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片野 道郎

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2006.06.04
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 イングランド方面では、白地に赤十字の セント・ジョージ・フラッグ (聖ジョージ旗)があまりに氾濫しているのに対して、これは大英帝国に対する侮辱だから掲げるのを禁止してユニオンジャックに変えるべきとか、うるさいワールドカップに出るのは大英帝国じゃなくてイングランドなんだから当然だろとか、そういう瑣末な、しかし 民族のアイデンティティ にかかわる議論で盛り上がっているようで、イギリスで一番下世話で一番売れてるタブロイド紙『ザ・サン』は、 こんなキャンペーン まで展開して、セント・ジョージ・フラッグを煽っています。
 画像は、同紙のサイトがプリントアウト用に用意したスリーライオンズ応援用特製フラッグ (印刷して使ってくれって言ってるわけですから、ここに載せても著作権侵害だとか言わないですよね)

 でも、イングランドの皆さんは、この旗にどんな 起源 があるのか、ご存じなのでしょうか。

十字軍 の時代です。
 当時ヨーロッパの辺境国だったイングランドにとって、大きな産業のひとつだったのが地中海貿易。しかし問題は、スペインをぐるっと回ってジブラルタル海峡経由で西から地中海に入り、東の果てであるコンスタンティノープルに行って戻ってくるまでの航程で、しょっちゅう海賊に襲われて略奪の憂き目に遭うことでした(英国艦隊が無敵を誇るようになるのは、それからまだ500年も先の話です)。
 そこでイングランドは1190年、当時地中海でヴェネツィアと並ぶ最大の勢力だったジェノヴァ共和国に 上納金 を払い、商船の護衛をしてもらうという契約を結びます。その時に、ジェノヴァの友軍であることを示すために、元々ジェノヴァの旗印だった白地に赤十字の旗、 クローチェ・ディ・サン・ジョルジョ (聖ジョルジョの十字旗)を、イングランドの商船隊も掲げるようになったのが、この旗のそもそもの由来です。下の画像は、そのジェノヴァ市の紋章。

genova.jpg

 つまり、 イングランド国旗は、元々はジェノヴァ共和国の旗印だった というわけ。少なくともイタリア側の史料ではそういうことになっています。セント・ジョージは英語ですが、イタリア語だとサン・ジョルジョ。同じ人です。

 元々は自国の商船隊の護衛をお願いした国の旗印でしかなかったのに、どうしてそれがイングランドの国旗にまで昇格し、その象徴たるセント・ジョージがイングランドの守護聖人という地位にまで出世したのか、そのあたりの事情は、ちゃんと調べてないのでわかりません。
 でも、このセント・ジョージ(=サン・ジョルジョ)さんについてちょっと調べてみると、なかなか興味深い話が出てきます。

 セント・ジョージというと生粋のイギリス人みたいですが、この人は紀元3世紀に当時ローマ帝国の属州だった小アジアのカッパドキア(現在はトルコ領内)で生まれた、ローマ帝国軍の将校でした。キリスト教の聖人として祀られるようになったのは、ディオクレティアヌス帝のキリスト教弾圧に反対し、処刑されて殉教したため。


 このゲオルギウスさんの聖人としてのキャリア、これがなかなか輝かしいものです。
 殉教してから何世紀か後、キリスト教をアルプス以北の異教徒(当時はフランスから北はみんなバーバリアンの異教徒)に布教するために、各地の神話や民間伝承を動員して でっちあげられた 作られた様々な説話の中で、悪いドラゴンを魔法の剣を使って退治し王女を救った、という英雄譚の主人公に昇格。
 中世にはその話が、当時流行した騎士物語のひとつとしてヨーロッパ各地で大流行し、「 ドラゴンスレイヤー 」として一大スターにまで成り上がりました。
ドラゴンスレイヤー伝説 」(とか書くとゲームソフトのタイトルみたいですが)の主人公で、当時としては最高にカッコよかったからでしょう。
英国大使館のホームページ には、14世紀から15世紀にかけて戦われた百年戦争中、イングランドの騎士たちがセント・ジョージ旗の下で、セント・ジョージの名を叫んで戦ったと書いてあります。でも、6世紀よりも前の話はなかったことになってます。

 『ザ・サン』は、ナショナリズムを煽るためにキャンペーンを展開しているのでしょうが、その旗が元々はイングランド人のアイデンティティとはなんの関係もないジェノヴァ起源だとか、イングランドの守護聖人である ドラゴンスレイヤーのゲオルギウスさん が実はアジア人だったとか、そういうオチがついてしまうところに、ヨーロッパがひとつの文化圏としていかに広い共通の土台を持っているかが、よく表れているような気がします。■





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Last updated  2006.06.04 23:13:20
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