうに
「旅行なんて何年ぶりでしょうね。」
と思いがけない言葉に喜んでいるようだった。
私はそんな妻を満足げに見つめていた。


                                  <終わり>





ランキングにあなたの1票をよろしくお願いします。
励みになります!



人気blogランキング




*****終わってちょっと一言*****

めでてし。めでたしデス。

本当はテレクラ通いのエロ医師が最後に痛い目に合う(この話もまた書こうかな)、って言うストーリーにしようと思ったのですが、書いているうちになんか変わっちゃいました。
でも、最後のあの女は妻だった、と言うのは気付かれちゃうかな・・・と思いながら書いていました。(汗)

このお話にそんなにすごいメッセージ性はないのですが、夫婦の間に「秘密」や「嘘」はやっぱり溝になるよね・・・と思いながら書いていました。

人間誰でもPTOに合わせた自分ってあると思いますが、仮面の使い分けには注意ですな。
いや、そんな器用にいくつも持ってないってばって?
あ、私は猫飼ってるんだっけ?って。(笑)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/04/23 10:45:32 PM
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: