買書とつんどくの日々

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2009年02月19日
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池上永一さんの「 テンペスト

やっと、というか、ついに、というか、これはとても良かったですね。

一部、「若夏の巻」後半は王妃の失脚、聞得大君の失脚、宦官徐丁垓の登場と寧温の流刑、とめまぐるしい展開に、例によって語りがおいてけぼりになっている気がして居心地が悪かったのですが、「花風の巻」に入り、物語がクライマックスを迎えるにつれて、語りもさえていく感じがしました。

思うに、「テンペスト」という表題は、寧温=真鶴の中の嵐であり、それに宮中の権力闘争の嵐と、列強の進出による植民地化(日本の列強化を含めて)という歴史の嵐がからまりあって、これが最終的に、基調としての龍=琉球王国の終焉の嵐に収束していくように感じられます。
今回特徴的なのは、物語りに歴史が導入されていることで、これによって奔放な荒馬がコントロールされていたように思われることが、僕にとっては、違和感の解消につながっているのではないかと感じられました。
一方、宮中の嵐のほうは、僕にとって、あいかわらず、やりたいほうだい、手綱なき暴走という感が無きにしもあらずでした。

ここで、連想されるのは、津村記久子さんが 「ポトスライムの舟」 で芥川賞を受賞したときの選評で、村上龍さんが「作家は、コントロールできそうにないものを何とかコントロールしようという意思を持たなければならないのではないか」と述べていたことです。


もっとも、繰り返しになりますが、池上さんの場合、コントロールしないのか、出来ないのか、その気がないのか判然としないところがあり、そこにかえって魅力を感じる人もいるらしく、それを僕自身理解できなくもないところが、またやっかいなのですが・・・・・。

それはともかく、むちゃくちゃ聞得大君真牛と真美那のキャラが立ってます。
マンガみたいという批判もあろうかと思いますが、キャラ立ちは、池上さんの最大の売りかもしれない、とか思いました。

で、 無花果。さん 茨木月季さん  お二人から「ぼくのキャノン」に触れたコメントをいただいたことでもあり、これを引き続き読んでみることにしました。





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Last updated  2009年02月19日 06時13分49秒 コメント(4) | コメントを書く


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