喜べば喜びが喜んで喜び集めて喜びに来る

Aug 10, 2005
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今日は父の命日だ。平成十年の今日、父は息を引き取った。

数年間もの間、肝臓を患いながらも、
最後まで自分の生き様を教えてくれたような気がする。

先日の日記にも書いたが、私は父にずっと反抗していた。
その思いを切り替えるきっかけがつかめぬままでいたが、
死ぬ間際にやっと言う事ができた。
今にも呼吸が止まるかという時になって初めて、
父に対して素直になれたのだ。


 御父さんの遺志はしっかりと僕が継ぐからね」

その五分後に、父は息を引き取った。
その言葉を聞いて安心したかのように息を引き取った。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

SF作家として有名な「星新一」さんは、
生涯に一度だけ、自分の父親の事を回想小説で書いている。
星さんの御父様は、有名な星製薬の社長であった、
星一(はじめ)氏である。
本のタイトルは、

「明治・父・アメリカ」

私はこの回想の冒頭の文章が本当に好きである。


「明治・父・アメリカ」

だれでもそうだろうが、
川を眺めていると、
いったいこれをさかのぼったら
どうなっているのだろうと考える。


上流のほうのようすを知りたくなるのである。

人生においても、そんなようなことがある。
いつもは時の流れに身をまかせ、
なにやら忙しく、一日一日をすごしている。
しかし、ひまができると、少年時代のことを思い出す。

そこには父がいる。
私の父は、私が大学を出て四年目ぐらいに死亡した。
遠い追憶のなかの父は、いつもにこにこしていた。
休日には幼い私たち兄弟を、
動物園とかデパートの展覧会とか、
時には郊外へとか、よくどこかへ連れていってくれた。
会社の仕事で旅行に出た帰りには、
いつもなにかしらおみやげを買ってきてくれた。

父にどなられた記憶もない。
私は神経質なおとなしい少年であり、
いたずらのたぐいをしたことがなかった。
そのためかもしれない。

あとで知るところによると、
会社における父は、机をたたき床をふみならし、
社員をどなりつけ、雷を落しつづけだったという。
もっとも、それは一瞬の後にはけろりと忘れ、
だれもなれっこになっていたらしい。
しかし、家庭内で大声をあげたことは、まったくない。
微笑をたたえていて、静かで、姿勢がよかった。

父はいつも、なにを考えていたのだろう。
これもあとで知ったことだが、
父は事業のことを考えていたのである。
仕事そのものが生きがいだった。
私の父に限らず、男とはそういうものなのであろう。

~中略~

その時はじめて、
父にも少年時代があったのだということに気がついた。
それまでは、父とは、もともとおとなとして存在していたものだと思っていたのだ。
新鮮な発見であった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

何度も何度も、このくだりを読み返したものだ。
そして、自分自身もそうであるが、
いまだに僕自身も、
自分の父の生きてきた歴史に触れる時、
川の流れの上流に、
父が笑顔で立っているのだ。





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Last updated  Aug 10, 2005 11:02:36 PM
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Comments

attsu@ Re:「誇り」とは何か ~自分自身の根っこづくり~(09/24) 20代の者です。 最近講演会で今の日本人は…
とうも@ Re:「誇り」とは何か ~自分自身の根っこづくり~(09/24) ふらふらと生きてきた自分によく聞かせた…
auly@ Re:「誇り」とは何か ~自分自身の根っこづくり~(09/24) こんにちは。 「誇り」で検索してこちらに…
ななし@ Re:「誇り」とは何か ~自分自身の根っこづくり~(09/24) この少年の誇りがどれ程 試されているか、…
通りすがりの人@ いやはや 訳あって「誇り」を検索したら、この少年…

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