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Jan 8, 2007
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カテゴリ: 小説 上杉景勝
「風呂にはいり酒じゃ」  謙信は左足を引きずり足を早めた。

 ここからも、謙信の命令を待つ将兵のどよめきが聞こえ、春日山一帯は真昼

のような篝火の明りで燃え盛っている。

「与六、今宵は一人にいたせ」  「お先に手配つかまつります」

 樋口与六が素早く謙信のそばを離れていった。

 彼は将才と学識をあわせもった稀有(けう)の俊才であった。いずれ上杉家の

重鎮(じゅうちん)となれる、謙信がひそかに期待する若者であった。

 謙信は居間で脇息に身をもたせ、つねの如く小梅を肴に大杯をあおっている。

 火桶が二個も用意された部屋は心地よく暖かい。謙信は再び回想にふけっ



なくなり、戦塵のあいだをぬって坂戸城に足を運び、喜平次とたわむれ、政景が

驚くほどの愛情をしめした。

「まるでお屋形さまの息子のようにございますな」

「政景殿、わしの甥じゃ。こうしておると合戦を忘れる」

「勿体ないお言葉にござる」  政景(まさかげ)が恐縮している。

「いずれは越後の国主となろう」  「そのようなお話はなさいますな」

 政景が厳しい顔つきでたしなめた。

「わしには子がない、いずれ国主の座を明け渡す秋(とき)がくる。それは喜平次

をおいてはない」  「お屋形さま、妻帯をなされ」  政景の顔色が真剣である。

「わしは己を毘沙門天の化身じゃと思っておる。妻を娶り怯懦(きょうだ)の心が

わくが恐い、その意味で妻帯はせぬと誓ったのじゃ」



「姉上も政景殿に心配せぬように申して下され」 「そのような事は申せませぬ」

「さあ喜平次、わしがもとに参れ」と膝に抱え上げた。

「喜平次、ご遠慮いたすのじゃ」  政景が声を強めた。

「政景殿、お怒りはなしじゃ。叔父と甥の仲じゃ」

 景虎の視線に小机がうつった。  「お手習いをしておったか?」



 わが子に接するように、自ら筆をとり嬉しそうに手直しをして見せている。

 こうした謙信の坂戸城訪問は、次第に不可能となった。戦国乱世の世は、謙信

に休息を与えなかった。彼は陣中から習字の手本の いろはづくし などを送り、

喜平次の様子をたずねる書状を送っている。

 こうした好意が政景にあたえた影響は大きかった。政景は若年から父の房景と

ともに数々の合戦を経験してきた。房景(ふさかげ)は景虎の父の弟であったが、

越後国主の座をめぐり、何度となく干戈(かんか)をあわせてきたのだ。

 政景の武名は越後に轟き、為景は倅の晴景(はるかげ)の器量が政景にくらべ

見劣りすると嘆いていた。しかし、次男の景虎が為景の意に反し国主となり、

越後を平定したのだ。

 政景は思う、景虎にはとうてい及ばないが、倅の喜平次に国主の座を譲ると

仰せになられた。そうなった暁には、国主の実父として権勢がふるえる。

 政景の心の片隅に傲慢な気象が宿りはじめた。

 特に永禄二年の五月、将軍足利義輝(よしてる)の要請をうけ、景虎が五千名

の精兵を率い上洛した時、越後国主代理として越後全土の統治を命じられ、そ

の驕慢(きょうまん)さが表にあらわれ、一部の武将から不満の声があがった。

 越後の武将たちから見れば、国主の景虎が妻帯せずに不犯を通している。

 いずれは血筋のつながった、上田長尾家の喜平次さまが国主となられる。

それは暗黙のうちに容認していたが、父親の政景が国主面をすることは我慢で

きない。この風評は景虎の耳にも届いているが、諌めることに忸怩(じくじ)たる

ものがある。可愛さのあまりに、喜平次を後継者とすると語ったことから、この

問題がおこったのだ。己の誤りであった。

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Last updated  Jan 8, 2007 10:18:43 AM
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