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May 1, 2014
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 勘助は拝領した武家屋敷を棲家としていた。

「お頭、・・・起きて下され」

 寝室の勘助に忍び声が聞こえた。声で槍持ちの平蔵と知れた。

「平蔵か、東光寺に異変が起こったか?」

「はい、今夜も忍び者が諏訪さまの許を訪れております」

「高遠頼継の手の者か?」

「はい、忍び込み既に一刻(二時間)は経っております」

 庭先の平蔵が低い声で報告した。

「平蔵、暫くは泳がせる。そちには面倒を掛けるが見張りを続けよ」

 勘助の命で、ふっと平蔵が気配を絶った。

 勘助は武田家に仕官が成った時に、平蔵を槍持ちとして使うようになった。

 この平蔵は勘助にとり、重宝そのものであった。

 勘助がなにも命じなければ、平蔵は家事全般を行い、裏山に入り ソダ 類を集め、

時折、鹿などを仕留めてくる。気の利いた小女を雇い入れたようなものであった。

 この平蔵は望月千代女の紹介で知った人物であり、当然、彼は忍び者である。

 それは梅雨の真っ盛りの時期であった。勘助は佐久の小県郡の望月家を

目差していた。目的は望月家の当主、望月千代女を訪れることである。

 望月家は樹木に覆われた場所にあった。樹木の間に細い道がくねくねと続き、

下り道、登り道と迷路のようで、元豪族の屋敷だけある厳重な佇まいである。

 勘助は青竹を杖として雨の中を歩んでいた。

 漸く目的の屋敷の門前に辿り着き、手拭で首筋を拭っている勘助の前に

若い女子が現れた。

「山本勘助さまにございますな、主人がお待ちにございます」

(流石は甲賀忍者の嫡流、望月家じゃ)勘助が声なく呟いた。

勘助は案内されるまま、奥の部屋に導かれた。そこには四十代の女人が待ち

受けていた。目元の爽やかな女性が、柔らかな笑みを浮かべ、

「わたくしが望月千代女に御座います。ご用向きをお伺いいたします」

「全てお見通しのようにござるな、拙者が武田家の山本勘助にござる」

 勘助が野太い声で名乗った。

「存じておりました。隻眼で片足がご不自由なお方とお聞き致しております」

「流石はくノ一を束ねる、歩き巫女の頭領にござるな」

「御用を伺いましょう」

「是非、貴女さまにお願いがござる。拙者に槍持ちを一人紹介願いたい」

「ほほほー、槍持ちは表の顔、内実は忍び者にございますな」

 千代女が涼やかな眸子で勘助を凝視し、低い笑い声を挙げた。

「・・・・」

 勘助が珍しく言葉に詰まっている。

「そのようなお話があると存じまして、手練者を用意いたしておきました」

「それは有難い」

 千代女が軽く手を打つと、勘助の前に平凡な顔付の男が現れ平伏した。

「平蔵と申します。ご一緒にお連れ帰り下さい」

 こうした経緯で平蔵は、勘助の屋敷で同居することに成った。

 天文十一年(一五四二)七月の真夏に山本勘助が、数名の屈強な家臣を引き

連れ東光寺に姿を見せた。

 この寺は臨済宗妙心寺派の寺で、本尊は薬師如来。甲府五山の一つして

崇められてきた。仏殿には本尊の薬師如来像や十二神将像が安置されており、

薬師堂とも称され。仏殿は檜皮葺きの禅宗様仏殿で知られていた。

「諏訪頼重さまをお連れいたせ」

 勘助が警護の士に無表情に命じ、寺の佇まいに隻眼を這わせて待った。

 頼重が姿を現した。既に勘助の訪れた用件を悟っている顔つきである。

「山本勘助、我が命もらいに参ったか?」  

「御意に」

「余はそちに謀られようじゃな」  

 諏訪頼重は顔色も変えずに言い放った。

「名門、諏訪さまにしては女々しきお言葉にございますな。夜ごと高遠頼継

の忍び者と会合し、我が武田家に叛かれる相談を成されるとは笑止の沙汰」

「・・・・」  

 諏訪頼重は言葉を失った。

「その先を申し述べる必要もございませぬな」  

