「ミナコの思考回廊」

「マルボロ」


「マルボロ」

私は校舎の屋上で凍えながら吸う煙草が好きだ。清涼な風に身を任せながら、有害物質を吸い込むパラドックス。
吹き抜ける風が私の黒髪を舞い上げては高く落とす。

私は「もらい煙草」しか吸わないと決めている。自分で買ったり、いつもポケットに煙草の箱を押し込んだりはしない。

それでもライターだけは、常に持ち歩いている。


「1本ちょうだい」

「またかよー、オマエ吸うんだったら自分で買えよな」


彼はコンクリートに寝転んで、投げ出していた腕を持ち上げた。無骨な手には、残り少なくなったマルボロが握られている。
こちらを見ずに、ぼんやりと灰がかった空を見つめているが、どうせ大したことは考えていないだろう。
色素の薄い髪が、空色のコンクリートにふわふわと影をつくっていた。

(ああ、こうしているだけで、彼は一枚の絵のようだ)

そんな感覚的な思考が脳裏を過ぎる。しかしそれこそが彼の悲しさなのだと知っている私は、唇を噛んで目を伏せた。


「ありがと」


マルボロを1本掠め取ると、彼は無言のままその箱をポケットに突っ込んだ。
私も黙って、カチカチと自分のライターを鳴らした。


私は校舎の屋上で凍えながら吸う煙草が好きだ。
しかしライターは持っても、煙草は持ち歩かないし買いもしない。

私は「もらい煙草」しか吸わないと決めているから。

彼からしかもらわないと、決めているから。


掠め取った「もらい煙草」は少し苦くて。

それでも私は彼の一部であるその有害物質を、力いっぱい吸い込んでやった。




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