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May 3, 2014
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云う。彼女は父忠政の命で三河の松平広忠に嫁した。

 当時の松平家は今川家に属し、侵攻する織田勢を三河の地で食い止めていた。

 水野忠政は織田家を見限り、興隆する今川家に家の発展と存続を託した。

 それが松平家との婚姻であった。その於大の産んだ男子が竹千代(家康)で

あった。忠政は三河の碧海郡刈谷に築城した刈谷城で、織田勢に睨みを利かせた。

 今川勢の先鋒となり、三河の最前線で織田信秀(のぶひで)を抑え込んでいた。

 その彼の死で三河一帯の重石がとれたのだ。

 九月になるや、新しく刈谷城主となった倅の水野信元(のぶもと)は、父の

死を契機とし、駿河の今川家から離脱し、尾張の織田信秀の許に奔った。

 駿府城で義元と太原雪斎が対策を練っていた。義元は相変わらず烏帽子、

直垂の公卿姿である。  

「御屋形、織田信秀にまんまとやられましたな」

「三河の最前線は豊川までとなったの」  

 義元が苦い顔をした。

「水野忠政の病死には、毒殺説が飛び交っております」 

「なにっー」

「忍び者の知らせにございますがな」  

 雪斎が色艶のよい顔色を見せ義元の反応を窺っている。

「仕掛けた者は織田信秀か倅の信元じゃな、犯人は判らぬか?」  

「そこまでは判りかねますが、いずれも利がございます」

 流石の雪斎も、城内に潜む信虎の謀略とは思いせぬことであった。

「雪斎、駿河、遠江(とおとうみ)は磐石じゃが弱点は三河じゃ。豊川の西の

田原城、吉田城、野田城までは余も心配しておらぬがの」 

「左様に、矢作川(やはぎがわ)の岡崎城が孤立しましたな。これからは松平家

の動きが心配にございますな」

「松平広忠(ひろただ)いささか腺が細い、この度の水野信元との手切で折角

水野家から輿入れした、妻女を返したというが本当か?」

「真にござる。人質として取り押さえるが戦国のならい、それを離縁したとは

理解し難い事にございます」

 二人が話題にしている人物は、松平広忠に嫁いだ、水野忠政の娘の於大の事で

あった。広忠は忠政が病死し、倅の信元が水野家を継ぐと於大を離縁したのだ。

 広忠はこの時、十七歳の若輩で彼には秘密があったと云われていた。

 於大と結婚する前に、松平和泉守乗正の娘お久との間に勘六という子をもうけ

ていたのだ。水野家と敵対関係に成れば、松平家の正室の於大の存在する意味は

ない。広忠はそう判断し、彼女を水野家に送り返したのだ。

 若さ故の浅はかな行動であった。

「これで水野信元、心おきなく織田信秀と同盟できるの」

「御屋形、尾張の信秀いささかうるそうございます。独断で謀事を仕かけ申した」  

 雪斎の血色のよい顔色を眺め、義元のふっくらした顔に興味の色が浮かんだ。  

「美濃の蝮(まむし)をけし掛け申した」  

「斎藤道三にか?」  

「我が策にのってくれれば儲けもの、織田信秀め美濃にも備えずばなりませぬ。

我等への矛先が鈍れば、大いに助かりますな」

「流石は雪斎じゃ」  

 義元が鉄漿を見せ満足そうに破顔した。  

「ところで甲斐の古狸の倅はやりますな」  

 雪斎が珍しく汚い言葉を吐いた。

「そうじゃな、先年には念願の諏訪全土を手に入れたの」

「今年は動かず領内の治世に意を注いでおります。年若なれど侮れませぬな」

「その為に思うように北条勢が動けぬのじや、感謝せねばならぬ」 

同時に二人の哄笑が湧いた。

 一方、隠居所では信虎とお弓が極秘の語らいを行っていた。信虎は昼から

大杯を呷っている。

「お弓、水野の件はご苦労じやった。・・・今度は田原城をなんとかいたせ」

 お弓の切れ長な眼が魁偉な信虎に注がれた。

「何とかせいと申されましても、御屋形さまの指図がなくば動けませぬぞ」

「許せ」  

 信虎が皮袋を投げ出した、ずしっと鈍い音がした。

「砂金じゃ。それで気のきいた忍び者を雇いいれよ」  

「何をなされます?」

「田原城主の戸田康光(やすみつ)強欲と聞く、織田方に寝返らせよ。三河が

静かになっては晴信が困るであろう」

「あい、判り申したぞ、躯が疼いて堪りませぬ、今宵は伽(とぎ)をいたしますぞ」

「淫乱な女子じゃ」  

 信虎が淫蕩な顔をした、お弓の姿態をみつめ苦笑した。

 「お屋形さま、水野忠政殿の毒殺のご褒美じゃ」

 駿府城から岡崎に抜けるには、浜名湖の東の豊川との中間点の吉田城を通らね

ばならない。守将は今川家股肱の将である伊東元実(もとざね)であった。

 その吉田城の西南に渥美半島があり、三河湾を見下ろす絶好の地に田原城

がある。その城主の戸田康光の寝返りを信虎は策したのだ。

 この地が織田に寝返れば駿府城と岡崎城は、緊密な連携がとれなくなる。

単純な考えであったが、この策が思いもせぬ効果をあげようとは信虎も予期せ

ぬ事であった。

 度々、織田信秀の襲撃に松平家は疲れ果て、今川家に救援の使者を遣わした。

 これは今川家にとって願ってもない事であった、三河の地に念願の軍勢を入れる

口実が出来たのだ。義元はその見返りとして広忠の倅の竹千代を駿府に人質とし

て差し出すよう要求した。その竹千代が駿府に送られる途中の、浜名湖畔で

織田方に寝返った、戸田康光に身柄を拘束され、尾張の熱田に送られたのだ。

 これ以後、竹千代は二年間、熱田で織田家の人質として過ごす事になった。

 この時に信長と運命の出会いをするのである。

 信虎は、まさかこのような事態になろうとは思わず、戸田康光の裏切りを

お弓に命じたのだ。調略には時間がかかる、その一点で早めに仕かけたのが

功をそうしたのだ。


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Last updated  May 3, 2014 06:41:56 PM
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