 先日の夜、寺から忍びでた男を平蔵が捕え、予想どおり高遠の間者であった。

「武田家の悲願は上洛にござる、それには信濃平定が必要。なれど諏訪さまは、

何度欺(あざむ)かれる、このままでは信濃平定はならず、ここにご自害を勧め

に参りました」  

 山本勘助が非情ともとれる言葉を頼重に浴びせた。

「貴方さまのご側室(小笠原長時の家臣、小見某の娘)がお生みなされた、

ご息女は武田家が貰いうけます。名門諏訪家のお血筋は、甲斐と交わり永遠に

残ります。この山本勘助が請負まする」

「生まれた子が男子なら殺すか?」  

 頼重の顔色が心持ち青白くみえる。

「武田と諏訪の結束の賜物、海道一の御大将にお育て申す」  

「よう判った」  

 ここに諏訪頼重は自刃して果てた、享年二十八才であった。

『おのずから 枯れ果てにけり 草の葉の 主あらばこそ 又も結ばめ』

 これが諏訪頼重の辞世の句である。  

 この一件は瞬く間に信濃全土に知れ渡り、諏訪郡の宮川の西を制した高遠

頼継は、武田家の力に恐怖し戦備を整いだした。

 これを武田晴信は待っていた。九月を迎えると高遠勢は俄(にわ)かに決起し、

武田勢の守る上原城に進攻してきた。  

「勘助、高遠の奴め餌に喰らいついたは」

 珍しく晴信が口汚い言葉を吐いた。

「これで諏訪は武田家の版図となりましたな、直ちに高遠城に攻め上りましょう」

「上原城はどういたす」  

「小城ながら守りは堅うございます」

「勘助、この合戦にはわたしも考えがある」

 晴信が自信たっぷりの面持をしている。

「何か良い策でも思いつかれましたか?」

 晴信が目元を緩めて己の策を述べ始めた。 幼い寅王丸は甲斐に来て名を

千代宮丸と改名していた。

 高遠頼継と合戦する際に、武田勢はこの幼少の寅王丸を先頭にして戦えば、

諏訪衆の者達は、武田勢に加担いたそう。寅王丸は頼重殿の遺児で正当な諏訪

の血筋を引いておる、と晴信は云った。

「お屋形さま、良きご思案かと思いまする」

 こうして武田勢と高遠勢の両軍は宮川をはさんで対陣した。甲斐一国を支配

した武田勢は大軍であり、合戦の火蓋は切ったのは武田勢であった。

 先鋒の板垣信方率いる二千が猛烈果敢に宮川を渡河し、水飛沫を挙げて高遠勢

の先陣と激突し、その勢いのまま本陣に突撃した。まさに鬼神のような働きであ

る。本陣から晴信と勘助が板垣勢の働きを見守っている。

「緒戦の強さは板垣信方さまが随一にございますな」

 この攻撃に堪えきれず高遠勢が潰走し始め、高遠頼継は高遠城に逃げ戻った。

 ここに武田家は念願の諏訪全土を手中に治め、信濃進攻の橋頭堡としたのだ。

 こうして晴信と勘助は、いよいよ諏訪湖の北方の信濃守護職である小笠原長時

の林城、深志(ふかし)城を次ぎなる標的としたのだ。

 晴信は甲斐の治世にも意を配り、この年には暴れ川と異名をとる釜無川の

洪水防止の堤防工事に手をそめ、さらに佐久郡までの棒道工事にも手を入れ

たのだ。これは機動力を重視した軍事道路で後に、信玄の棒道として北方の

諸豪族の恐怖の的となるのだ。

 武田家は甲斐と新しく得た諏訪の経営に意をそそぎ、合戦は小康状態を迎え

ていた。この時期に晴信は諏訪頼重の息女の衣湖姫を側室とした。後年、諏訪

御料人と言われ、勝頼を生む女人であった。

 更に駒ケ岳山麓に大牧場をもうけ、騎馬隊の充実策として黒馬の繁殖に乗り

だし、各支城に狼煙台(のろしだい)を設置し、情報網を構築しだした。

 天文十三年の七月に刈谷城主、水野忠政(ただまさ)が病没した。

 信虎の謀略が効をそうしたのだ、まんまとお弓は毒殺に成功した。

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Last updated  May 2, 2014 02:26:55 PM
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