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2005年04月29日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay

ハナミズキ が見たいと思った。
 先週も鎌倉へ行ったばかりなのに、あまりの好天気にじっとしていられなくなったのだ。
 冬物の整理をするつもりで洋服ダンスから取り出したコートやジャケットが、そこら中にだらしなく散乱している。
 「今年の花は今年しか見られない」という、わたしの十八番を長女に唱えられて、片付けるのが馬鹿馬鹿しくなった。
 「それじゃ今から行くかー、いざ鎌倉へ」と二人で家を飛び出した。

 ゴールデンウィークの初日ということもあって、長谷寺や大仏で有名な高徳院へと続く道はさすがに混雑していた。それにくらべて、一本裏に入った光則寺の、海棠の花が終わり新緑に覆われた境内は、静まり返っていた。
 時折、孔雀の甲高い鳴き声が、しじまを劈(つんざ)いた。

 「なんかこういう時間って良いね」
 本堂の廊下に腰掛けた長女が言った。
 「本当ね。観光客も海棠が終わったせいか少ないし。のんびりするよね」
 わたしも並んで腰掛けた。辺りを見回すと連なる山々を借景に、薄紫の藤が垂れ下がっていた。見上げると、空の地色に新緑と薄紫の藤を織り込んだような空間が広がっている。自然が作り出す色彩は、なんて素晴らしいのだろうか。
 わたしは、しばらく呆然とそこへ佇んでいた。折しも、緑をたっぷり含んだそよ風が、頬を優しく撫でていった。
 唐突に、別れた病床の夫のことが思い浮かんだ。
 彼はすでに「目の前のこの自然を体感できないのか」と思った瞬間、ものすごく申し訳ない気持ちがして、涙があふれ出そうになった。
 わたしの傍には大事な娘達が居てくれることや、時にはこうして散策に付き合ってくれることが、どんなに幸せなことなのかを教えられた気がした。


 「ハナミズキが見たかったけど、どこのお寺か浮かばなかったから、今日はここだけで帰ろうね」
 ハナミズキは見られなかったけれど、 都忘れ 宝鐸草 (ほうちゃくそう)、 小手毬 大手毬 姫空木 海老根 (えびね)、 熊四手 唐種小賀玉 (からたねおがたま)、 牡丹 (ぼたん)、
著莪 (しゃが)などを、デジカメに収めた。
 気候のせいか、頬を撫でる緑の風のせいなのか、わたしはとても優しい時間を長女と共有していた。(参照 『季節の花 300』

 (画像は唐種小賀玉:あわせて 『ギャラリー紫苑』 もどうぞ!)photo by sion





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最終更新日  2005年05月01日 12時49分16秒
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